第一の来客はウンディーネ!?
メルカーの荷馬車にまた乗せてもらって、馬車道を南に南下していると、喫茶店に程近い場所になったのでメルカーにお礼を言って降ろしてもらった。そこから、道なき道を荷車を押しながら喫茶店に向かった。
喫茶店に向かっている最中、馬車道と喫茶店をつなぐ道を整備しないといけないかな?と考えながら、物思いにふけながら、ひたすら重い荷車を押して歩く。
汗を滝のように流しながら歩いていると、ようやく半分に到達したと思ったら、喫茶店の外観が見え始めた。後半分だと気合を入れて荷車を押していこうと思ったら、喫茶店の入り口辺りで、ウロウロしている人影を見つけた。
見たところ、鍵がかかっており中に入れないから、外をウロウロしながら人を探しているように見える。これは、もしかしたら客としてきたのかも知れないと思い、急いで足で荷車を押していった。
息を切らしながら懸命に荷車を押して近づいていくと、出入り口付近でウロウロしていた人物も俺の存在に気づいて、こちらを注視してきた。
ようやく出入り口に到着すると、こちらと距離をとりつつ警戒するようにこちらを見てくる人物。何も警戒されるような事はしてないはずだが、これは致し方ないことなのかもしれない。
気を取り直して、荷車を出入り口近くに止めると、改めて振り返り話かけることにした。
「いらっしゃい。この喫茶店に何か御用ですか?」
「き、喫茶店?ここは喫茶店だったのですか?」
「そうですよ。看板を出してないので分からないかもしれませんが、ここは立派とした喫茶店です。」
「な、なるほど。しかし、誰の許可を取ってここに喫茶店を開業したんですか?」
「そ、それは・・・女神様ですよ・・・」
「女神様!?でたらめを言うのもいい加減にしてほしいんですが!」
「でたらめじゃありませんよ。こう見えて異世界から転移してきたばかりなので、でたらめを言っているわけではないのですが、これは本当のことです。」
「じゃあ本当に女神様から下賜されたと、そう言いたいんですか?」
「そうですよ。信じてもらえないかも知れませんが・・・」
「にわかには信じがたいですが、貴方の言葉を信じるしかなそうですね。」
「ありがとうございます。ところで、ご用件は何でしょうか?」
「ああ、名乗り遅れましたが、私の名前はウンディーネ。この精霊湖の守り主です。」
「え、、、ウンディーネ?この湖の守り主?もしかして精霊様でしょうか?」
「その通りですよ。この湖の精霊で、とても偉大な存在なんですよ。」
「では、中で話を聞きますので、しばらくお待ちください。」
そう言って、入り口の鍵を開けて、荷車の荷物を中に運び込む。
この対応に文句が無いのか、おとなしく外で待ってもらっているウンディーネ様?を目の端に映しつつ作業を続ける。
しばらくして、ようやく荷物をすべて中に運びこんだので、改めて中に招きいれると、カウンター席に案内する。
「今はまだ、料理などのおもてなしが出来ませんが、お茶だけでも入れさせてください。」
「申し訳ありませんね。突然の訪問になってしまいまして。」
「いえ、今日から開店とまではいかないにしろ、お客様が来ないとも限らないので、こちらのミスですよ。お気になさらないでください。」
「そう言っていただけると、助かります。」
「それで、本日のご用件をお聞きできますか?」
こうして、ウンディーネを店内に案内して、どんな内容の話が飛び出るのか、緊張した面持ちで待っていると、発しられた言葉は俺の想定とは少し違った内容だった。




