調理器具とメルカー
フィールとの食事が終わり、また別れると、次は金物屋で調理器具を購入するために移動を開始した。
道すがらどんな商店があるのか、見回りながら歩いていくと、お目当ての金物屋を見つけることができた。
中に入ると、いたるところに調理器具や刃物が置いてあり、目移りしてしまいそうになった。
しかし、購入するのは泡だて器と金属性のボウル、フライ返し、トングなど、ちょっとした小物だけの購入に留めて、購入する物をすべて購入して、店の外に出る。
「これで、買いたい物は全部そろったかな。後は店を開いてから徐々に増やしていけばいいか。」
荷物を持って帰ろうとしたとき、一台の荷馬車が近づいてくるのが見えた。
邪魔になるといけないと思って、隅によって通りすぎようと思ったら、見覚えのある顔を発見した。
その荷馬車は俺のすぐ近くに止まると、御者台から男が一人降りてきて近づいてきた。
「いつぞやの兄さんじゃないか。こんなところで偶然会うとは思ってもみなかったぞ。」
「メルカーさんこそ、また仕入れに来たんですか?」
「そうだぞ。ここの魚は評判がいいから、毎日のように仕入れないとすぐに売り切れになっちまうのさ。」
「そうだったんですね。しかし、毎日仕入れに来るのならどこかの商店と契約したらいいじゃないですか。」
「それも考えたことがある。だが、自分の目で見て、仕入れるからこそ、お客様が来てくれる。だからこそ、そこは譲れないものがあるんだ。」
メルカーの言っていることはもっともだ。
自分の目で見て仕入れるほうが納得できる物を仕入れることができる。
そうすれば、多少高くともお客が納得して、また買いに来てもらえる可能性が高まる。
しかし、今の時間帯はすでに市場も閉まっている時間じゃないかと、疑問に思いメルカーに聞いてみることにした。
「メルカーさん。この時間帯ってもう市場が閉まっている時間じゃないんですか?」
「ああ、お前さんは知らんかもしれんけど、朝だけじゃなくて、色々な時間帯で漁をするから、いつ行っても新鮮な魚を仕入れることができるんだよ。」
「へぇ~そうなんですね。でもそれだと種類が違ったりして、仕入れをするときに困るんじゃないんですか?」
「それは大丈夫。ここの湖にいる魚はある程度、種類が決まってるから時間を間違えなければ基本仕入れることができるんだ。」
「という事は、この時間でほしい魚がいたから、仕入れに来たんですね。」
「そういうこと。でも、今日は数が少なかったから、仕入れるのに少し値が張ったがな。」
なるほど、時間によって捕れる種類がことなるなら、時間を見計らって市場を見て周るのもいいかもしれない。
新しい情報が聞けてこちらは助かるが、メルカーに何か恩返しをしたいのだが、どうしたものかと考えていると、1つ案が浮かんだので聞いてみることにした。
「メルカーさん、色々情報を教えてもらったお礼に、ぜひうちの喫茶店に来てもらえませんか?」
「喫茶店?この近くにそんなものがあったか?」
「いえ、街の外にあるんですけど、帰り道のついでによっていきませんか?」
「そうだな。帰り道の途中なら、あまり魚に負担にならない程度だったら、寄れなくもないかな。案内はよろしく頼むぞ。」
こうして、メルカーを喫茶店に誘うことができたので、荷馬車に乗り込み、一緒に俺の喫茶店向かうことにした。




