第三十六話――屍の本気Ⅱ
「侵入者ど――」
ああ、はいはい、その辺のテンプレはもういいや。
とりあえず冷静沈着に敵勢力分析。
騎士団101~170
・騎士団装備
……ちょっとこれはやばいんじゃないかな。
七十人とか、洒落にならない気がします。
正直、勝てる気がしない。まぁ負ける気もしませんが。
連戦になるとは分かっていたけど、これは予想外だな。
「足止めを最優先に! 絶対にここから出すな!」
「「「「はっ!!」」」」
「大巫女様の準備まで時間を稼げ! それまで絶対死守だ!!」
「「「「はっ!!」」」」
なーる。
作戦を敵前で言うのはどうかと思うが、おかげで分かり易く目的が見えてきたな。
なんでここで倒そうと思わないのかは不明だが、どうせ『時詠みの巫女』もなんかファンタスティックな能力でも持ってんだろ。
さて。
黒鍵Ⅱの残りは八十本。
ここではあまり消耗したくないが、仕方ないな。
「それじゃ、大盤振る舞いだっ!」
マントから引き抜きざまに二本、正面の騎士102,105に投擲。
そのままバックジャンプして上空から十本、狙いを定めず騎士団の中心あたりに投げる。
着地後すぐに、寄ってきた騎士125,147を後ろの騎士ごと貫通投擲。
今度は両手に三本ずつ挟んで、そのまま放射線状にまき散らす。
怯んだ騎士に向かって再度挟んだ両手の黒鍵Ⅱを投げ、そのまま突撃。
固まって盾を向けているだけの騎士164,166に右手潰しパンチ。
そのまま後ろの騎士156,148,139,168を吹っ飛ばし、右手の再生中に寄ってきた騎士127,151,170に左手に挟んだ黒鍵Ⅱを当てる。
垂直にジャンプして、回転しつつ360度全方位投擲。
着地後、そのままダッシュ。そして騎士149を足蹴に騎士132,136を両手で潰す。
もう一度バックジャンプして距離を取る。
「っふぅ。人数が多いと中々抜けられないな」
混乱を誘う攻撃をしても、なんだかんだで階段口には最低人数の守りが居る。
これは本当に硬い。
「相変わらずの化け物の様だな……」
おっと。
誰かと思えば、俺を殺してくれた青年君じゃないですか。
なる。あれが陣頭指揮取ってるなら納得のチームワークだわ。
「前より更にパワーアップしたぞ? 喰らってみるか?」
「断る。アル、レロア、ガン! <時針>だ!」
おっと。
後衛組から、例の怪物槍が出てきましたよ。
そういや今から思えば、武器屋の姉さんが言ってた「『スキル』を宿した武器」って奴かもしれないな、アレ。
というか、絶対そうだろ。時針とか呼んでるし。
時針…………時を止める槍?
マジで? そんな厨二武器ってありですか?
ってかソレもろアレじゃん。女神も時を止められたって言ってたし。
「準備完了です!」
「さぁ、あの化け物を止めるぞっ!」
っと。妄想に浸ってる場合じゃねぇ。
「さて、と」
このフォーメーションが厄介なのは、曲がれること。
下手に避けるとそっちに曲がってくる。
真っ直ぐ突っ込んでも、槍に刺されて終る。
なら、どうするか。
「これで、終わりだっ!」
「そりゃ無いな」
「なっ!」
上空。
そのまま前方向にジャンプしてやれば、槍は追っかけられない。
デカすぎて、そう簡単に持ち上げられないのがこの槍の弱点。
そして、この相手の上空から、そのまま右手を前に突き出して、落ちる。
「何だとっ!」
「右手、やるよっ」
右手をそのまま骨の入ったハンマーとして、相手の真ん中に叩き落す。
「がぁっ!」
直撃ではないが、青年大将の右手は逝っただろう。
そして、俺の右手はそのまま再生する。
「<時針>攻略完了、ってな」
我ながら、何故所見で気が付かなかったのか悲しくなるほど簡単です。
……まぁ、思考が人間よりか化物よりかって話なんですけどね?
「くっ……」
「そこで大人しくくたばっとけ」
ったく、触れたらヤバイ槍とか壊すのが難しすぎるからな。
使用者の利き腕を壊すのが一番。
後は一応持ち手の部分を折っておいて、っと。
「さて、かかってこいや」
騎士団、残り60人。