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第四章 友達はじめました その4

「颯先輩。さきほどあなたは『一人だけ別行動っていうのも勿体ないだろ? 付き合うよ』と言いましたよね?」

 雑貨屋を出て、アーケードを歩きながら茜が言う。颯のマネらしいけど、前髪を掻き上げてニヒルに笑ったりはしてなかったと思う。

「言ったが、それがどうした?」

 大きなハムスターのぬいぐるみを抱えた颯が横から顔を出す。僕が買ったのだけど、よくもまあこんなに大きなぬいぐるみを買ったものだ。今までぬいぐるみは美衣に頼んで買ってきて貰っていたから、これほど大きなものはさすがに頼めず、店頭で見かけてもその前を通り過ぎるだけで、ずっと我慢していたのだ。大きいぬいぐるみはそれ相応の値段。買うべきか買わざるべきか、財布と相談し、悩みに悩んだが、結局誘惑に負けて買ってしまった。持って帰ることをまったく考慮せず買ったものだから、どうしようと悩んでいると、何も言わず颯が荷物持ちを買って出た。それは悪いと、すぐに奪い取ろうとしたものの、身長差のせいで手が届かず、さらには「司が持つと前が見えなくて危険だ」と痛いところを突かれ、今に至る。

「今日はどこでも付き合うんですよね?」

「ああ、だからなんだよ」

 茜がニヤリと笑う。悪い顔だ。

「言いましたね? 言いましたからねっ。では行きましょう!」

 立ち止まり、勢いよく振り返る。バッと手を広げ指差した先にあったのは洋服屋だった。

 颯の動きがピタリと止まった。気持ちは分かる。僕も

同じだ。

 それは女性向け、おそらくは十代後半から二十代をターゲットとしたお店で、ディスプレイにはレースやらフリルやらがふんだんにあしらわれた、女の子女の子した洋服を着たマネキンが並んでいた。普通だとは言い難い種類の服に属するだろうか。いわゆるゴスロリやらロリータやらと言われているファッションのものだ。間違いなく僕には関係のない場所であり、女になった今でさえも訪れることは一生ないであろう場所だ。

 茜達とは中学の頃から何度となく遊びに出掛けたことがあり、私服姿も飽きるほど見ている。その二人が今目の前に映るフリルとレースがふんだんな服を着ているところは一度も見たことがない。

 それはつまり――

「さあっ、司先輩のファッションショーです!」

 いやらしいほどの満面の笑みを顔に張り付け、茜はそう言い放った。

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