朝食と集客
翌日、硬い床で寝たせいなのか、身体の痛みを感じて起きることになった。最悪な目覚めとなってしまった。
仕方が無いので、起きて朝食の準備でもしようと身体を起こすと、二階から誰かが降りてくる音が聞こえた。
誰が降りてきたのか視線をそちらに向けると、フィールが降りてきたがその姿に俺は顔を背けることしか出来なかった。
フィールの格好は、Tシャツがめくりあがって、短パンもずれて下着がちらちらと見えてしまっている。すぐさまフィールに文句を言うことにした。
「フィール!その格好をどうにかしろ!目のやり場に困るから!」
「うぃ?寝起きなんだから、そんな大きな声ださないでよ~」
「とにかく!早く服装を直してくれ!」
「わかったよ~。朝からうるさいな~」
そう言うと、フィールはゆったりとした動作で、服装を直していく。直し終わると、カウンター席に座り肘をついて、こちらを見てくる。
「ねぇねぇ、朝ごはんは何にするの?」
「いきなり朝飯の話かよ。そうだな、フレンチトーストを作ろうかと思ってるよ。」
「それ以外にお肉とか無いの~?」
「朝から肉を用意するわけ無いだろ。おとなしく待ってろ。」
フィールの要望を無視して、フレンチトーストを作っていく。
しばらくすると、ウンディーネも起きてきた。こちらはフィールと違ってきっちりした格好で現れたので、俺も文句を言うことは無かった。
ウンディーネが席に座るのを見計らって二人にフレンチトーストを出した。出されると二人は静かに食べ始め、それにあわせて自分も食べ始める。
朝食が終わり、二人に紅茶を入れてやると、今日の予定を確認してみることにした。
「フィール、この後の予定はどうする予定だ?」
「う~ん、私は泉の噂の真相も分かったし、街に戻ることにするよ。」
「ウンディーネ様は?」
「私も湖に戻ってゆっくりするつもりです。」
「それより、リュウタロウは、どうするつもりなのさ。」
「俺か?俺はまた街に行って店に必要な看板だったり、調理器具を見繕ってくるつもりだ。」
そう、フライパンや包丁といった基本的な調理器具はそろっていたが、蒸し器や泡だて器などちょっとした調理器具が不足しているので、それを買いに行こうと思っているのだ。
調理器具や看板は必要経費だと思っているが、資金はかなり目減りしているので、慎重に検討しないと次の日の食材などが買えなくなってしまう。
そんなことを考えているとフィールが動き出した。
「それじゃあ、私は帰る準備をしてくるよ。朝ごはんごちそうさま。」
「それでは、私も湖に帰ることにします。」
「なんだ。もうちょっとゆっくりしてても問題はなかったのに。」
「私は街に戻って帰還報告しないといけないし、この喫茶店の話もしたいから、急いで帰るよ。」
「宣伝してくれるのか?それは助かるがいいのか?」
「問題ないよ。それに宣伝するだけだから、本当にお客さんが来るかどうかは分からないよ。」
それでも宣伝するのとしないのとでは、集客に歴然の差が出るから、してもらえるのなら助かる。
しかし、フィールが言っているように、お客が来るかどうかは、賭けに近いものがある。
なので、看板を設置して、少しでも集客を頑張らないといけない。
「なら、私もこの喫茶店の話を広めましょうか?」
「ウンディーネ様、誰かあてがあるのですか?」
「精霊でも人族と同じように食事をしたりする者もいるので、その人たちに話をすれば集まると思いますよ?」
こうしてウンディーネの助け舟もあり、集客はある程度期待できるものとなるだろう。




