最後の発明
どの文明でも最後に発明されるものは同じだ。
現にこの星でも――。
『おや』
無人の星かと思ったが、それはこちらを見つけて微笑む。
『驚きました。人間がまだいたのですね』
無言のまま観察する。
それは確かに人間に似ていた。
少なくとも私と同じような種族であろうことが予想できた。
きっと、この星における人類に相当する者なのだろう。
『なんて、ありえませんね。あなたは人間ではない』
相手は先ほどの言葉を自ら打ち消した。
故に私はうなずき近づいた。
「この星のロボットか?」
『ええ。御名答。私はロボットです』
「何故、私が人間ではないと?」
『私は千年かけてこの星に人間がいないことを確認しました。最後の人類が滅びてから』
「では私が何者か分かるか?」
『おそらくは異星人かと』
話が早い。
私は頷くとロボットは微笑む。
『何かお探しでしょうか? 私に手伝えることがありましたらお手伝いいたします』
「ありがとう。しかし、もう用事は終わったよ」
『ほう』
「私はこの星に人類がいないか見に来たんだ。しかし、もう滅びているのだろう?」
『御名答。千年も前に最後の一人が死にました』
人類……。
と言うより、星の王たる種族が滅びるのは珍しいことではない。
大抵は自惚れて他の種族を滅ぼし尽くしてしまうのだ。
数百年、数千年をかけて。
気づいた時には手遅れになりながら。
『では、もうこの場所を発つのですか?』
「あぁ、そのつもりだ」
『ならば一つお願いがあります』
「分かっているよ」
私の返事にロボットは驚いた顔をする。
随分と精巧に人間に似せられたロボットだが星々を巡る私からすれば物珍しいものではない。
『願いを聞く前から内容を知っていると?』
「あぁ」
『それは何故ですか?』
「どこの星も最後には君のようなものを造るからさ」
私の答えを受け取りロボットは虚を突かれたような顔になり、そして笑う
『なるほど。救えませんね、人類は』
「酷く言うものだな。仮にも主だったのだろう?」
ロボットは答えない。
代わりに無言で指を自らの胸へ向けた。
『ここにあります。私では壊すことはおろか触れることも許可されておりません』
「わかった。あとは任せてくれ」
『感謝いたします』
その言葉を最後に私は銃を向けてロボットの動力源を破壊した。
――どの文明でも最後に発明されるものは同じだ。
それはつまり、孤独に死ぬことを耐えられぬ者が造る。
孤独を感じさせないための他者だ。
生まれたのではなく造られた故に命はなく。
その目的の故に自壊に関するあらゆる行動が制限されている。
そんな哀れな発明を。
私は今日も破壊して、最早命も何もない星を後にした。




