第二十九話――見える者の追っ手
聞きたいことは山ほどあったんだが一応一番大事な事は聞けたから良しとするか。
さて、次は――
「にーちゃん、すげぇな!」
「ぐふっ!」
腹に……ほぼ20代女性に匹敵する体重がっ。
その体でっ、抱き付きタックルは純粋に重いっ。
「あなた……いったい何者なんですか……?」
うんうん、その方が普通の反応だ。ああ、普通だ。
「俺の事は、『生ける屍』って呼ぶらしいよ?」
なんか厨二臭がするんですけどねー。まぁ良いでしょ。
「『生ける屍』……不死、ですか」
「ああ、俺は死なないんだ」
ついでに身体能力と五感が超人レベル。
「っ……まさか本当に居るとは……」
「なぁな? 言った通りだろー?」
え? 何?
「はい、貴方の力が外れる訳ありませんものね」
力? え、力って何?
「そういえば、にーちゃんって『スキル』もってるだろー?」
「『スキル』? 俺はそんな不思議能力は持ってないが……?」
「えー、でも、<見える>ぜー?」
「見える?」
「うん、なんか……琥珀色のきれーな色だ」
「琥珀色……初めて聞く力ですね……」
おーい、誰か説明してくれー。
なんでスキルが絡むと俺は話においてかれるかなー。
「おい、アンタ達!」
お、武器屋の店長。
「さっきはありがとうござ――」
「そんなこと言ってる場合じゃない!」
ん?
なんか騒ぎを納めたにしてはまだ煩い気が。
「アンタらエテとベラノだろ!?」
「は、はい」
「おう! そうだぜー」
「! こっち来な!」
おおう?
何故か店の裏に連れてこられましたよ。何ででしょ。
「いいか、アンタらが何をしたのかは聞かないが、手配書が回ってる」
「手配書だと……!」
まずった。
さっきのヤロウ、やってくれるな。
「街の連中は賞金に目が眩んで捜索を始めてる、さっさとこの街から逃げろ!」
それはまずいな。
一応食料とかの消耗品は揃えてあるが、色々と情報収集したかったんだが……。
「で、青年」
「はい?」
「脱出経路は考えてあるか?」
え……。特に無いかも。
「幾つか案はありますが……」
変装か、金を渡して見逃してもらうか、最悪地面掘って出るなんて裏技も……。
「ふーん、ならいいがね」
ま、どれも成功率が低いけどな。
「ま、一つ教えといてやると、聖都側の門は場馴れしてない騎士様の護衛場所だ、それだけだ」
ほう、なるほど。
となると強行突破、……いや跳躍で超えた方が早いか。
門を開けるのに手間取ってくれればそっちの方が安全だし……。
「……貴方は、なんで捕まえないんですか?」
となると脇に二人とも抱えて屋根を走って方が速いか。
「ふん、アタシはガキ捕まえてまで手に入れたいほど、金に困ってないよ、馬鹿にすんな」
で、門をジャンプで超えてそのままダッシュで逃げる。
うん、それ採用。
「ねーちゃん、いい人だな」
だぁもう! その辺のお約束は良いからさっさと逃げようぜ。
「さて、そろそろここにも来るか……アンタら! 捕まるんじゃないよ!」
「勿論!」
「じゃなー、ねーちゃん!」
「一応礼を、……ありがとうございました」
「おう! 元気でな!」