羽ばたく翼
初めての投稿で、初めて小説を書いたので、文章に変なとところがあるかもしれませんが、ぜひ読んでください。
俺はこの世界で鳳蝶と呼ばれ恐れられている殺し屋だ。
この世界では、人間の体内にもともとある魔力を消費して、魔法を使うことができる『魔導士』が存在する。この人々は特殊な訓練や修行を受けて、その体内にある魔力を活用する術を得たものが、魔導士として魔法を使える。魔法の種類は様々で、大きく、『能力系』と『契約系』に分かれている。
能力系というのは、火や水、氷や風などを、道具を使わずに魔法を使える人の事で、反対に、契約系とは、道具や武器、異界の生物と契約し、戦闘などの時にそれらを召喚し、戦う人の事である。
俺も能力系の魔導士で、背中から羽を出す【翼】の魔導士である。基本的に戦闘用の魔法ではないが、いざとなれば翼を硬くして、相手を切り裂いたりということもできるが、俺は仕事をするときは大体翼は使わず、手持ちのナイフや糸などを使って仕事をしている。翼はヤバくなった時の逃走用である。
俺はこの街の犯罪者のギルド、〈暗黒騎士〉という犯罪者ギルド、通称 闇ギルド に所属している。
そしてこの国には『魔王』という奴が国を支配している。俺たち闇ギルドは裏の人間だから、依頼を受けでもしない限り魔王には関わらないのだが、なるほど、今日の俺は人生で一番ついていないらしい。そしてこのタイミングでギルドマスターに呼び出されるということは…………大まか予想はつくが、考えたくもない。でもまあこれ以上嫌なことはないだろう……と。
ギルドマスターの書斎の前に立ち、何もなしに堂々と書斎に入る。
「マスター、なんか嫌な予感がしてならんのだが、話ってなんだ?」
一礼してからマスターの机の前に立つ。
「おぉ、フューバード来たか。まぁそんなに硬くならずに、座りなさい」
そう言って俺を椅子に座らせ自分も反対側に座った。
「今回の仕事は例のごとく依頼主様からのご指名だ。だが今回のは今までとは訳が違うぞ」
そのまま少し躊躇う様子を見せ、ゆっくりと続けた。
「依頼主は元国王で、今も一番権力を持っている貴族の、ハウスホールド家の現当主。アドルフォー・ハウスホールドだ」
それを聞いた瞬間。刹那、時間が止まった。――――あ、これ以上嫌なことあったわ――――と。
「ちょ、ちょっと待ってよマスター。俺犯罪者だぞ! なんで貴族なんかに?」
驚きと同時に焦りと恐怖を感じ、その依頼を断ろうとしたとき、一瞬早く。
「この依頼を断るのはいくら何でも貴族様に失礼じゃろ。それに今回の依頼はなんと魔王の討伐じゃ。不満の募った国民が貴族に魔王の討伐を依頼したらしいのじゃが、貴族様とその護衛達は正面戦闘に慣れておらず、街でお前の指名手配の紙を見てお前への依頼を決めたらしい。報酬は驚きの五百億ジュエル」
いつものように落ち着いた態度で話すマスターを前に、話の内容を理解できていないらしい者がここに一人。
「はぁぁ?! 待て待て待て待て、正直に認めよう確かに五百億なんてあったら一生遊んで暮らせるし正直金は欲しい。が、途中から話しおかしくね? なんで俺の指名手配を知って俺に依頼する話になるんだよ! て言うかお偉い貴族様が受けた依頼をたらい回しにされてるだけじゃねぇか!」
頭の中にある文句をひたすら言い放ち、部屋を出ようとしたが次に言われた言葉で俺は仕事を受けざるをえねくなった。
「詳しい仕事内容は聞いておらんが、この仕事を完遂すればお前のすべての罪の免除と、このギルドを正規のギルドとして認めるという。もちろん暗殺依頼は無くなるが、今よりは断然仕事が増えるだろうな」
ぶつぶつと独り言の様に言ったが、我々闇ギルドの連中にはこの手がかなり有効なのである。罪の免除は、文字通り晴れて無罪放免。正規のギルドに認めるというのは今の暗殺依頼だけでなく、護衛や盗賊退治などの正式に認められた依頼を受けることができるようになり、高額な報酬の依頼がたくさん増えるということであり、傭兵や警備兵におびえて暮らす必要がなくなるということである。俺たちダークナイトは、貧乏な家庭に生まれた子供や、貧困なスラムで生まれた人間が行く当てがない果てに集まった人がほとんどなので、こんな機会を逃すわけにはいかない。
「……わかった。その依頼、受けよう」
少し考えてから覚悟を決めたようにそう叫んだ。
「よう言った! しかしこの依頼は超高難易度の依頼であり、おそらく長い間戻ってこれないだろう。そして成功すればお前の最後の暗殺依頼になる。心してかかれよ! ギルドメンバーにもこのことを伝えておく」
そう言って俺の肩をたたいた。正直に言えばとても不安だが、みんなの気持ちを背負う覚悟と、命を懸ける覚悟をした。
「そういえばマスター、ハウスホールド家のお宅はどこに? なんだかすごく遠いって聞いたことあるんですが…………」
「ん? ああ、そういえば言ってなかったな。彼のお宅は街の南門を道に沿ってまっすぐ進むと着く」
淡々と説明するが、肝心なことが抜けている。――――――――――それはつまり、
「おう、それは分かった。で、一体どのくらいで到着するんだ?
「ん? ああ、そのことか、大体馬車で二週間ぐらいのところにある」
マスターからやっと欲しかった情報が手に入ったが、またまた俺はあることに気付く。
「おいマスターちょっと待て、俺まだ馬車使えねぇぞ。どうすんだ?」
まだ犯罪者で公共の馬車は使えない。かと言ってギルドに馬車があるわけでもない。
そこから導き出される答えは…………
「歩いていけ!」
やはりか、とため息をつき、少しあきれ顔で家に帰る準備をした。
「マスター、明後日出発する。みんなに伝えておいてくれ」
そう言って足早にギルドを後にすると、家に帰る前に闇市に寄った。できる限り武具などを揃えておきたかったからだ。家に着くと、発明家のライナスが出迎えてくれた。彼はマスターの次に信頼している人間で、暗殺の手伝いもしてもらっていた。ライナスは、家に侵入するときなどによく使われるブレスレット型ワイヤー射出機や、それとセットで使う壁などを登るとき滑らないための刃付きブーツやその他たくさんのものを作っている。
「おいフュー、お前明日魔王討伐の依頼でハウスホールドの当主様に会いに行くんだろ? そのあと戻って来るのか?」
「え、おま、なんで知ってんだよ」
「なんでって、そりゃあお前んとこのマスターが連絡してきたんだ。いつ帰ってこれるかわからないらしいな、っつー分けでほら、新しく作っておいた。何か調べたいことがあればいつでも連絡してくれ」
手渡されたものはバンド型の多様通信装置らしい。
「中にはパソコン機能や通話、画像などの転送もできる。まあなるべく使ってくれ、着信は全てライトの点滅だから音でばれる心配はない」
少し得意げに、また少し寂しげに、新作のメカを渡しながら言った。
「フッお前はいつも他人が気付かないところに力入れるよな。おかげで助かってるが」
そのままその日はすぐに寝て、翌日の準備も済ませ、またその翌日、南門の前で、ライナス、マスター、その他何人かに見送られ、街を出た。黒いフード付きのコートを着て。
このときかなりの大荷物を予想していたのだが、仕事道具などを身に着けてみると案外少なく、中くらいのリュックに入るほどだった。
「んじゃ、行ってくる」
勇ましく言い放ち、まっすぐ歩き始めた。
読んでいただきありがとうございました。近いうちに二話も書くので、そちらもぜひ読んでください。