招集
彼らにとって安寧はない。
たまの休みであろうが、電話の連絡ですっ飛んでこなければならない。
彼らは手野武装警備が誇る、社長直属秘密部隊、通称第零小隊。
1人の陸上少佐、4人の陸上大尉の合計5人で構成されている。
招集権を持っているのは唯一武装警備の社長、通称は武装社長だけである。
第零小隊はこの武装社長以外からの指揮を一切受けない。
さらにいえば、彼らの本名も素性もほぼすべてが秘密だ。
5人とも男性であり、手野武装警備からの指揮を受ける体裁をとっているというだけだ。
そしてその指揮の最終権者は武装社長ということぐらいである。
「……では、来てくれ」
武装社長は、小笠原諸島にある手野島にある、手野武装警備本社ビル最上階の社長室から電話をかけていた。
これは第零小隊へと直接つなげることができる唯一の通信装置であり、超高度に暗号化された秘匿通信装置となっている。
これにより第零小隊へと誰にも邪魔をされることなく連絡を行うことができ、さらに何かしらの指令も出すことができる。
任務等がなければ月に1回は顔を出すことになっているが、今回はそれを待っている場合ではなかったようだ。
武装社長は目頭を強く抑えつつ、その報告書に再び目を落とす。
どうやらとある戦争への介入依頼のようだ。
手野武装警備が国連軍として派遣している部隊での戦闘においての、何らかの検証が必要らしい。
疲れた顔をすることもなく、武装社長はその報告書を読み返していた。