今夜のつきはフルムーン『テスとクリスタ』番外編
武 頼庵(藤谷 K介)様主催『月 (と)のお話し企画』参加作品です。
このお話は『テスとクリスタ 第一話あたしの秘密とアナタの事情』の番外編ですが、本編を未読でも(たぶん)お楽しみいただけるようになっています。
登場人物紹介
✩テス…………小惑星帯にある人工改造惑星レチェル在住。カヌレ大学に通う奨学生。18歳。ごくごく普通の女の子だが『准A級認定証』を持つ超常能力者。ある事件で知り合った謎多き男の子マオのことが気になっている。
✩マオ……テスが気になっている男の子。17歳。女の子と見間違うほどの美少年。月の人工ドーム内にある全寮制の高校に通っているらしい。行方不明になった「隅の老人」の関係者らしいことまでは明白なのだが、まだ正体は不明。
人類が木星辺りまで生活圏を広げた遠未来。新興住宅地と化したアステロイドベルトの人口改造惑星レチェルを舞台に、テスの超常能力が巻き起こす騒動を描くSFタッチの友情&ラブコメディ。ですが、こちらは恋(かもしれない?)気持ちに戸惑うふたりの相聞歌としてお楽しみください。(超常能力は出てきません)
彼の夢をみたの
薄い闇の中
小さな花びらが、ふわりと舞って
はなやかさをまとった薄紅色は妖しくて
白銀に輝く月によく似合うと思ったわ
突然夢に現われたのは、どうして?
たずねても目を細めるだけなのね
いぢわる
ああん。きっと 眠る前に月を見たからだわ
今夜の衛星は輝く満月
人を酔わせて惑わすの
彼の瞳みたいに
だから、あたしは魔法にかけられ
会えない彼の夢をみるの
仰ぎ見た 夜半の月は君に似て
寄せる光の波にふるえる
♦ ♦ ♦ ♦
あなたは陽の光
やさしくあたたかく僕に差し込む
その笑顔も仕草も、声さえも
疑うことを知らない
風に揺れる小さな花のように
他人の僕にも、無邪気に心を開いてくれた
その素直さが眩し過ぎて
少し息苦しくなる
あなたは無自覚のトラブルメーカー
そのつもりが無くても、
災難を引き寄せる能力があるみたい
か弱くて、頼りなくて、危うげで
それでも必死で逆風に抵抗するんだね
だから、いつの間にか目を離せなくなったんだ
ねえ、
僕はこの想いに、なんて名前を付ければいいのだろう
玻璃のよな光が満ちた 無言の夜
かたむく月を 君も見るかな
イラスト:貴様二太郞様
「今夜のつきはフルムーン」にご来訪、ありがとうございます。
長岡更紗様主催の「イラスト交換企画」で貴様二太郞様にいただいたイラストがとても素敵だったので、いつかSSを付けてあげたい! と思っていたのですが、締め切りが無いので「いつか」がどんどん後回しになってしまいました。
しかも、うっかりストーリー仕立てにすると先の展開がネタバレしそう。
ならばもっと抽象的に表現できる詩ならばどうにかならないか――と書いている途中で、「これって相聞歌みたいだ」から「短歌も付けたらカッコいいかも」とか安易に考えてしまったのが頭痛の種になりました。
なにせ、短歌歴約一ヶ月。(2023/9/15投稿当時)
思いつきで始めた短歌なのですが、右も左も分からない状態で、「相聞歌」ってどう作れば良いのよ!? レベルだったので。
身の程もわきまえず手を出した自分の愚かさを呪いつつ。
過去の歌人の残した作品を読んで、おそらく、こんなカンジかな? で詠んだ和歌なので、ぬる~い目でご覧いただければ幸いです。
伸びしろだけは無限大。これから少しずつ勉強します。
イラストを提供してくださったにたろ様に感謝を。
描いてくださった美しいマオとかわいいテスを生かすことが出来ていたら良いのですが。
そして、この作品を世に出す機会を設けてくださった企画主催者の武 頼庵(藤谷 K介)様にも御礼申し上げます。
最後に、テスとマオの馴れ初めはこちら、
「テスとクリスタ ~あたしの秘密とアナタの事情」
https://ncode.syosetu.com/n5837di/