第二の来客?ドラゴンのフィール
腹ペコの少女に料理を出すと決めたことはいいが、何を作ろうか迷う。あまり時間を掛けた料理は、少女が待てないと思うので、簡単な料理がいいとは思うのだが、魚を使うか肉を使うか迷う。
そうこうしていると、カウンター席に座っている少女が待ちきれないといった表情でこちらを見てくるので、今回は魚のムニエルを作ることにした。
ムニエルならそんなに料理工程は無いので、すぐに取り掛かることにした。
今日買ってきた鮭らしき魚に、昨日買った小麦粉をつけて焼きながら、ソースは醤油とバターを使ったシンプルなソースを作成。それに野菜を盛り付けて完成だ。
出来たムニエルを皿に盛り付けたら、少女の目の前においてやる。ナイフとフォークを置くと、待ってましたという勢いで食べ始めた。
食べ終わるの待ってから話を聞こうと思っていると、すでに皿にあった料理は食べ終わっており、顔を見てみると、まだ足りないといった表情が見て取れた。
仕方が無いので、肉を追加で焼いてやると、それも喜んで食べ始めた。
しばらく待っていると、追加で焼いた肉も食べ終わり、満足したという表情をしたので、何故ここに来たのか聞いてみることにした。
「食べ終わったところ悪いが、何故こんな場所で行き倒れになっていたんだ?」
「それは、最初に言ったように三日も何も食べてなかったからだよ。」
「それなら、この近くに街があるから、そこに向かえばよかったんじゃないのか?」
「そうなの!知らなかったよ。それなら、先に街に行ってから、ここにこればよかったよ。」
「それに、何でこんな何もないところを一人で探索してたんだ?」
「それは、この森の中に精霊の泉があって、そこにお願い事をすると、叶えてくれるって言い伝えがあったから、探しにきたんだよ。」
「それは見つかったのか?」
「うん、見つけたよ。でも、お祈りしてみたけど、願い事を叶えてくれる精霊には会えずじまいだったけど。」
この話を聞いて、最初に思い浮かんだのは、昨日来たウンディーネのことが思い浮かんだ。
あの精霊が願い事を叶えるとは、とてもじゃないが信じられない。何なら、自分の気分が乗らないと何もしないんじゃないか?と思うが、何が理由でこんな言い伝えが広まったのか理解が出来ない。
「そう言えば自己紹介がまだだったよね。私の名前はフィール。ドラゴン族の冒険者だよ。」
「俺の名前は、リュウタロウ。この喫茶店の店主をしている。」
「リュウタロウって変な名前だね。ここらじゃ聞いたことが無いけど、出身は何処なの?」
「ここからかなり離れた場所だよ。説明するのは少し難しいかな。それよりフィールは冒険者なんだよな。それならパーティーなんか組んだりしないのか?」
「私、冒険者になってから、日が浅いから、パーティーを組んだりしないで、一人で色々回ってる最中なんだよね。」
「なるほど。しかし、一人で行動するなら、地図ぐらい持っているだろ。何で遭難したんだ?」
「近場だったから地図も持たずに来ちゃったんだよね。まさか自分が遭難するなんて思ってもみなかったよ。」
こんな雑木林で遭難するぐらいだ、この少女、実はおっちょこちょいなのかもしれない。
「とりあえずは、何も無くてよかった。それと食事代はあるんだろうな?」
「えっ。代金とられるの?」
「当たり前だ。冒険者なら、それなりに金は持ち歩いてるだろう。値段は安くしといてやるから、それなら大丈夫だろ?」
「いや~、今手持ちのお金そんなに無くて・・・」
「マジか・・・それなら、少しの間店の手伝いをしてくれるのなら、今回のお代はなしにしてやろう。」
「え~、さっきも手伝ったのに、また手伝わされるの~」
「いいから、手伝え。そうしたら晩飯も準備してやるから。」
「ホント!それなら手伝う!」
こうして、臨時の労働力を手にすることが出来たので、馬車道と喫茶店をつなぐ道を作ることが出来るかもしれない。
そして、フィールの手伝いのもと道を作り始めるのだった。




