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第三十話――逃亡成功

「ひゃぁぁぁぁっほぅぅうううう!!」

「いっけぇぇぇぇえええええええ!!」

「きゃぁぁぁぁぁあああああああ!!」


ドスン。



「……ふぃー、上手くいったか」


現在地は門の前、街の外。


門の近くには布製の屋根しかないというアクシデントがあったが、門自体に一度着地したので問題無し。


あと10cmずれてたら落ちてたけどね。


「しししし死ぬかと思いましたよっ!!」


エテさーん、そうポカポカ胸を叩く様はとても可愛らしいのですが割と本気で痛いんですが。


「きゃははははは! 最高だっ、にーちゃん!」


こちらはちょっと興奮気味のベラノ。うん、紛うこと無き子供だ。見た目はあれだけど。


「さてと、……逃げるか」


どちらにせよ、まともに冷静な人物が居なければ逃走劇は始まらんので柄にも無く仕切らせていただきます。


門はまだ空きそうにないが、いくら新人騎士でもやる時はやるのである。


足の痺れは思ったより少ないし、このままさっさとダッシュした方が安全だろう。


一旦エテとベラノを降ろしてもいいのだが、降ろしたらどうなるのだろうか。


れっつしゅみれーしょん。


…………


「ぎゃはははは、にーちゃんもう一回もう一回!」


「貴方もっと常識と言うことをわきまえて……」


…………


走ってくれそうに無いね。


二人に乗っかられて動けなくなるのが目に見えているので、降ろすのは割愛。


どうせ、ハル抱えて走れたんだ、ある程度ならいけるだろ。


「門の外だっ! 早く追えっ!」


「やばっ!!」


ええい、筋肉痛になりませんようにっ!






「ぜぇ…………ぜぇ…………」


もう……無理……指一本でも……動かせない……。


「ぎゃはははは、にーちゃんもう一回もう一回!」


「貴方もっと常識と言うことをわきまえて……」


あれ、なんでだろう、デジャウ。


ああ、そうか……、どっちにしろこういうオチになるのね……。


「分かったから……後で……」


というかベラノの声が頭に響いて痛いです。


キンキン声が半端ないです。本当に成人してるんだろうな?


「ま、とりあえず追ってから逃がしてくれたことにはお礼を言います。あ、ありがとうございました」


ツインテツンデレ万歳……でも、これにツッコミ入れるのはちょっと体力要るかも……。


「まぁ、とりあえず休憩……」


幸いこの世界は自然に溢れる中世ヨーロッパ。


そしてここは森。ならば、


「音から察してこっちの方に……あった」


泉の一つや二つ、簡単にある。


しかもビル街では何を間違っても見られないような底まで見透かせる綺麗な泉。


「おー、水だ水だー」


「ベラノ! そうやって水に入らないっ!」


では、水に濡れる美女(精神年齢12歳・肉体年齢25歳)を眺めながら、いただきます。


ああ、水がおいしい……。


「ふー、生き返る」


いや、もう死んでるけどね? というかこのネタ何回目だ?




「さてと、どうする?」


生き返ったり水浴びしたりしたところで今後の方針決定会議。


「私達は、聖都へ行きます」



通称聖都、正式名称はアレルなんたら自治聖都市。細かいところは長いので忘れた。


例の、『時詠みの巫女』が居る、宗教都市。


そもそも、教会が治める都市、って時点で怪しさ満点だが、最近は国王権力を超えるとさえ言われている、らしい。


そもそも、なんで過去の強国の元国王貴族ですら持たない私有軍を、騎士団と称して協会が持ってるんだって話である。もっともその辺は何やら取引があったらしいのですが。


というか、このエレクシア国は無宗教なのに、先代の国王が信仰心厚すぎたせいでこうなってるらしい。


そして、その中でも熱心な教徒が集まってできた都市、聖都。


教徒は狂徒なんてのは良く言ったもので、あそこでもし、「女神なんて糞喰らえ」なんて冗談でも言ったら、即騎士団に殺される土地。



まぁ、ともかく。現エレクシア国で一番危ないところ、それが聖都である。


「俺も聖都に行く予定だ」


ああ、俺って生きて帰ってこれるかな。


いや、俺じゃなくてハルが、か。俺死なないし。


「行き先が同じなら一緒に行った方が良いだろう」


旅は道連れ世は情け。うん、良い言葉だ。


「私達は……」


「にーちゃんも一緒に行くのか!?」


「おう、きっちしボディーガードしてやるからな」


「やったー」


「……はぁ、分かりました」


ふふふ、ベラノの扱いは既に心得た。これでこの多数決議会では俺の意志は議会の意志になるのだよ。


「何、取って喰おうって訳じゃないんだ、安心しろ」


大丈夫、夜中に襲ったりはしないさ。…………多分。


「そう……ですね、その方が安全なようですし、お願いします」


「おう、任せとけ」


「よろしくなー、にーちゃん!」


さてと、成り行きでなっちまったからには仕方ないが、エテとベラノが居る以上、こっからは無理して走ったりはできない。


一応、結果的には街を予定より早く出たから問題は無いともいえるが……。


間に合ってくれよ、ハル。


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