晩御飯は三人で・・・
フィールの発言に頭を悩ませながら、とりあえずは今日の作業を終了させることにして、喫茶店へと戻ることにした。
喫茶店に戻ってきて、フィールはご馳走が待ち遠しいといった表情をしているので、約束を反故にすることも出来ない。
しかし、このままご馳走したら、泊まることが確実になってしまう。それだけは何とか回避したいところだが、当の本人は特に気にしてない様子だった。
「フィール、本当に泊まっていく気か?何なら明日にしてもいいんだぞ?」
「やだよ。せっかく手伝いもしたのに、そんなおあづけされたら、私暴れるかもしれないよ?」
「うっ。そうなると、俺の喫茶店が壊されかねない。仕方が無いから、料理は作ってやるが、泊まる場所はどうするんだ?」
「それなら寝袋を持ってるから、ここのスペースを少し使わせてくれたら、それで大丈夫だよ。」
「それに風呂はどうするんだ。一応ここの二階にシャワーと小さい浴槽はあるが、俺がいると入りづらいだろ?」
「特に気にしないよ?こんな貧相な身体を見ても欲情しないでしょ。」
と笑いながら言うが、フィールの身体は出るところは出ているし、それなりのプロポーションをしているのは服越しだがよく分かる。そんな人物が風呂に入るってなったら、俺でも遠慮してしまう。
「なんだ。風呂は使っていいから、入る時になったら、一声かけてくれ。そうしたら、少しの間部屋にこもってるから。」
「そうなの?あんまり気にしてもしょうがないと思うけど、それなら入る時に声をかけるね。」
「そうしてくれ。それより、今日の晩飯はどんな種類がいいんだ。一応手伝ってくれたから、リクエストはある程度聞いてやる。」
「それなら、お肉がいいな。私ドラゴン族だから、お肉が好きなんだよね。」
「分かった。肉料理だな。それなら、仕込みに少し時間がかかるから、好きなようにしててくれて大丈夫だ。」
「分かった。それなら、ちょっと周りを散策してみるよ。」
「了解。迷子にならないように建物が見える場所にしとけよ。」
こうして、俺は料理を、フィールは散策をすることになった。
俺はどんな肉料理をしようか、レシピ本とにらめっこしながら、頭を悩ませていた。
肉野菜炒めなら簡単に作れるのだが、フィールの言っているご馳走とは違うと思うし、ステーキにするにもご馳走とは言えないとは思っているので、どうしたものか悩んでいると、扉を開ける音が聞こえたので、客席のほうに顔を向けると、そこには招かれざる客の姿が目に映った。
「ウンディーネ様。よくお越しくださいました・・・」
「ええ。貴方には言わないといけないことが沢山ありますからね。またこうして出向いたわけですよ。」
その顔は、笑顔をしているが、その後ろに般若を付き従わせていた。
フィールのほうに視線を向けると、申し訳なさそうな顔をしながら、手を合わせて頭を下げていた。
このまま立ち話をするわけにもいかないので、おとなしく席案内することにした。
「それで、ウンディーネ様、本日はどのようなご用件でしょうか。」
「言わないと分からないようなことではないと思いますが、この近くの草原を焼き野原にしてくれた件についてですよ。」
「それについては、フィールのほうから説明があると思いますよ?」
「何でそこで私に振るかな!私はリュウタロウに提案して、それを実行したにすぎないんだけど!」
「どういう理由か詳しく聞かせてもらいましょうか?」
「そ、それより、今から食事にしますので、ウンディーネ様もご一緒にどうですか?」
「話をそらされたようですが、確かに食事をするのにはいい時間ですね。なら、食事をした後に詳しい話を聞くことにするので、準備をお願いしますね。」
こうして、二人で食事をするはずが、招かれざる客を迎え入れ、三人での食事になることが決定した瞬間だった。




