友達
「うちの娘に何するのよ‼︎」
私は知らない女の子達に行った。
「クソ、親が来た。」
「逃げるぞ。」
「待て。」
「何するのよ!離しなさい。」
「スマホゲット。おばさん、動画とか撮ってないよね?録音とかしてたら承知しないから。」
「撮ってないわよ。良いから離しなさい。」
「あまりやりすぎると面倒だから殴るなよ。おばさん、スマホの暗証番号は?」
「言うわけないでしょ。」
「それなら一緒にスマホの中身確認するならあんたのブス娘には何もしない。」
人気のないところだったから彼女達の言うとおりにした。
「何だか知らないけどこれで満足?やましいことがあるなら最初からそう言うことをしないことね。あやちゃん、家で話し合いたいことがあるから帰るわよ。」
私は娘と家に帰った。
「あら、相田さんこんにちは。」
「こんにちは。」
隣の人の話につかまりたくなかったのですぐに家に入った。
「あやちゃん、色々聞きたいことがあるの。」
「レザークラフトのレッスンずっぽかしたこと?本当にごめん。美咲ちゃんのためだったの。」
「今度から急用があるなら必ずママに連絡してちょうだい。今までそんなことしないから何かあったことくらい分かってるわ。それより何であんな子達とつるんでたの?」
「私だってあんな子と話すの嫌だったよ。だけど美咲ちゃんが苦しむ姿は嫌なの。美咲ちゃん、学校でいじめられてるの。」
「だけどそれはあやちゃんがそこまですることじゃないでしょ。確かに友達がいじめられるのは私だって許せないことよ。」
「美咲ちゃん、私と理恵ちゃんに話してくれたの。美咲ちゃんは学校に行くのも怖いくらいになってるの。美咲ちゃんがそんな目にあってるの許せないよ。だから彼女達を説得しようと思ったの。」
「そしたら美咲ちゃんが怖くて逃げたわけね。あやちゃんのこと見る前にたまたま美咲ちゃんが必死で逃げるかのように通り過ぎたの。どおりで変だと思ったわ。」
「こんなことは見て見ぬふりしちゃいけないと思う。」
「そうだけどママはあやちゃんにそこまで辛い思いをして欲しくないの。」
「大丈夫よ。私は常に安全圏の家にいるんだから。美咲ちゃんの学校にいるわけじゃないでしょ?」
「友達を助けちゃいけないの?」
私は危険な人助けをする娘に何もすることができなかった。私は学校や会社にいるとしたら何か問題が起きても自分の保身に入る傍観者だ。傍観は残酷な行為だが、生きてくための術でもある。誰か追い詰められてる人がいても家族でないかぎり私は傍観と言う立場にいる。娘のようなタイプは極少数。フィクションならスーパーヒーローのように問題を解決するが、現実はそんなに綺麗ではないし、犠牲がともなう。世の中は荒んでいる。
「問い詰めて悪かった。だけどレッスンをすっぽかすことはもうしないで。レザークラフトの先生が困るから。」
「分かった。次から気をつける。」
夕方になると旦那が帰って来た。あの日救急搬送されたが、旦那は軽症で済んだ。本当はタクシーで運べば何とかなるレベルだった。
「おかえりなさい。怪我は大丈夫?」
「まだ油断はできないけど仕事は何とかできる。」
「それは良かったわ。」
彩葉は私のことを何回も見る。まるで何か様子を伺っているような感じだった。旦那は何もなかったかのように夕食を食べていた。あまりご飯を食べなくて笑わないいつもと違う娘の変化に気がつくことはできないし私自身も旦那に期待もしなくなった。
「やっと終わったわ。」
家事が終わり彩葉の部屋の扉にノックした。
「あやちゃん、入って良い?」
「うん。」
私は部屋に入った。すると壁も床も天井も人形の絵でいっぱいになってた。
「きゃあ!何これ!?」
「ママ、驚きすぎだよ。ミヤ子ちゃんのこと皆で描いてたの。今日まとめて貼ってみたの。」
まるでどの絵も私をみているようだった。
「レザークラフトのレッスンの日程を再調整したいの。さっきは感情的になっててそこまで頭が回ってなかった。」
「それなら来週の火曜日が良い。」
「分かった。」
「ママ何か身体が震えてるけどどうしたの?」
「そんなことないわ。大したことじゃないから。」
私は急いで部屋の外を出た。
「何よあれ。絶対におかしい。」
何ごともなかったかのような娘を見て気が狂いそうだった。日に日に娘は人形の色に染まっていく。友達思いで素直で真面目な娘の一面と人形にかなり依存して洗脳されてる娘の2つの人物像があって私は混乱する。どっちも娘であるし同じ人物だ。
「克也、あの女とはもう会ってない?」
「舞のことか?言ってるだろあいつとは何もないって。」
「私はあの女のこと嫌いだけど私が口はさむことじゃないのは分かってる。そうじゃなくてもっと若い女のほうよ。」
「そいつとは縁を切った。」
「過去の不倫を咎めたりなんてしない。だけど今後つまらないことしないで。それで悩むのは私じゃなくてあやちゃんなの。あなたはただの男じゃないの。あの子の父親なのよ。」
「分かってる。」
夫婦仲は全く良い方向に向かっていないがあの事件から大きな事件は起きていない。
「電話が鳴ってる。ここ最近多くないか?」
「例の男からよ。着信拒否しても番号変えて来るの。あやちゃんには言ってるけど克也も出ないで。」
「気持ち悪いやつだな。見つけたらボコボコにしてやる。」
「駄目よ。こっちから過激なアクション起こせばこっちが捕まってしまうわ。暴力で解決するような馬鹿なことは言わないで。」
「勝手に電話番号調べてかけてる方がヤバいだろ。そんなことあっていいわけじゃない。」
「しかるべき機関に連絡はしてるわ。だけど何も解決してないの。」
珍しく旦那が私の心配をしてる。怪我してる所がまだ治ってないから逆らえないだけかもしれません。きっとそうだ。
「おやすみ。」
「おやすみ。」
また何ごともなかったように時間は流れ太陽が昇る。私達が望んでいなくても太陽は昇るし、太陽は沈む。明るい世の中だろうと絶望に満ちた世の中だろうと。
「先週はすみません。すっぽかすようなことをして。」
彩葉はレザークラフトの講師に謝罪をした。
「良いのよ。誰だってそう言うことはあるでしょ。」
「次から本当に気をつけます。」
彼女は講師に詳しい話をしなかった。
「とにかく何もなくて良かったわ。突然だったから何か巻き込まれてたと思ったわ。」
「私のおっちょこちょいだったので。心配をかけてすみません。」
「もう良いのよ。それより今日は財布を作るわよ。生地の色は3種類あるけどどれが良いかな?」
「これが良いです。」
順調にレッスンは進んだ。
「縫い終わったらハンマーでよく叩くよ。」
「分かりました。」
レッスンは終わった。
「あんなことがあったのに来てくれてありがとうございます。」
「そんなに謝らなくて良いですから。」
「良かったらこれ食べてください。」
私はレザークラフトの講師にお詫びの品を渡した。
「ママ、見て!」
「すごいじゃない。いつかママの財布作ってもらおうかな?」
「それならいつかママの革のカバンでも作ろうかな?」
「あやちゃんの作るものなら何でも嬉しいわ。」
その日は娘と笑い合えた。
「誰かピンポンしたわね。出てみるわ。」
私は玄関に向かって誰がいるのか確認した。そこには美咲がいた。
「美咲ちゃん、いらっしゃい。」
「こんにちは。お邪魔します。今あやちゃんいますか?」
「あやちゃん、美咲ちゃんが来たよ。」
彩葉は急いで階段を駆け降りる。
「美咲ちゃん、いらっしゃい。」
「あやちゃん、おばさん、この前はすみませんでした。私、いじめられるのが怖くてあやちゃんをおいて逃げちゃいました。」
「玄関で話す内容じゃないから場所を変えましょ。」
私達は客間に移動した。
「この部屋久しぶりに来ました。」
「そうね。真理子ちゃん、理恵ちゃんも来てあやちゃんのパーティーをしたよね。」
「楽しかったね。まりちゃん張り切ってたくさんマフィン持って行ったよね。」
ここにいる時はきっと学校にいる時より元気に違いない。
「ママ部屋に移動して良い?」
「うん。」
娘と美咲は移動した。
「もう学校行かなくて良いよ。転校だってできるよ。」
「うん。」
「どうしてそこまでして学校行くの?」
「最初は負けたくない気持ちだったけどもう耐えられなくなった。」
「美咲ちゃんは十分頑張ったよ。あんな奴らの為に学校行けなくなるのは悔しいよね。だけどその学校以外にも道はあると思う。」
「そうかな?」
「うん。うちのお母さんみたいな生き方だってあると思うんだ。」
「私はあやちゃんみたいに能力ないし、頭も良くないよ。学校に行かなかったらもっとおいてかれるよ。」
「そうでもないと思うよ。」
彩葉は美咲を抱きしめた。
「こう言う時は絵を描こうよ。絵描いたら学校の嫌なことから少しでも離れられると思うよ。」
「絵も良いけど粘土とかどうかな?」
「良いね。」
彼女達は粘土で何かを作っている。私は編み物をしながら監視カメラで彼女達の様子を見る。
「こうかな?」
「もう少し輪郭は丸いんじゃないかな?」
「そうだね。」
形を整えて粘土に色を塗っていく。
「次はお洋服作るよ。」
裁縫道具を出し始めた。
「あれ?あんな素材うちにないはずよ。」
私も裁縫はするがちりめんは買ったことはない。和裁は全く極めたことがない。
「これでどうかな?」
「美咲ちゃん、上手じゃん!この調子だよ!」
出来上がっていくものはあの不気味な人形と同じ人形だった。私は黙ってその様子をみるだけだった。
「ねえ、ママ!」
彼女達は監視カメラに向かって話をかける。
「今日から美咲ちゃんもこの家で暮らしていいでしょ?」
「あやちゃん…」
私は急いで部屋に向かう。監視カメラをつけてたのが気がつかれてしまった。
「良いでしょ?」
「お願いします。」
私は無言になって考えた。
「お父さんやお母さんとよく話し合ったのね。それなら賛成よ。」
両親に話してないことは分かってる。でも私は美咲が学校でイジメられて彩葉まで辛い思いをするならこの選択を受け入れるしかない。きっとこれは宿命なんだ。




