同居
私は彩葉の為に美咲を家に同居させた。
「本当にここにいて大丈夫なの?私は美咲が私の部屋にいるの嬉しいけど。」
彩葉が美咲に聞いた。
「うん。学校も家も逃げ場がないしここの方がずっと良いよ。」
私は娘の部屋に入った。
「ここ自由に使って大丈夫だけど2つ守ってほしいことがあるの。」
私は美咲に言った。
「出入りする時は美咲ちゃんだって分からない格好でお願い。それと外出は夕方の時間までは良いわ。だけどそれと夕方以降のあやちゃんの部屋の外への出入りはトイレ以外禁止。絶対にうちの旦那とはち合わせないようにして。」
「何でですか?」
「私はいつでも受け入れるわ。だけど旦那はこんなこと受け入れるはずないの。ここを追い出されたくなければ私がさっき言ったことを守って。」
「分かりました。でもご飯とかはどうするんですか?」
「ご飯は私が持って行くわ。アレルギーとか嫌いなものはないかしら?」
「嫌いなものはないですけどイカアレルギーがあります。」
「分かった。気をつけるわ。」
「美咲は私と違って好き嫌いないからすごいよ。私、何故かブロッコリーだけは食べられないんだ。」
「ママも美咲ちゃんもブロッコリー食べさせる意地悪なんてしないわよ。」
彩葉は他の野菜は克服できたがブロッコリーだけは克服できなかった。それ以降彼女にブロッコリーを食べさせることはなかった。
「ねえ、せっかくだから髪切らない?」
「イメチェン?何で突然?」
「うん。ここ最近美咲ちゃんの泣いてる顔ばかり見てるから楽しいことできたら良いかなと思って。」
「そう言う気になれないの。仲の良いパパとママのいるあやちゃんには分からないよ。」
「もちろん今すぐじゃなくてこんな髪型だったらって想像するのは良いでしょ?」
「まあそれなら。」
彼女達は私が捨てたはずの雑誌のページをめくる。
「美咲ちゃん、ボブとか良いんじゃないかな?」
「ボブはまりちゃんでしょ。」
「そうだけど似合うと思うけどな。」
「私は長い髪のままで良いよ。だけど少し染めてみたいとは思うよ。」
「それならエクステとかで部分的に染めてる感じに見せるやり方もあるよ。ママの知り合いのアーティストさんは美容院に言って部分的に染めてる人もいれば、ヘアエクステ使ってる人もいるし。」
「少し茶色のも良いな。」
「確かにこの色似合うかも。」
「あ!これ気になる!」
「どれどれ?」
「これだよ!」
美咲は指を差した。私も監視カメラで何を見てるか確認した。
「確かにこれなら私にも美咲ちゃんにもぴったりかも。」
「あやちゃんのママこっちに向かって来てない?」
「多分ママおやつを持ってきにきてくれたと思う。」
「入って良いかしら?」
私は確認をした。
「良いよ。」
「ママどうしたの?」
「それ見せて。」
「ママの捨てようとした雑誌見たの駄目だった?」
私は無言でずっと眺める。
「ママ!」
私は彼女達が話してた髪型をずっと見る。
「そんなはずないわ。」
私はそのページだけ破り部屋を出た。
「ママ、どこに行くの?」
「お母さんどうしたんだろうね?何だか別人みたい。」
「私だってそう思うよ。そんな乱暴なことしたことないから。」
「それより…」
「それより何?」
「髪切りたくなっちゃった。あやちゃんもどう?」
「まだ心の準備できてないから明日でいいかな?」
「うん。」
頭が痛くなった。何だかぐらぐらした。さっきまで作品作ったり、監視カメラで娘と美咲の様子を見たりすることができないくらいに辛かった。私は静かにベッドに寝込む。薬を水で流し込む。
「これじゃあ足りない。」
私はまた薬を流し込む。だけど手足が何者かに縛られてる感じはおさまることはない。
「こんな時に誰から?何この番号?」
私は電話に出た。
「もしもし。」
無言だった。
「あのどちら様ですか?」
詐欺の電話だったら喋らないと何もはじまらない。
「切りますよ。」
私は電話を切った。すかさず電話が鳴り響いた。枕元で振動する電話を無視した。無視しても振動がおさまらない。そして固定電話の方も鳴る。
「もしもし相田です。」
娘が電話をとった。
「あのどちら様ですか?」
誰が聞いても何も答えることはなかった。娘は電話をきって部屋に戻った。
「目標達成までまだまだね。」
「誰かいるの!?」
私があたりを見ても誰もいなかった。
「おかしなことばかりだわ。」
私は気がついたら1時間くらい寝ていた。
「パパおかえり。」
「ただいま。」
「今日私が作ったの。」
「珍しいな。」
娘は美咲と一緒に料理を作っていた。
「どうかな?」
「まあまあかな。」
「まあまあってどう言うこと?でもママの作る料理には敵わないね。」
「パパはママの料理どう思ってるの?あまり美味しいとか聞かないから。」
「そうだな。普通って感じだな。」
「でも好きな料理の一つくらいはあるでしょ?私はママの作る肉じゃがとコロッケがすごい好き。あれは真似できない。」
「特に無いな。」
克也はスマホをいじりだした。
「ママの料理、美味しくないの?」
「もちろん作ってくれることには感謝してる。俺はあまり料理の感想を言うような人間じゃない。そんなこと聞いてたら明日の授業の予習でもしたらどうだ?悪いが今日はもう疲れてる。」
「何だかパパ、人が変わったみたい。」
「俺はもともとこんな感じだ。」
彩葉は部屋に戻った。
「おいしい!材料が良いね。」
「美食家なんだね。」
「あやちゃん、何だか元気なさそうだよ。どうかしたの?」
「何でもない。」
「ちょっとトイレ行ってくる。」
「ちょっと待って。」
準備してから美咲はトイレに行った。
「彩葉、お前本当に中学に行かないのか?学校行かないと立派な大人になれないぞ。それに学校は青春ばかりだし部活も楽しいし行かなかったら絶対に後悔する。」
「私はずっと家で勉強してる方が良いの。学校行くといじめられることだってあるでしょ。それなら安全圏にいた方が良い。私授業の予習するから。」
「彩葉!」
美咲は部屋に戻った。
「もしかしてパパとすれ違った?」
「うん。でも何とか対処したよ。」
「それなら良かった。」
「あやちゃんってすごいな。」
「何で?」
「自宅学習を自分で選んでちゃんと取り組んでるから。」
「そうかな?でもママのおかげだよ。学校通ったことはあるけど意地悪する子もいたし自宅学習の方が楽しい。それに学校行かなくても美咲ちゃん、まりちゃん、理恵ちゃんもいるし。」
「私もあやちゃんみたいな方が良いな。」
「それなら明日から先生の授業聞いてみる?」
「どうやって?」
「授業は全部オンラインなの。それにここは最低ないじめっ子もいないから良い環境よ。」
「でもお金ないよ。」
「美咲ちゃん、何言ってるの!誰もお金なんて取らないよ。パパにさえバレなければ良いから。私の隣で一緒に聞いてれば良いよ。もし分からない所あれば念のための確認ってことで聞いておくよ。」
「あやちゃん、なんて優しいの。今度こそは約束する。」
美咲は彩葉を見つめた。
「あやちゃんがピンチの時は私が助ける。この前本当に怖くて逃げちゃったから。」
「もうそのことは良いの。私はあんなふうに人を傷つけるの間違ってると思ったから。私達、友達だから。」
「そう言えばこのことは2人には話すの?」
「どうしたい?」
「2人には秘密にしたくないけど話すとここがバレちゃうかもしれないし。」
「2人なら事情分かってくれるよ。この前美咲ちゃんのパパママが離婚になった時も2人も親身になって聞いてくれたじゃん。」
「そうね。2人を信じるよ。」
2人は勉強の予習をして遊んだ。
次の日になって仕事にとりかかった。
「すみません。納期を明々後日にずらしてもらえませんでしょうか?誠に勝手ながら申し訳ありません。」
「良いですけど大丈夫ですか?レジーナさん納期間に合わないなんて初めてなので。」
私は固定のお客さんに連絡をしていた。今回はいつもより納期をはやめたが急な体調不良で間に合わなくなった。頭痛くらいなら無視してでも作品作りは出来る。しかしいつもにない手足が縛られてるような症状だったので動くのも辛い状態だった。痛いと言うより思うように動かせない状態だった。誰も何もしていないのに。
「どこか悪いの?」
「詳しくは言いかねますが急に体調を崩してしまい動ける状態ではありませんでした。心配とご不便をおかけして申し訳ありません。今は回復してますので」
「謝らなくて良いのよ。レジーナさんが誠実な人なのは私分かってるのよ。」
「ありがとうございます。」
「無理はしないでね。」
私は顧客との電話が終わった。
さらに美咲との同居から1週間が経った。ちょうどその日偏頭痛と縛られてる症状が一時的に再発して仕事どころか監視カメラで家の様子を観察したり、盗聴器で娘と友達の会話を確認することもできなかった。
「今日の授業は以上です。」
「ありがとうございました。」
彩葉と美咲は授業を終わらせる。
「授業難しいかった。」
「私も。一緒に復習しよ。」
「うん。それより先生驚いてるように見えてなかった。何か動揺してる感じだったよ。」
「何か変なものでもついてるのかな?」
「そんなことないよ。部屋に変なものがあるわけじゃないし。」
彼女達は授業の復習をした。
「2人とも枝と枝が重なってるよ。非対称が生け花の美しさよ。」
生け花のレッスンもレザークラフトのレッスンも何ごともなかったかのように美咲は参加してる。
「レッスンも終わったから髪切ろうよ。」
「大事な絵は傷つけちゃ駄目だからこうしないと。」
新聞紙を床に敷いた。
「切るよ。」
「遠慮しないで。」
雑誌を見ながら前髪を切っていく。
「もっと短くしないと。」
「緊張してるから手が少し震えてるの。」
「もっと手をリラックスさせて。」
髪が床に落ちる。
「これで完璧ね。」
「良い感じね。」
「美咲ちゃん、次は私の髪お願い。」
「もちろんよ。」
髪を切り終わり鏡の前に彼女達は立つ。鏡に光が集まった。
「これで私達同じ髪型だね。」
「私達やっと一つになれたね。」
「ママ!」
「お母様!」
暗闇の中私を呼ぶ声が響く。
「ママ、ここにいたんだ!」
「きゃあ!」
彼女達はノックもせず寝室に入った。
「2人とも勝手に寝室に入るのは!え…!?」
そこに立っていたのは前がかなり短いミヤ子の髪型に人形そのものの目をして青ざめた表情になった二人だった。鋭利な歯以外は不気味な人形ミヤ子そのものだった。




