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ウンディーネからの要請

 席に座ってもらって、話を聞く体勢になると、ウンディーネは少し思案顔をしてから、話をし始めた。


「ここの土地に喫茶店を開くことを許可したのは、女神様と言ったようですが、本来この土地には私の許可が無ければ、建物を建てることは出来ないのですよ。」

「それは、この土地を保護しているからでしょうか?」

「いえ、この湖周辺の土地は私のリラックス空間としていて、建物を建設できないようにしているのです。」

「・・・・・それだけの理由?」

「ええ、とても重要な理由ですよ。そんな中いきなり建物が建っていたら、だれでも文句を言いたいでしょう。」


 話を聞いて、もっと重要な理由があるものだと思っていたら、その理由がただのリラックス空間に邪魔な建物が出来たから、文句を言いにきたってだけのことで、内心あの駄女神と同じ匂いがしそうな人物だ。

 しかし、湖の精霊とあって、無下に扱うとどんな報復措置をされるか分からない。ここからの質問は慎重にしていかないと、不快させて何かされるとこちらが困ることになる。

 そう考えていると、ウンディーネも何かを考えているのが見て取れた。そして、何かを思いついたのか、こちらに向かって笑顔を向けてきた。


「こうなってしまっては、致し方ないので、この土地で喫茶店を経営することを許可します。しかし、私に何かしらの優遇をしてもらうことを条件といたします。」

「な、なるほど。しかし、その優遇はどのようなことをすればいいのですか?」

「そうですね。たとえばお茶を無料で提供してもらうとか。ケーキをただで提供してもらうとか。何ならお代をただにしてくれるって言うのもありですね。」

「そんなこと無理に決まってます。ただでさえお客様が来るかどうかも分からないのに、ウンディーネ様にそんなことしたら、廃業してしまいますよ。」

「それは貴方の頑張り次第でどうにかなるんじゃないんですか?私には関係ないことです。」


 この人、駄女神以上にわがままかもしれない。しかも、自分が無理な注文をしている自覚がまるで無い。これは相当面倒な相手かも知れない。しかし、ここで引いてはさらに無茶な注文をされる可能性すらあるので、早々にもう少しゆるい条件にしてもらわないといけない。

 何か解決策はないかと頭を悩ませていると、ウンディーネは満足そうにお茶を飲んでいる。


「分かりました。それでは、ここに来た時にケーキを1つ無償提供すると言うのはどうですか?」

「1つだけですか?それはいささかケチと言うものじゃないですか?それに私の憩いの空間を破壊しておいて、それはあまりにも無責任ってもんじゃないんですか?」


 面倒くさい。非常に面倒くさい。てこでもこの条件をのまないと、動かないといった様子が見受けられる。

 しかし、今の状況だけを考えてみると、ウンディーネの条件をのんだら、近いうちに破産することは目に見えている。

 だが、こちらも生活がかかっているので、簡単にこの条件をのむことは出来ない。


「これ以上の譲歩は出来かねます。そうしないと私の生活が困窮に陥る可能性があるので、そこは理解してもらえると助かります。」

「う~ん、それはなんとなく理解できますけど、それでもこの条件以外だと、この土地からの立ち退きぐらいしか考えつかないのですよ。」

「なら、月に一回無料サービスをするってのは、どうですか?」

「月一回ですか。まあ、これ以上の条件は出てこないので、それでOKとしましょう。」

「ありがとうございます。それで、正式に開店をしたら、またお知らせするので、何処に行けばいいか教えてもらってもいいですか?」

「それなら、この隣の雑木林の中に泉があるから、そこに手紙を投げ込んでもらえれば、こちらに伝わるようにしとくわ。」

「分かりました。そのようにするので、条件はこれで、いいですか?」

「仕方が無いわね。それで、手を打ちましょう。」


 こうして、ウンディーネとの条件の交渉は無事終わり、お茶を飲み終わると帰っていった。

 しかし、正式に開店するには、まだ必要な物があるので、しばらくの間は街と喫茶店の往復だけで終わりそうだな。

 今日は疲れたから、早めに寝ることにした。

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