道を整備しよう
ドラゴン族のフィールの協力を得て、馬車道と喫茶店を結ぶ道の整備に取り掛かることにした。
「ねぇ、本当にこれを手伝ったら、晩御飯も作ってくれるんだよね?」
「男に二言は無い。必ず作ってやるからおとなしく手伝ってくれ。」
「むぅ~、わかったよ。でも手伝うからには、ご馳走を期待してるからね。」
そう話しながら、鎌と鍬をそれぞれ持って道作りを始めた。
最初のうちは文句を言っていたが、作業を開始すると、おとなしく指示したとおりに草を刈って行く。しかし、馬車道までの距離はそれなりに離れているので、かなりの重労働になるのは理解していたが、それでも一人でやるよりは誰かと一緒にやるほうが断然いいと思える。
しばらくした草刈をしたところで、フィールがある提案をしてきた。
「ねぇ、このまままっすぐ道を作るなら、私のブレスであたり焼いちゃったほうが早いと思うんだ。」
「ブレス?あぁ~そう言えばドラゴン族だったんだな。もし出来るのなら、そうしてもらったほうが手っ取り早いかもしれんな。」
「でしょ。それならブレスしちゃうから、少し離れてて。」
「ああ、よろしく頼む。」
そう話すと、フィールから少し距離をとって、様子を見ることにした。
すると、フィールは大きく息を吸い込んだと思ったら、口から炎を吹き出した。その熱波は、離れていた俺の皮膚を焦がすほどの熱をもっていた。
時間にして、1分ほど炎をはいたと思ったら、口を閉じてこちらに振り向きピースサインをしてきた。
「どうよ。これだけ燃やしたら、道作りもはかどるでしょ。」
「あほか!何だあの熱量は!こっちまで、焼けるかと思ったわ!」
「だから離れてって言ったでしょ?何もそんなに怒らなくてもいいじゃない。」
「はぁ~、分かった。俺がもう少し距離を離しとけばよかったとして、何で丘一帯を焼き野原にしたんだ!」
「だって、その方が道を作るのに邪魔になるものが少なくなるから、手間をはぶいた結果だよ。」
「だからと言って、ここまでする必要はなかっただろ!」
「まぁ、細かいことは気にしない気にしない。むしろ、後は道になる部分をたがやすだけで、道になるんだから、気にしないほうが楽だと思うよ。」
フィールの性格を考えていなかった結果、このような焼き野原になってしまったが、結果として道を作る工程が大幅に省略できたのは言うまでもない。
しかし、ここまでやってしまうと、あのウンディーネから何か文句を言われるかもしれない、と言う心配ごとが残るが、やってしまったことは仕方が無いので、このまま作業を続けることにした。
作業を続けていると、日が傾き始めたので、今日の作業はここまでにしようと思いフィールに話かけた。
「フィール、今日の作業はここまでにするから、そろそろ帰る準備をしたらどうだ?」
「帰る準備って何?」
「何じゃなくて、街に戻らないと、宿とかに泊まれなくなるし、何より門が閉まってしまうだろう。」
「それはそうだけど、あたし晩御飯をご馳走してもらうつもりでいたから、それを食べないことには街に行くつもりは無かったよ。」
しまった。そう言えば飯をご馳走すると言って、今回作業を手伝ってもらうことにしたのを忘れていた。しかし、今から作ることにしたところで、城門がしまるまでに街に戻すことは出来ないだろう。
そうなったら、フィールには喫茶店で、一夜を明かしてもらうしかなくなる。しかし、俺の喫茶店には客人を泊めるような部屋は存在していない。
ならどうすれば街に戻ってもらえるか、考えを巡らせているが、これと言った解決策が見つからない。
「何なら、ここで泊めてよ。」
「はぁ?そんなこと、出来るわけ無いだろう。部屋なんて余ってないし、家財道具さえそろえてないから、床で寝ることになるんだぞ。」
「別にいいよ。普段から床で寝てるし、何なら同じ部屋でも大丈夫だよ?」
この少女は自分の言っている意味を知っているのか分からないが、本当に泊まる気でいるだろう。
どうしたらいいか、頭を悩ませながら、地面に座り込んで考え始めたのであった。




