どす黒い魂
どうした?
ずいぶんおとなしいじゃないか。
目的地までまだだいぶあるからさ、世間話でもしようじゃないか。
そんな気分じゃないって?
わかるよ。
死んだらおしまいだって思ってたんだろ。
死んだら楽になるって思ってたんだろう?
いいかい。体は死ねばおしまいさ。徐々に腐ってハエやウジ虫がたかり骨になっていく。
でも、たった一つ忘れてることがある。
魂は永遠なんだよな。
みんな死んで初めて気付くんだよ。
後悔先に立たずさ。
生きている間の行いは、たった一つ。
魂を磨くことなんだ。なんてね。俺が言える筋合いじゃねえけどね。
磨けば磨くほど光が増してくるんだ。
いわゆる、善行を施すってことさ。
しかし、お前を見てると全く、嘆かわしいよ。
なぜって?
お前の生きざまが全てわかるからだ。
そんなことがどうして分かるかって?
わかるさ。
もう一度言うが、俺は死神だぜ。いままで何千、何万、いや、何億の魂を扱ってきたんだ。
わからないでどうする。
お前さんさの霊、言いたくないけど。
まるっきり、光ってねえんだよ。
悪く言えば,くすんでるんだよ。いや、どちらかと言えば、どす黒いと言った方がいいかな。
言っている意味が分からないって?
お前の魂が真っ黒だってことだよ。
なに、怒ってんだよ?
なんだって?
俺の魂のどこが黒いんだって?
魂の光てのは、本人には見えないんだよ。
この死神様にしか見えないんだ。
太陽のように眩しいぐらい光り輝く魂もあればどんよりと今にも消えそうな光の魂もある。でもなあ、普通に生きてきた人間の魂ってのは多少なりとも光り輝いているもんだよ。
ところがお前のは真っ黒なんだよ。
光を放つというより光を吸収するブラックホールのような魂なんだ。
どういう生き方をするとこんなどす黒い色になるのか教えてほしいよ。
なんだって?お前に言われたかないって。名誉棄損で訴えてやるって?
この世界には俺とお前しかいないんだぜ。いったい誰に訴えるっていうんだ。
それとも、俺に俺の事を訴えるつもりか?
ふざけた野郎だぜ。
もう一度言っておくが、俺は死神だぞ。泣く子もションベン垂らして黙る死神だぞ。
少しは俺様をリスペクトしたらどうだ。このクソ魂が。
……。
…………、…………、………。
……………、………。
ん?なんでじっと見つめるのかって?
へんな趣味を持ってるのかって?何言ってるんだ?
変な趣味ってどういう意味だ?
魂をオモチャにして遊ぶつもりかって?
…、全くふざけた野郎だな。
いいか、よく聞けよ。
お前の生前の行いを見通したのさ。生まれてから死ぬまでのお前の生き方を見させてもらったのさ。
よくわかったよ。お前が何で真っ黒な魂になったかを。
死んだ者は生きたときの記憶が飛んでしまうんだ。
自分がどうやって死んだのかもね。今のお前には生きてた時の記憶が完全に消えてるはずだ。
今から教えてやるよ。お前の、どす黒い生きざまを。




