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異世界人

 メルカーは、コーヒーカップを置きながら目を細めた。


「兄さん、異世界人だろ?」

「何でそれを?最初から気づいていたのですか?」

「そうだな。このあたりじゃ、黒髪黒目の人間は限られている。東方の島国出身かとも思ったが、服装がまるで違ったし、こっちの言葉を理解してたみたいだから、こいつは異世界人だろうと思ったのさ。」


 やはり、姿が珍しいのか最初から疑問を持っていたみたいだ。

 しかし、そんな理由で優しくしているのかと疑問に思って聞いてみた。


「それが理由で俺に優しく接してくれたんですか?」

「そうだな。異世界人なら、不思議な能力を持っていることが多いと話を聞くし、出来るのであれば、俺もその恩恵を受けようと思って近づいたんだが、思ったような能力がなさそうだったから、少し落胆していた。」


 そんなことを言われて、少し納得できる部分もあったが、少し疑問に思ったことが1つある。

 それは、この世界には異世界人がそれなりの数、転移・転生しているのか気になったので、聞いてみることにした。


「そんなに異世界人はこの世界にいるのですか?」

「そうだな。話を聞くに、10年に2人から3人ほどがこの国には現れるらしい。そのほとんどが、冒険者ギルドに所属して目覚しい活躍をしているらしい。」

「冒険者ギルドに所属するという事は、戦闘能力が高い方が多いんですね。」

「そうだな。それ以外に聞く話だと、領主になったり、自分の商会を開いて大儲けしていたり、教会で聖女として活動してたりと、異世界人は幅広く活躍していることのほうが多いぞ。」


 なるほど、この世界では俺と同じように転移してきた奴らが幅広く活躍している中、こんな喫茶店を経営するような人物は俺一人なのかもしれない。

 そう思うと、あの駄女神にもっと色々要求してもよかったのかもしれない。

 そんなことを考えていると、メルカーはおもむろに袋から一枚の紙を取り出した。


「これが、今月の王都の新聞だ。ここに主だった連中の活躍が載っている。読んでみるといいぞ。」

「ありがとうございます。少し読まさせてもらいますね。」


 そうして、新聞に目をやると、そこには数人の異世界人だろう人物の似顔絵が書かれており、その下にどのような活躍をしたのか、詳細が書かれていた。

 それ以外の記事は、王都の行事の説明や、他国の情報が小さく載っているだけだった。


「どうだ?異世界人の活躍は。みんなかなり活躍しているだろう?」

「そのようですね。俺にはこんな活躍できるようなことはできません。そんな能力もありませんしね。」

「そうだろうな。しかし、この喫茶店にも何か特殊な物があるんじゃないか?」

「特殊と言ったら、裏庭にあるコーヒーと紅茶の木しかありませんよ?」


 この喫茶店で特殊な物と言えば、裏庭に生えているコーヒーと紅茶の木しかない。

 後は特別な物などないし、あったとしてもレシピ本くらいしかないなと考えていると、メルカーは目を光らせて前のめりになって聞いてきた。


「ほう、コーヒーと紅茶があるのか。それはぜひとも確認してみたいな。」

「特に特別な物ではないですよ。ただ年中通して収穫できるってだけで。」

「それが、特殊すぎるんだよ。とりあえず見せてくれないか?」

「分かりました。それでは裏庭に向かいますか。」


 こうして、メルカーを裏庭に案内すると、目を輝かせて色々と見て周っていた。

 何がここまで熱心になるのか理解が出来なかったが、この後メルカーから説明を受けて、これは売れるかもしれないと密かに考えるのだった。

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