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突然ですが、貴方は異世界に召喚されたいですか?  作者: 十三月
第二章――喧騒と怒号が響く街
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第十二話――屍は化け物と成る

「で、『能力(チカラ)』って何?」


「タカアキ……。知らないでイヴェール慰めてたの?」


いやだから俺に『能力(チカラ)』の説明プリーズ。


「この世界は、女神様によって作られたって神話は知ってる?」


女神? あの(・・)女神がか? そんなことする奴じゃない気がするが。


「でね、その時に創世の力が漏れ出して人々に宿った。らしいのさ」


ふむふむ。


「その力をボク達は『能力(チカラ)』だとか『スキル』って呼ぶ」


「『スキル』は、その逸話通り、ありとあらゆる物理現象を飛び越えて『結果』を生む力」


「『結果』?」


「そう。例えば、<燃やす>という『スキル』があるなら、その『スキル』を使うことで、土だろうと氷だろうと対象を<燃やす>事が出来るのさ」


そりゃ、随分なチートで。


「で、ボクの『スキル』は<宿す>。対象に命を宿すアルケミシア家代々伝わる力さ」


「ハルって随分凄いんじゃん」


「ボクがこの力を完璧に使えたらね。ボクに出来るのは真似事だけ。せいぜい、物の強度を強くする程度」


とかいいつつその手に持った盾代わりの机を強化したらしい。どうやら『スキル』は瞬間発動っぽいな。


「けど、タカアキに宿した力はこんな物じゃ無い筈」


俺に宿った力、ね。


まぁ、ぶっちゃけますとさっきから体が興奮しっぱなしです。


さっきの、<宿す>が発動したあたりから。あの瞬間を目にした時から。


頭の後ろが麻痺するくらい、ハイテンションですよ。


「それじゃハルは……」


「うん。おとなしくここでイヴェールを守りつつ籠城してるよ」


おk。ならば守りから攻めに変えようか。


「ただ、一つだけ約束して」


「ん?」


「絶対、怪我しないで」


…………。


ひゃぁぁぁっっほぅううううう!


まさか! 現実に! こんなセリフいわれる日が来るとは!


「……ああ、もちろん!」


うっしゃぁっ! 今のテンションなら何でもしてやらぁっ!



「んじゃまぁ、やってみますか!」


とりあえず、燃え始めそうなほど熱い体を駆って外へと飛び出してみる。


「だらぁっ!」


そして、外にいた部下B~Dくらいまでを体当たりで吹っ飛ばす。


そこから、ターンして建物押し入ろうとしている部下L~を3人に右の拳を連続で叩き込む。


その後、回転しつつ左の拳三回分を後ろから襲おうとしていた部下Eに当て、そのまま地面にめり込ませる。


「何だこいつ、化け物かっ!」

「握力が人間じゃねぇっ」

「今、握った鉄が曲がったぞ」


何か、人間を辞めていっている感触がします。


聴覚も壊れてきて、相手の足音とか聞こえるのですが。


後、嗅覚もヤバイです。匂いで人の位置が分かりそうです。


筋力とかもうなんかおかしいからね。自分の骨をきしませながら拳を放ってますよ今。


「くっ、一斉攻撃! 全員あの男を!」


おっと、聞き覚えのある声が。


「あれ、いいのか? 至高の音楽を奏でるんじゃないのか?」


とりあえず、指揮者が居ると厄介な感じがしたのでそちらの方へ。


第六感なんて俺にもあったんだなぁ。


「なっ」


んでもって喋れないようぽかんと開いた口に先程拾った木片を突っ込む。


「がぁっ」


ついでに、ちこっと喉の奥まで刺しておく。


俺的感覚がただしければこれで一週間は喋れない。


さて、お次は……。


「ひぃっ、この野郎っ!」


「がっ…………」


……油断した。


棒を突っ込むのを弄っている間にどうやら回り込まれたらしい。


首に、斧が刺さって……。


ああ、こりゃ流石に死んだか…………。











「あれ、俺生きてるな?」


「化け物っ!!!!」


首に刺さった斧が逆に背骨に止められてやがる。


そしてそれを感じる感触が何とも言えぬ不快感。


「化け物は余計だ」


とりあえず斧をお返し。


あ、殺しはしないですよ? 右足は逝ったかと思いますが。


「ぐっ、このっ」


ああ、頭に棍棒らしきものの打撃音やナイフの刺さる音が響く。


「だから五月蠅いって」


ケド、どんなに詩的に言っても痛いものは痛いのですよ。


ちなみに、ナイフの刺さった後は一秒かからず治りました。


いや、別に人間辞めた覚えは……ゾンビでしたね。


「ひぃっ、こっちに来るなぁ」

「化け物っ! 化け物っ!」


後は俺の余りの化け物っぷりに逃げ出した逃亡兵に石を投げつけておいて終了。


ちなみに今の俺の投擲石なら手の肉ぐらいなら貫通するらしい。


……ますます以って化け物である。




さて、こんなもんか。


とりあえず、鼻で追える範囲にはこっちに向かってる奴はいない。


で、そんなことを考えていたら強化した机の盾を持って店の中に立てこもってたハルに見つかっちゃいました。



正直、この姿を見られるのは辛いのですが。


「タカアキ……」


嗚呼、そんな目で俺を見ないでハル……。俺、一応人間だから。


「やっぱ怖かっ――」


「凄い! 凄いよ! やっぱボクの<宿す>は完璧に発動してたんだ! タカアキはやっぱりボクの最高傑作なのさ!」


…………。


流石ゾンビ製作少女は格が違った!


血みどろの化け物見てもいたって平常心だぜ!


そこに痺れる憧れるゥ!


「「「…………」」」


ほら、見てくださいよ、一般人の反応を。


村人AからZまで全員固まったままですよ。


「あの、」


……目を合わせようとした瞬間に目を逸らされました。


「その、」


……手を上げただけで建物まで逃げられました。



べ、別にこれは涙じゃないんだからねっ。これは汗なんだからっ。


「……化け物」


「よく見れば、あの少女も屍拾い(ネクロマンサー)じゃないか……」


「あれが、化け物の屍か……」


おいおい、こりゃなんかまずい展開じゃないか?


「………………出ていけ」


「「…………出ていけ」」


「「「「……出ていけっ 化け物っ!」」」」


結局こうなるし。


助けてって言ったのは何処のどいつだよ。


あ、そう言えば。


「ハル、イヴェールは?」


とりあえず唇噛み締めてとても怖い形相のハルさんに聞いてみる。


「…………」


返事が返ってきませんでした。


「ハールー! イヴェールは?」


「え、あ、何?」


「ハル、イヴェール知らない?」


「あ、…………忘れてた」


忘れられてたそうです。


「まぁ、この空気の中会いに行くわけにもいかないしな」


「そう……だね……」


さて、やる事が無くなったが。


「じゃあ、……帰るか?」


「え?」


「俺達の、家に」


「あ……、うんっ!」


取り敢えず、『屍拾い(ネクロマンサー)』と呼ばれた時に、ハルが流した透明な雫については何も聞かない事にしよう。


彼女は今、此処を乗り越えたのだから。


この空気の中、俺の手を借りて、笑顔に成れたのだから。


まぁ、ハッピーエンドとしよう。


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