要求
「またこんなことが起きたのね。今日、あやちゃんに人形のこと話したけど説得するの駄目だったわ。」
「ここに引っ越してから立て続けに不幸が起きてく。これはただの偶然なんかじゃない。」
突然ベットが揺れ出す。
「今度は何よ!私達が何をしたって言うのよ!」
家の中でケタケタと笑う声が響く。そして勝手に窓が開いて強風が入る。
「はやく窓を閉めろ!」
「分かってる。」
笑い声はどんどん大きくなっていく。
「もうやめて!」
窓を勢いよく閉めた。
「やめろ!」
ものがどんどん私達の方に飛んでいく。
「克也!」
旦那は引き釣り回された。
「嘘よ…」
笑い声が止まることはなかった。
「明子…」
「克也!どこなの!こうしてる間にも!」
私は娘の部屋に向かった。部屋をノックすると娘は歌っていた。聞いたこともない歌だった。
「あやちゃん、いるなら出て!パパが大変なの!お願い!」
大声を出しても反応がなかった。ドアを開けても鍵が閉まっていた。
「あやちゃん、何をしてるの。はやく!あやちゃん!」
「助けてくれ!明子!」
旦那は引き釣り回された。
「うわー、やめろ!」
「あなた!」
旦那は階段から転倒した。
「痛い。救急車を…」
私は無言になった。もしここで死んでくれた方が逆に良いのではないかと思った。
「何してるんだ…はやく!」
旦那は動けない状態だった。
「分かったわ。」
救急車が家の前に来て旦那が運ばれた。彩葉は部屋から出なかった。
「今度は何?」
インターホンが鳴り、私はドアを開けた。
「警察のものですが、近所から通報がありこちらに伺いました。何点か伺わせて頂きます。」
「大したことないので。」
「そうはいかないんです。」
人形の仕業だと言っても信じてもらえるはずがない。
「あなたの名前は?」
「相田明子です。」
「世帯主様との関係は?」
「妻です。」
「日頃の旦那さんとの関係は?」
「何でそんなことまで聞くんですか?」
「事件性があるか調査しなきゃいけないんです。」
「質問に答えるまで私達は出れないんです。協力をお願いします。」
「最近仕事の忙しさのすれ違いでちょっとした衝突をしてたんです。本当にたまたまなんです。」
「旦那さんとも話せますでしょうか?」
「主人は今病院にいるんです。」
「それは何故ですか?」
「それは…」
「教えてください。」
「はっきり答えてください。」
「答えますから急かさないでください。あんまり態度悪いとクレーム入れますよ。分からないようですけど、突然の事故で驚いてるんです。」
警察官2人は不審そうに私の方を見た。
「夫婦喧嘩で主人が怒った勢いで階段に降りてつまずいて転倒したんです。その時主人が私に救急車を呼んで欲しいと言ったので救急車を呼んで彼は病院にいます。」
「その時明子さんはどこにいらっしゃいましたか?」
「夫婦の寝室の前です。」
「それはどこに?」
「ここの2階です。」
「病院には何故いあわせなかったのですか?」
「娘がもう寝てますので。」
「娘さんはおいくつですか?」
「何でそんなことまで聞くんですか。」
「何故そんなにも動揺されてるのですか?あくまでこちらは調査なんです。協力をお願いします。」
私は警察に渋々と話帰ってもらった。心霊現象が起きて騒ぎになったことを警察に話しても信じてもらえるはずがない。
「ママ、おはよう。」
「おはよう。」
「昨日警察が家に来た夢見たんだ。すごい休まらない夢だったよ。」
「それは大変だったわね。ママ少し用事があるから誰か来ても出ないで。それと宅配便は置き配にするのよ。」
「分かったよ。」
旦那は仕事で娘は今日も授業。私はハンドメイド作家なので毎日が仕事みたいなもんだけど時々休みを入れることもできる。私は娘の部屋に入り人形を手に取って袋に入れて出かけた。
「あら、相田さん。おはようございます。昨日、相田さんの家がずっと騒がしかったので何か起きてないか心配でした。」
隣人が私に声をかけた。
「私の家に通報入れたのはあなた方ですか?」
「通報?何のこと?」
「心配かけてすみません。今後うちで何起きても通報しないでください。ただの夫婦喧嘩ですので。」
「ただの夫婦喧嘩なんですか?お宅の主人は大丈夫なんですか?救急車に運ばれたって聞いたもんですから。」
「一つ聞きますけど何故そんなに詮索しようとするんでしょうか?」
「詮索なんてしてません。ただ心配なだけだったので。」
「私はこれから用事があるので失礼します。」
私は隣人のもとを離れた。
「ここね。」
私は作家仲間から教えて貰った神社に着いた。彼女はその神社で悪霊を祓って貰ったと言う。
「すみません。見てもらいたいものがあるんですが。」
「分かりました。こちらにお座りください。」
言われる通りに私は座る。
「電話でも簡単に話したんですけどこの人形と出会ってから良くないことが続いてるんです。」
私は人形を袋から出した。
「義母が亡くなったり、旦那との夫婦仲が悪くなったり、旦那自身が怪我とかしたり、旦那の周りの人達も次々と不幸になって。だけど娘はこんな不気味な人形に愛着持ってて…娘から無理矢理人形を引き離すことがどうしてもできなくて。人形といる時の娘はなんだか生き生きとしてる感じなんです。」
神主は人形をずっと眺める。
「何か分かったんですか?」
「この人形からは何も感じられないです。」
「それなら私の周りで起きた不幸はなんですか?」
「あなたを恨む生霊がついてます。きっとそのせいで不幸なことに巻き込まれてるのでしょう。周りの人の不幸はどうにもできませんがあなた自身の不幸は少しばかりでも回避できるかと。」
「その生霊って?」
「あなたは作家やってて何か心当たりありますか?」
「特に何もないです。」
「あなたに敵対心を持ってる方の生霊です。」
おそらく作家活動して一方的に嫉妬している人間だろうか?私はお祓いをしてもらった。こんなんで問題が解決するとは思えなかったが行動しないことには何も変わらないと思った。
「ただいま。」
「おかえり。ママどこに行ってたの?」
「手芸店で買い物してたのよ。ちょうどセールやってたもんだから。」
「セールなんてやってないでしょ。私パソコンで調べたよ。領収書見てるけど行きつけの手芸店はセールやってないよ。本当のこと言って!」
「あやちゃん、どうしたの?落ち着いて。」
娘はいつもと違った。
「その持ってる袋は何?」
「あやちゃんには関係ないものよ。」
「手芸店で買ったものなんでしょ?見せてよ。」
娘は無理矢理袋を掴み取ろうとした。
「何するのよ!これはママの大事な毛糸や刺繍糸とかが入ってるの。離して!」
「見せてよ!」
「何するのよ!」
私は袋を取られて転んでしまった。
「これ、ミヤ子ちゃんだよね?何でママ持っていったの?私達の友達をどうする気だったの?」
「処分なんてしたらこうやって持って帰ってないでしょ。」
「それなら何してたの?」
「ママは人形を供養してもらったの。最近パパの周りで良くないことが起きててもしかしたら人形のせいかもしれないと思って神社に行ったの。」
「ママ、ミヤ子ちゃんのこと疑ってるんだ?」
「あやちゃんのお母さん、ミヤ子ちゃん疑ってるんだね?」
「ミヤ子ちゃんは私達の友達なのに。」
「不幸を呼ぶ人形だと思ってたんだ?」
いつの間にか真理子、理恵、美咲がいた。
「別にそんなつもりないのよ。それにあなた達いつの間にここにいたのよ?」
「ママ、邪魔をしないで。」
「邪魔しないで!」
「邪魔しないで!」
「邪魔しないで!」
邪魔しないでと言う言葉がずっと耳に響いた。私を囲んでいく。
「もうやめて!やめて!」
私はいつの間にか廊下で寝ていた。娘がいるのにとても静かな家だった。おそらく30分くらい寝ていたのかもしれない。私は人形を彩葉の部屋に内緒で戻した。そして電話が鳴る。
「もしもし、相田です。」
電話はずっと無言のままだった。
「もしもし良い加減にしてください。」
「明子さんですね。」
「誰ですか?そんな人いません。」
「僕ですよ。」
私はすかさず電話を切った。そしてまた電話が鳴る。
「もしもし!」
「相田明子さん、何で僕のことをそんなにも避けようとするんですか?こんなにも愛しているのに。」
「あなたつきまとってくるストーカーですね!良い加減にしてください。こう言うの迷惑なんです。」
「僕なら明子さんのこと幸せにできるのに。」
「私のこと知ったかのように話すのやめてください。あなたはただ私に一方的な愛をぶつけてるだけじゃないですか。」
何だか身体が何者かに縛られているような感じがした。身体が動くはずなのに気分は手足を拘束されてどこにも動けない気分だった。
「君の旦那は酷いね。僕ならそんな思いをさせないのに。」
「黙って!」
「嫌だ。君の方から僕を求めたんだよ。」
「私にはあなたより大事な人がいるの。あなたみたいに支配して得るような関係じゃないの。」
私は電話を切った。すると携帯の方から着信が何回も来る。固定電話も携帯電話も着信拒否した。生活安全課に相談しても実際にその人物が直接現れないかぎり何もしてくれない。ストーカー男が私の家に侵入したり、暴行を加えたり、家族に直接危害を加えたわけではないから。
「もうなんなのよ。」
気が狂いそうだ。いつあの男が襲って来るのか正直分からない。外に出るのも怖かった。
「疲れた…」
何だか過呼吸が止まらない。お腹は痛くなるし、立つのがしんどい。電話の次は何をして来るんだろうか。気味が悪くて仕方がない。
「あれ、何で。」
私は気がついたら自分で自分の手足を縛っていた。
「あやちゃん、あやちゃん!」
娘は急いで私のもとに駆けつける。
「ママ!誰にやられたの?警察呼ばないと!」
「分からない。多分自分でやったんだと思う。」
「そんなことないよ。しっかりして!ママ!」
「あやちゃんは大丈夫なの?」
「私は平気よ。」
娘と一緒に家中をくまなく探したが足跡や散らかった痕跡など特に何もなかった。
「もう良いのよ。あやちゃんをこれ以上巻き込むわけにはいかない。親は子供を守る役目があるから。」
「もっと私のこと信頼してよ!」
「駄目よ。まだ守らないといけない年齢なの。」
私はそう言って外に出た。もうあそこしかない。旦那はもう頼れない。
「明子さん、いきなりどうしたの?」
私は泣いて金井宗治に抱きついた。




