第二十六話――武器屋の一時
「さて、と」
咆哮ドラゴン(後から聞いたら正式名称だった)を倒した後、折角なので剥ぎ取ってみた尻尾と鱗数枚が、山を降りた先の街で有り得ない値段で売れましたよ。
いやぁ、持っていった時の武器屋のお姉さんの顔が見事でした。
ポカーンってマジックで書きたくなる顔だったなー。
そんなに珍しいのかね、あれ。
「どうするかなぁ」
よって。ただいま俺の財布には金貨がごろごろしてて重いのですよ。
金持ちの重みって良いね!
いや、まぁぶっちゃけハルのお供である現状ではあまり嬉しみがわかないのも正直なところなのですが。
「せっかくだし、何か買うか……」
今までの金貨は流石にハルの物だから最低限にしとこう。とか考えていたのだが、遠慮することはあるまい。
けれど。
「買い物って言っても今の俺にはこれぐらいしかなぁ」
目の前の店にかかってる看板は「武器装具何でも屋 素材買取も致します」。
うーん。元の世界に居た頃には買いたいものが無いなんて信じられない現象だな。
まぁでも、こっちにはゲームも漫画も無い訳で。
それに、流石に腕を潰すような戦いはあまりしたくない。
そりゃ何度再生しても減るもんが無いから一番効率良いけどさ、人として間違ってると思うんだよね。色々と。
昼飯喰いに店は一旦出たが、この店は中々に大きかったし、店長が魔獣の素材を買い取ってるような場所なら面白いものもあるかもしれん。
「すいませーん」
「おぅ、さっきの兄ちゃんか」
「何か、良い武器ないですか?」
「良い武器って、アンタねぇ……」
うーむ。抽象的すぎるか。
「アンタは何使うんだい?」
俺?
俺の武器って言うと――
鷹秋装備可能アイテム
・素手
・剣(叩きつけ)
・石ころ(投擲)
碌なのが無いな。我ながら。
唯一まともなのは。
「投擲系の武器ってありますか?」
「投擲――へぇ、面白いもん使うんだね」
あ、やっぱこっちでもそういう反応か。
そりゃ投擲なんてメインで使うようなもんじゃないよな。
ゲームならともかく、こっちでもあっちでも投げたものは減るみたいだし。
「投擲って言うと……こんなのがあるが」
おーいお姉さん、後ろ向いて物を探すのは良いけどパンツ見えてますよー。
色気無いパンツで結構ですがー、これってバレたら俺殺されないかなー。
はは、良く考えたら周り殺傷武器だらけだ。
「こんなのが……ってなんで顔伏せてるんだい?」
「いえ、何でもないです……」
ああ、俺は何も見ていない。見ていないぞ。
決して死亡フラグなんて立っていませんよ。
「で、これなんだが」
ふむ。
刃渡りは10cmぐらいのナイフか。
柄も同じぐらいあるから、投げる様にしては長いような気もするけど、アニメのが長すぎるのかな。
「投擲ナイフですか?」
「いんや、投擲剣だ」
ニヤりと笑わんでください。嫌な予感が湧き上がるので。
「ここに力を入れるとな――」
「黒鍵キタアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
刃が伸びたっ! 刃が伸びて1mぐらいにっ!
よく見ると柄も洋剣風。しかも特注投擲用!
黒鍵キタ! これで封印指定の魔術師にも勝つるっ!
「コッケン? 良く分からんが、気に入ったかい? この剣は伸縮剣という<伸びる>のスキルを所有するニルリアという魔獣の舌を使っていてね、衝撃で伸びる性質を利用した中々の逸品だよ」
「これ売り物なんですかっ!?」
「おう、ちょいと高いがね、1本で銀貨10枚で在庫は100本だ」
なんだ、安いじゃないか。
「買ったっ! 全部買ったぁっ!」
「おう、まいどあり」
おっしゃー武器ゲット。
投擲剣かぁー。思わぬところで良いものを手に入れた。
「いまなら収納マントも付けるが?」
「あ、もらいます」
黒マントはデザインは微妙でしたが中に黒鍵Ⅱ|(俺命名)が中に20本入るお徳用。
ま、牧師服は無いだろうし、妥当でしょう。
「ま、アンタには咆哮ドラゴンの素材をもらったしね、それぐらいサービスさ」
いやぁ、店長良い人だ。
「他にもあるがね、見ていくかい?」
「喜んで!」
「んじゃ、次はこの剣だが、これは炎焔ドラゴンの翼をベースに改造したんだがね、ちょっと重みがあるんだが衝撃で<燃やす>が発動する中々に……」
いやぁ、ファンタジー世界にこれてよかった!