第7話
さて、僕の賭けとは一体なにか。
大きな賭け、そうそれはサークルクラブのスポンサーを受けずに一生徒としてサウスハイに残ることである。もちろんこれはしくじればサークルクラブとの溝は決定的な物となる。だがやる価値はあると思っていた。既にサークルクラブ側が悪意を持ってこの行動を起こしていると僕と家族は判断していたし、そうだとしたら今更決裂もなにもなかった。だとしたら帰国が決定させられ、覆すことが不可能になる前になんとかして残る手段を探る。そのためには昼休み、最初の行動を起こした。レオを念の為の通訳兼交渉の証人としてついてきて貰って僕はサウスハイのスクールオフィス、いわゆる事務室のようなところへ向かった。そこには何人ものスクールカウンセラーが常駐しているが今回僕が用事があるのは一番偉い人だった。その女の人は幸いなことにお昼を食べて丁度オフィスに戻ってきたタイミングで僕達と出会った。
"なんのようかしら"
"大事な話がありまして一応録音してもいいですか?"
"いいわよ"
彼女は椅子に腰掛けて僕の方を見た。僕はiPhoneで録音を開始するとゆっくりと口を開いた。
"僕は今スポンサーであるサークルクラブと揉めており、彼らはこれ以上僕の面倒を見る気がないようです。"
ここで一旦区切る。彼女は事の重大さを理解したのか真剣な眼差しを向けてくる。
"でも僕はまだサウスハイに残りたいのです。"
"それは難しい相談ね。あなたはこの後どこに住むの?"
彼女の英語をレオが日本語に直す。僕はそれを聞いて自分の受け取った意味と違わないことを確認した。
"それはコーチの家を考えています。これからコーチと話して誰の家に行けるか決めます。無理ならば友達の家を考えています。"
"そう、わかったわ。スポンサーと宿泊先さえあれば残れるはずよ。"
"わかりました。ありがとうございます"
ここで録音を切り、僕は皆が待つテニスコートへと向かった。
「ショーゴ、どうだった?」
既にスクールオフィスへ行ってることを知ってた連中から聞かれた。
「スポンサーと宿泊先さえ見つければサウスに残れるって!」
僕は声高らかに報告した。
「やったなショーゴ!」
「まだこれからも居られるんだね!」
皆が次々と喜んでくれる。
「じゃあレオ、宿泊先の方はコーチ達の方にお願いしてみるから。ありがとね。」
レオにそう伝えた。
「おいロッテ、宿泊先コーチの家に移るまでに必要なら短期間うち来てもいいぞ。」
ナカマルがそう提案してくれた。
「ありがとうナカマル」
祝勝ムードで昼休みが終わり、そのまま六限までリキと僕はテンションがすごい高いまま終わった。
「じゃあリキ、俺野球行くから。」
「うん、頑張ってね。コーチの家行けるといいね。」
「ありがとな!じゃあ!」
「うん!」
アルツーの教室の前で別れるとそのまま野球グラウンドに向かって走る。いつも通り一礼するとまずヘッドコーチセインの所へ向かった。
"こんにちはコーチ"
"おうショーゴ、大丈夫か?"
セインは握手しながら気遣ってくれた。
"ええ、とてもいいことがあったので"
"どうした?"
僕の嬉しそうな顔をみたコーチが聞いてくる。
"実は、スクールオフィスに行ったところスポンサーと宿泊先を見つければ残れるって。"
"本当かショーゴ!"
セインも心から喜んでくれた。
"なら他のコーチ達にも言ってきた方がいい。コーチ達は既にお前に何があったか知ってるから。"
"はい!"
笑顔でコーチクラークのところへ言った。
"こんにちはコーチクラーク"
そう言って最年少コーチの僕は最年長コーチの手を握る。多分40歳以上は離れているはずだ。
"元気かショーゴ"
"ええ、とっても、実はスポンサーと宿泊先さえあればサウスハイに残れるってスクールオフィスで言われたんです。"
"本当か!?おめでとう"
クラークはとても驚いた後祝ってくれた。
"そこでコーチ、お願いなんですけど"
僕は多少申し訳なさげに切り出す。
"ああ、うちはサウスハイのすぐそこだからな。宿泊先は大丈夫だぞ。ところでスポンサー料はいくら払わなきゃならないんだ?"
コーチには泊めてもらうだけでも迷惑なのにこれ以上迷惑はかけられない。
"スポンサー料、生活費は全て僕の家族が支払います。ベッド一つ与えてくれればそれで大丈夫です。"
そうするとコーチは笑顔で頷いた。
"本当か?一応帰って家族とも話すが多分うちで受け入れられると思う。"
"ありがとうございますコーチ"
そう言って僕は頭を下げた。なんて素晴らしい人達とアメリカで知り合えたのか。とても嬉しい気持ちでいっぱいだった。すぐにセインにも報告して、セインも良かったなと言ってくれた。
僕の賭けは上手くいったのだ。少なくともここまでは。
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