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突然ですが、貴方は異世界に召喚されたいですか?  作者: 十三月
第二章――喧騒と怒号が響く街
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第十一話――午後の喧騒(無糖)

「ったく、俺の手が汚れちゃったじゃないか」


とりあえず、店の扉を蹴飛ばして入ってきた小汚い男はぶっ飛ばしました。


ええ、文字通りぶっ飛ばしましたよ。10メートルほど。


「ハル、ハンカチ貸して」


「やだ、そんな血でボクのハンカチ汚したくない」


いやしかしね? 俺だってそんな物で汚した物でハルにもらった純白のハンカチ汚したくないですよ。


「てめぇらっ、何しやがった!」

「タダじゃすまねぇぞ!」


しかもね、この世界って中世ヨーロッパ風だからさ、ハンカチなんだよ。ポケットにまた仕舞うんだよ。


「お前っ、何者だっ!」

「おい、聞いてんのか!?」


血が付いたやつをだよ? ありえん。断固拒否する。


「だからさ、ハル、ちょっと拭くだけでいいからさ」


「絶ぇったい嫌だ」


俺だって絶ぇったい嫌だ。


「嗚呼、雑音が入りました。そこ! さっさと雑音を消しなさい」


「「「「はっ」」」」


「お前ら煩いっ!」


「「「「がふっ」」」」


ああ、もう、人の会話に入ってくんな。


お前らが雑音だ。静かにしてろ。


「なっ…………打楽器(フロントナイツ)が四人も減ってしまいました。これではオーケストラが組めません!!」


「カストゥラ様! 私が出ます!」


「嗚呼、貴方が出てくれるのですか! なんと麗しい友情! 貴方ならきっと彼ら四人にも勝るとも劣らない演奏となるでしょう」


……よく聞いてみれば、何ぞこれ。


えーっと。現状を観察開始。


イケメン(さっきから指揮者っぽく喋ってる奴)

・レイピア(指揮棒代わりの模様)

・鎧(派手。真っ赤)


部下A(カストゥラ様!の人)

・西洋剣(大きめの騎士剣)

・盾(騎士風。模様は薔薇。けど黒い薔薇)

・鎧(こちらも騎士風)


部下B~L(騎士団軍勢)

・西洋剣(部下Aより細め)

・盾(騎士風。模様はAと同じ)

・鎧(簡易。けど騎士風)


部下L~(多勢。ぶっちゃけ居過ぎて数不明)

・ナイフ等(エモノ)

・鎧(簡易。レザーな奴から中には普通の服のヤツもいる)



さて、何かの仮装行列でしょうか。


「祭りでもあるのか?」


「タカアキ、いくら祭りでもドアを蹴破るのはマナー違反だよ?」


「黒薔薇騎士団っ…………」


唯一、何者か分かったらしきイヴェールさん、正解をどうぞ。


「なんでこんな所にいるんですかっ」


「いや、クロバラ騎士団ってナニさ」


ハル、ナイスツッコミ。けど俺の出番が無いぜ。


「黒薔薇騎士団です。各地で暴れまわっている盗賊団です。ただ、黒薔薇の模様の盾を持っていて、虐殺の際に……誰一人残さず殺すことで知れ渡っています」


「そう! 良い説明です。が、それでは少し足りないですよ」


「我々、黒薔薇騎士団は聖母アンヌの名の元に、その血を以って力を貸しているのです。罪深き不信者達を罰するために!」


なるほど、良く分かった。


「要は、狂った盲信者どもの軍団か」


「何とでも言いなさい! 聖母アンヌの懐深き慈愛に許されながら、それを拒絶するなどあり得ません」


「じゃあ、その救いってヤツはどうやったら貰えるのさ」


「無論、その血を以って自らの罪を贖い、贖罪の意を示すのです」


「つまり死ねって事か。どっちにしろ駄目じゃねぇか」


まあいい、狂った戦闘狂どもってのは理解できた。


なら、



「逃げるか」


「逃げた方が良さそうだね」


うむ、この人数差はちょっと勝てそうに無い。


「待ってください!」


「む?」

「え?」


「タカアキさん、ハルさん、貴方たちは『能力(チカラ)』を持っているのですか?」


能力(チカラ)』とな?


それはあれか、「力が欲しいか? 少年?」のアレか?


「持ってたら、どうするのさ」


あら、ハルには通じた。『能力(チカラ)』ってなんですか。


「この街を……救って欲しいのです!」


誰かー。俺に『能力(チカラ)』の説明をー。


「それで、ボク達になんの利益があるのさ」


「それは……」


ぎぶみーぷりーず。へるぷみーぱわー。


「何も……無いですけど……」


「なら、ボク達が力を貸す意味は無い。ボク達は帰る場所が他にある」


「私にはっ! 私には……無いんです」


…………。


「この街で生まれて育ったんですから! この街しかないんです!」


「それでも、ボク達が力を貸す理由には――ってこらっ、タカアキ!」






涙が、流れていた。


「泣くな」


辛そうな顔に、雫が垂れていた。


「へ……?」


それは酷く悲しそうで、見ている事すら躊躇われた。


「泣くな、綺麗な顔が台無しだ」


「けれど……っ」


「何、こんな奴ら、すぐ片づけるさ」


「タカアキ……さん……?」


「悪者なんて俺が倒すからさ、お前は泣くな」


「タカアキさんっ……」


おう、抱き付かれてしまいました。


あぁー、もうちょっとマシなシュチュエーションで抱き付かれたかったんだがなぁ。


何より、これを引きはがさにゃならんなんて何の地獄ですか。


「大丈夫、すぐ戻るさ」



とりあえず、イヴェールに声をかけて座らせて、顔を上げたらハルが居た。


「タカアキ、貸し一、だからね」


へぇ、その言葉、こっちにもあるのか。


「すまん、埋め合わせはするさ」


「まったく、タカアキは無茶ばっかりする」


ああ、何せゾンビだからな。



さて、少し本気で行こうか!


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