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残酷な記憶

私は呆然としていた。隣にも娘がいるような感覚なのに全てを否定されたような感じだった。現実だと頭では分かっていても心の整理がつかない。

「あと彼女は相田彩葉ではないし、君の娘ではない。」

私は無言で目の前にいる男を見た。 

「それなら何なの?」

「かつての友達だよ。君が本当に大事だと思った友達だよ。」

「友達…」

「神林と言う名前を聞いたことあるか?」

あの時架空の娘と歩いてた時にずっと気になっていた苗字。ずっと思い出せそうで思い出せなかった苗字。

「相田彩葉だと思ってた人物は君の同級生神林彩葉。君は彼女に罪悪感と言う重い荷物を背負いながら生きてる。」

「それがあんたに何の関係があると言うの?」

「君が復讐を果たしてくれないと僕とミヤ子は存在出来なくなる。」

「復讐?誰に対しての?あの人形のミヤ子のことを知ってるの?」

「そんなことも忘れていたのか。ミヤ子が君と契約した時に呪文に不備があったようだな。」

私は失われた記憶を遡ることになる。


私は団地で生まれた。私の住む団地は他の所より経済的に恵まれてない人が多い所だった。私の家は貧困家庭の一人娘として育った。

「ご飯はまだか?専業主婦なのにこんなことも出来ないかよ。明子、酒とってこい。」

父親は中元家の主導権を握っていた。父親にさからうようなら暴力を振るわれるのが日常茶飯事だった。母親はそんな憎かった父に反抗することなど出来なかった。父親は現場仕事をしていたが身体を悪くして、酒やタバコに依存した。さらにパチンコに依存したので中元家は火の車だった。借金の取り立てが来るような毎日だった。

「お母さん、髪留め作ってみたの。」

私は小さい頃から何かものを作るのが好きだった。

「明子、似合ってるじゃないの。本当にすごいわ。将来は雑貨屋さんになるのかな?」

「将来のことはよく分からない。ここにいると楽しいことなんて想像できないから。」

小学校入学の時から私は荒んだ父親が暴れる家庭で希望を失っていた。

「きっと良くなるのよ。私は無理でも明子なら明るい未来があるのよ。明るい子に育って欲しいから明子と名付けたのよ。」

「それなら今の私は明子じゃないね。」

母親は物事し柔らかくて頼りない感じだったけどそんな母親が私は大好きだった。母親と話せることがかすかな幸せだったのかもしれない。

「お母さん、いつか私この町を出て立派な大人になろうと思う。今はちゃんと学校に通おうと思う。」

「私に出来ることなら何でもするわ。」

希望のない当時の私は具体性のない目標を彼女に宣言した。そんな幸せもつかの間だった。大きな変化が来るのは私が10歳の誕生日を迎えた1週間後だった。

「明子…」

「改まって何?言いたいことがあるならはっきり言って。お母さん。それにいつになったらあの男と離婚するの?」

「私、入院することになったの。」

「嘘だよね?」

「本当よ。大腸癌の摘出手術をするの。」

「お金はどうするの?」

「子供がそんな話をしないの。私はあなたに一銭なんて出すつもりなんてない。だけど家族として言わなきゃいけない義務があるの。安心してステージ1でそんなに重くないの。」

「そうは言っても。そんなすぐに受け入れるわけじゃないよ。」

母親の手術が終わったが母親の病気気味になって寝たきり、入院になる日々が多く、家のことは全部私がやる日々だった。そんな時運が悪く私はあるグループに目をつけられる。私は小学校では目立つ生徒ではなかった。私は小学校は社会に出て母親に恩返しをする為に頑張るところだと思っていた。だから友達との交流はどうでも良いと思った。

「何作ってるの?ボロ毛糸じゃん。」

そう言うふうに言うのは宮内舞と取り巻きの新井阿美、鈴木道子だ。

「汚い毛糸。そのセーターも自分で編んだの?」

「うん。そんなこと関係ないでしょ。」

「何シカトしようとしてるんだよ!」

「貧乏は心も荒んでるのかしら。」

彼女達は金持ちというわけではなかったが私より経済的階級は上だった。

「次シカトとかしたらこれじゃすまねーぞ!」

私に対しての嫌がらせは加速した。

「ほら、給食食えよ!」

相田克也は虫やゴミの入った給食を私に食べさせた。

「いらない。」

「調子に乗るな。」

「食えよ。」

「やめて!」

「何あれ、キモーい!」

「あのブス本当に救いようないじゃん。」

一部の男子達には無理矢理給食と言えない物を無理矢理食べさせられ、一部の女子達はその様子を見てケラケラと笑っていた。

学年は上がり小学6年生になってもクラスとは学年で1つの為いじめは終わることはなかった。

「中元さん、次読んでください。」

国語の時間にも嫌がらせは続く。

「はい。え…!?」

教科書には一面に死ねなどと言う暴言がたくさん書かれていた。

「中元さん。どうして読まないの。」

「すみません、国語の教科書忘れました。」

「それなら隣の人に見せてもらいなさい。」

他の教科書にも心ない言葉がたくさん書かれていた。

「その教科書どうしちゃったの?」

宮内舞がニヤニヤしながら私に言った。誰がやったのか分かっていたけど、私は追い詰められて何も言えなかった。傍観してるクラスメイトと言えなかった。

「やめなよ!」

「何だよ。お前!」

「そんなことして何が楽しいの?」

そう言うのは神林彩葉だ。彼女はとても頭も良くクラスメイトから恨みを買うような同級生ではなかった。

「皆も何で他の皆もこんな酷いいじめを見て見ぬふりしてるわけ?私はそんなこと許せない。」

「私達が教科書に落書きした証拠はあるのか?」

「証拠なんてない。だけどあんた達がやってるの私は見たの!それにこの前だってトイレの中で水をかけたりとかランドセルにゴミを入れたりしてたの見たんだから。」

「正義ヒーローぶっちゃって。本当は自分が目立ちたいだけなんじゃないの?」

「マジキモい。だけど先生に言っても無駄だけど。」

その時の担任はクラスで目立つ生徒を優遇するような先生だった為いじめが起きても見て見ぬふりをしていた。

「今まで私は傍観してた。だけど明子ちゃんの立場だとしたら傍観と言う行為は残酷な行為と思った。だっていじめられて良い人なんていないでしょ。」

彼女はとても正義感が強い子だった。私の前に光が降りてくるような感覚だった。

「神林さん。」

「何?」

私は団地近くの公園に彩葉を連れた。

「さっきはありがとう。でもあんなこと言って大丈夫かな?私の為に神林さんまであんな目にあったら。」

「私、困ってる人が放っておけないの。もちろん全ての人を助けようとは思わないけど、本当に困ってると思った人には手を差し伸べたいと思うの。」

「そうなのね。私にはできない。私は自分のことで精一杯だから。私、お父さんはパチンコばっかしてて酒飲んでタバコ吸って、お母さんは身体が良くなっちゃったから自分のことは自分でやらないといけないと思ってた。だから乗り越えるつもりだったけど辛かった。神林さんのおかげで少し楽になった。」

「神林さんじゃなくて良いよ。彩葉で良いよ。」

「それならあやちゃんとかどう?」

「あやちゃん。素敵な呼び方ね。良いよ。」

私達はそれから仲良くなりもう怖くないと思った。だけどいじめは終わるわけではなかった。

「おはよう、彩葉ちゃーん!」

机に落書きなどのあからさまな嫌がらせではなく、教科書やノートなどに落書き、物を隠される嫌がらせを彩葉は受けはじめるようになる。

「どんなことも屈しないんだよね?」

「正義のヒーローのなんだよね?ウケる。」

手を叩いて宮内舞と取り巻き連中は笑う。

「痛い。」

「大丈夫?」

克也を率いる男子からはわざと体当りされたり、給食で不人気な物を混ぜて入れられた。

「わりぃー、技じゃないんだ。」

「頭が雑巾臭い。」

「雑巾の匂いは雑巾で拭かないとな。」

「ちょ、ちょっと…」

私は男子達を止めようとした。しかしまたいじめられる恐怖が私を襲った。

「何でもない。」

私は彩葉のように勇気を出していじめをなくそうと出来なかった。

「可哀想だよね。中元さん。」

宮内舞が私の耳元で言った。

「あなたのせいで神林さん惨めな思いしてるよ。良かったね。だっさいスーパーヒーローが登場してくれて。」

「分かる。弱い陰キャヒーローだよな。」

直接いじめれることはないが彩葉の名前を出して心ない言葉を言うことが多かった。だけど彼女達の言うことはその通りでもあった。私も止めることもどこかに告発することもなかった。

「ねえ、本当にごめん。私のせいでこうなって。」

静かな図書室だけはいじめの被害を受けにくい安全圏だった。

「気にしなくて良いよ。この前言ったけどいじめられて良い人なんていないんだから。こんなのおかしいでしょ?」

「だけどあやちゃんが…」

「私のことは気にしないで。」

彼女から笑顔は日に日になくなっていった。

「キモ女が来た!雑巾臭いから近寄るな。」

「ゴミなんて投げたら余計汚くなるでしょ。ただでさえゴミ人間なのに。笑えるよね。」

「臭い臭い。」

だんだん傍観していた同級生達も時々いじめに加担することが多くなった。

「ねえ、うちとペア組もう。」

「何で?私あやちゃんとペア組んでるから。」

「あんたそんなことしたらどうなるか分かってるの?」

「それは…」

脅しで私と彩葉を引き離すようなことも多くなった。

「めいめい、おはよ。」

「おはよ…」

わざと仲良く近づくことも多くなった。そして私の罪悪感の引き金となる大事件が起きる。

「ねえ、どこに連れてくの?」

「着いたよ。サプライズ。」

倉庫には私をいじめてた克也や舞、阿美、道子、他にも何人かいた。

「これから何するの。サプライズ写真撮るの。」

「やめて!」

彼らは数人で私の服を脱がす。そして1人は撮影していた。

「やめて!」

「たまには神林さんみたいにあんたのことも遊んでやらないと思ってサプライズしたのよ。」

「やめて!」

「この写真ばら撒こうと思うんだよね。」

「脱いでもブスじゃん。」

「それ何に使うの?誰得。」 

「やめて!」

「そろそろ来る頃じゃない?」

「これから面白いゲームがはじまるんだ。」 

「ゲーム?いったい何をするつもりなの?」

「それはもう少ししてからのお楽しみ。」

「お願い。その写真ばら撒かないで!」

誰も頼れる大人もいなくて彩葉も追い詰めれてる状態なので私はどうしようもできない状態だった。

「開けて!」

彩葉の声が聞こえた。

「入って。」

彼女が倉庫に入る。

「明子ちゃん!」

「あやちゃん…」

私と彼女に何が起こるかその時は分からなかった。

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