第一話 転生
「うしっ。準備はできたっと。おっと、そろそろ待ち合わせの時間だな。」
10月8日午前10時半、俺は家を出た。
「今日はいい天気だなぁ。絶好のデート日和だ。」
俺には彼女がいる。小さい頃からの幼馴染だ。長年一緒にいたせいか、いつの間にか付き合い始めた。
「やっべー。意外と出るの遅かったかも。空待ってるかもなー。」
「そんなことないよ、コウちゃん。」
いきなり後ろから空が現れた。
「うわっ。空ぁ、お前びっくりさせんなよ。心臓に悪いぞ。」
彼女はよく後ろから奇襲攻撃を仕掛けてくる。気配もないから余計驚く。
「気づかないのが悪いんだよー。」
なんだよその引っかかった方が悪いみたいな言葉。
「待ち合わせ場所に着く前に出会ったんだしいいでしょ。」
俺は左海光咫23歳。そこそこいい高校を卒業して、そこそこの大学に入って、今年就職したところだ。給料や社内環境も良く、これから伸びていくという感じの会社だ。
彼女は海風空23歳、同い年だ。生まれた病院から幼稚園、小学校、中学校、高校まで同じでずっと一緒に過ごして来た。
今日は久しぶりに2人で都内を歩き回って楽しもうとしている。
「ねえねえコウちゃん、今日はまずどこに行きたい?」
「そーだなー。とりあえずちょっといったところのカフェでジュースでも飲もっか。」
「いーねー。サンセー。」
俺たちが2人で会うときはいつもカフェでジュースから始まる。
「今日もいつも通り平和だなー。」
「そりゃ今の時代、日本じゃ滅多なことがない限り戦争は起きないだろうね。」
そいう意味じゃないだけどなー。
最近この辺りではマンションの建築が盛んになってる。この辺りはあまりたくさんの人が集まるような場所ではない。落ち着いた場所だけど、そのうち人でいっぱいになるのかなー、と思っていたとき。
バキッ。
「え、今なんか…「コウくん、上!!」」
上を見ると…クレーンで支えてた鉄骨が落ちて来…
ドゴーン。
「コウくん!コウくん!しっかりして!」
あれ、空の声が聞こえる。何やらすごく慌ててるようだが、何があったんだろ…はっ!そういや、クレーンが落ちて来て…まさか死んじゃったとかか?いやでも、空の声は聞こえるし。
あー、もし死んじゃったら今は人生100年時代とかいってるのに5分の1しか生きてないぞ。っていうか帆香を残して死ねるわけないだろうが。
《対象名:左海光咫の生存意思を確認 エラティスにて転生体を作成します。》
どうせ死ぬなら、鉄骨に押しつぶされて死ぬより雷に打たれてみたかったなー。
《対象名:左海光咫の雷術獲得意思を確認 スキル:『雷乃者』 獲得。付属して雷・電流耐性 獲得。》
さっきから聞こえるこの声はなんだ?初めて聞く声なのに聞いてて落ち着くというか、懐かしいような感じというか。温かみがある声だな。
あーあほんとに死んじゃうのかな。鉄骨に押しつぶされるとかないわー。
《対象名:左海光咫の物理攻撃耐性および物理攻撃無効獲得意思を確認。 物理攻撃耐性および物理攻撃無効 獲得。》
俺にはやって見たいことが三つあった。その全ては不可能の領域に入っているが。
一つ目はさっきも言った通り、雷に打たれること。
二つ目は手品のようにものを消すこと。
《対象名:左海光咫の消去術獲得意思を確認 スキル:『消去』 獲得。》
昔小学生の頃、父に連れられてマジックショーを見に言ったことがある。その時そのマジシャンは当たり前のように人を消して…っと思ったら今度はその消された人が現れた。やって見たいとは思いながらも結局はできなかったか。
三つ目は、自分だけの人工知能を作ること。
《対象名:左海光咫の神皇知能獲得意思を確認 『神皇知能』 獲得。》
人工知能があれば仕事とか簡単にやってくれそうだしな。
四つ目はーこれが一番不可能に近いがー光の速度で動くことだ。
《対象名:左海光咫の光術獲得意思を確認 スキル:『光乃者』 獲得。》
まあ、実際に光の速度で動いたら、時間が遅くなるとかなんとか、まあ詳しいことはわからないが誰もが夢見ることだろうな。
世の中って自分の思い通りにいかないもんだろうな…。
《転生体を獲得した能力に合わせ最適化・再構築します。・・・完了しました。転生を開始します。》