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よみがえりのロク  作者: 三郎
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水先案内人

ここはいつもの散歩道だ。

午前四時、目覚ましの音で寝床から飛び起き、朝日が顔を出す前にいつもの道を歩き回る。これが俺の毎日のルーチィン。

これをやらないと一日の気分が乗ってこない。

いや、気分どころか大げさに言えば生きている心地がしない。

散歩を忘れた日は

具体的に言うと手足をもぎ取られ、身動きがとれない屍の気分だ。いや、気分じゃない。

マジで屍なんだ。


そんなアホなことを言う俺は誰だって?


名前はとっくの昔に忘れちまったよ。

早い話が、ろくな人間じゃねえってことさ。

物心ついたころから、素行の悪さは天下一品。喧嘩三昧の毎日。

世間から後ろ指をさされるのに慣れ切って、ガキの頃から少年院を出たり入ったりの繰り返し。

そんな人間がいきつくところは、そんな人間がクソみたいに集まった社会の掃溜め、痰壺のような場所さ。

そうそう思い出したぜ。

ロクだ。

俺の名前はロク。通称ロク。

なぜロクと呼ばれたかって?

決まってるだろう。

ロクな人間じゃないからさ。

でもね、

ただ、俺にもたった一つだけ取り柄があるんだ。


曲がったことは嫌いなんだ。

えっ?なんだって。

そんな人間が少年院を出たり入ったりするか?って。


何言ってるんだよ。

お前、世の中の事何も知らないんだな。

そういう真っ当な人間ほど爪弾きされるんだぜ。疎ましく思われるんだ。誤解されるんだ。だから、自分の身を守るため鉄拳を下すんだよ。

周りを見てみろよ。

争いごとはダメだと言いながら殺し合いの戦争がいまだに続いている。

暴力はダメと言いながら、暴力が街を闊歩している。

盗んじゃだめだ。人を騙しちゃだめだと言いながら

オレオレ詐欺がはびこってる。

イジメはダメだと言いながらイジメは続いているじゃないか。


真っ当な声は届かない。みんな見て見ぬふりをする。長い物には巻かれろってさ。

挙句の果てに騙された方が悪いってよ。

結局、弱いものは無視され、捨てられていくんだ。


そんな世の中に抵抗すればするほど、反社のレッテルを張られ社会の片隅に追いやられていく。まあ、俺に関してはそんなところかな…。

俺が生きている時の話だけどな。

何怪訝な顔をしてるんだよ?


ああそうだ。もう一つ大事なことを言い忘れてた。


俺は一度死んでるんだ。完璧にね。


死んだ人間がなぜ話してるかって?お前ゾンビかって?幽霊?悪霊?浮遊霊?地縛霊?


色々言ってくれるじゃねえか。

だけど全部違うんだなあ。


俺はさあ、死神だよ。

なぜか死神として生まれ変わちっまたのさ。

そしてお前の前に現れた。

分かるだろう。この意味が…。

まだ分からないって?

じゃあ教えてやるよ。


見ろよ。あの橋の欄干からロープが垂れてるだろう。

そのロープに首吊った男がユラユラ揺れてるじゃないか。

「分かるだろう?」


「つまり、あれがお前だよ。お前こそが霊そのものさ。しかも生きのいいね」


「さあ、連れてってやるよ。いい所へ」



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