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第2話(サンディエゴ編1)

2話目です。

ここから伸びていくといいな、と願ってます。

暗い車内で表情が見えないエイミーに質問する。

"それは、どういう意味?"

エイミーは表情をこちらに見せないまま喋った。

"あなたの帰国が決まったわ。"

なんの感情もこもってないこの一言に僕は頭を殴られた。

"どういうことなの?"

エイミーはこの質問を無視した。やがて車はエイミーの家に到着した。以前1度だけ遊びに来た家がこの時は不気味に感じた。家に入ると自分の部屋とこの家のルールを言われた。晩御飯を終えて寝る用意をしているとエイミーのスマホに1件の電話が掛かってきた。エイミーがそれを取って話し出すが僕にはエイミーの言葉しか聞こえない。

"そう、本当に決まったのね"

"ええ、わかったわ。"

"彼?彼ならここにいるけど"

"わかった、代わるわ"

エイミーはこちらにスマホを渡してきた。

"ウォーレンから貴方に電話よ"

ウォーレンはサークルクラブ5280地区のYEOで留学関係の責任者(?)のような人だ。受け取ったスマホを耳に当てる。

"もしもしウォーレン"

"ショーゴか、君に聞いてほしいことがある。今日私とメロディーで話をして君の帰国を決定した。日本側には既に伝えてある。こうなってしまったのは残念だ。"

僕は目の前が真っ暗になりそうなのを抑えて聞いた。

"明日、話をさせてください"

明日からのサンディエゴイベント、もちろん彼も来ると思ってそう提案した。

"わかった。"

彼の了承を得たため僕は再びエイミーに代わる旨伝えてエイミーにスマホを返した。自室に戻ると僕はLINEを開いて母とのトーク画面を開くとこう聞いた。

「日本のサークルクラブからなにか連絡あった?」

数分と経たずに返事が来た。

「いや、ないけどどうかした?」

僕はなんでもないとスタンプで告げてホームボタンを押した。僕はベッドに入り、目を瞑った。ただ怖くて眠れない。帰国させられるような理由が見当たらない。日本のサークルクラブも連絡をよこさない。となればこれはドッキリかなにかだ。必死に自分にそう言い聞かせて寝ようとした。そして眠りに落ちた。

翌日は昼過ぎにロサンゼルスユニオン駅に行って同じ地区に来ている留学生2人と合流し、そのままアムトラックの列車でアメリカ南西部のサークルクラブ地区をまとめたスキャネックスと呼ばれる地域一帯の留学生達と久々に会った。最後にあったのは10月だから実に二ヶ月ぶりとなる。

"元気にしてたか?"

皆がお喋りしている中で僕は話をしながら目だけでウォーレンを探した。しかしいない。明日話そうと言ってたのに、トイレにでも行ったのかと思って話が途切れた時に聞いてみた。

"ねえ誰かウォーレンを知らない?"

その問いにはフランス人留学生の女子が答えてくれた。

"ウォーレンなら今回来ないと思うけど"

一瞬顔をしかめたがすぐに元に戻した。

"ありがと"

"いや、どうかしたの?"

"ちょっとね"

まだ皆には言えなかった。僕は皆も同じドッキリをされているのかとさえ考えた。ただその考えは自分の中ですぐ辞めた。もし全員同じ通告を受けてたらここまで自然に話せるものか。なのに本当に楽しそうに全員が喋ってる。もういい、このドッキリのことを考えていても仕方が無い。今はこの小旅行を楽しまなくては、と思うもののうまく心を切り替えることが出来ない。サンディエゴ駅につき、僕達の班を泊めてくれるサークルクラブ会員の家に行って荷物を置くとその夜は別のサークルクラブ会員の家でギリシャ料理を振舞ってもらい、その後夜のサンディエゴにみんなで出かけた。僕は仲のいい台湾人の女の子ペイシンと二人で歩いた。彼女は日本人高校生の中でも小柄に分類される僕よりかなり背が低い。大きなホテルのロビーに入ると立派なクリスマスツリーが飾ってあった。僕と彼女はその前で自撮りした。くだらない話をしては笑いあっていたが僕はどうしても本心から楽しめず心のどこかに例の件を抱えていた。そしてそれは彼女に見抜かれた。

"ショーゴ、どうしたの?"

楽しんでないことがばれたのか。もういっそ全てを話して楽になりたかった。僕はもうすぐアメリカを去らねばならないことやこれがみんなと会える最後のチャンスだってことも。ただまだ確定ではないという希望もあったしなにより彼女に余計な心配をかけたくなかった。

"ん?どうかしたか?"

微笑んでとぼけた。

"いや、なんか変だよショーゴ。なにかあった?"

僕は多少声を出して笑った。完全に見抜かれてたことが少しおかしかった。

"俺はいつも通り。たださっきのゴムみたいなキャンディーのこと思い出してた。"

ギリシャ料理のあと街に出かける前に渡されたキャンディー、とても甘くてそして食感がゴムかなにかを食べてるみたいだった。ペイシンは美味しいといって食べてたが僕はそれを水で流し込んだのだ。

"あれ、美味しかったじゃない"

"なら次出てきた時は俺の分もお前にあげるよ"

なんとか話題を逸らすことには成功した。そしてペイシンは腕時計を見ると戻ろうと言ってきた。僕も時間を見ようとしてアイフォンを取り出したがロック画面を見てアイフォンを落とした。

"ショーゴ、ケータイ落としたよ?見ちゃおう"

ペイシンが笑ってアイフォンを拾い上げてくれる。俺は急いでペイシンの手から半ば無理矢理それを取り返した。

"どーしたのショーゴ、怒ってるの?"

ペイシンには悪いことをしたと思った。

"あ、うん、その…。ごめん"

とりあえずなにか言おうとしたがうまく言葉が出てこない。ペイシンはそれを聞くと笑って言った。

"もう、見るなんて冗談に決まってるじゃないの!"

ただ単に冗談が通じなかっただけと思ってくれたのか。僕はその勘違いにほっとしたが次の一言がその気持ちを吹き飛ばした。

"なにかあったんでしょう。今2人しかいないし、聞くから。言ってよ"

その一言に甘えれば良かった。ただその時の僕はそうできるほど素直ではなかった。

"何も無いよ。平気だからさ。"

そう言ったがそれで許してくれる彼女じゃなかった。

"平気じゃないでしょ、それともなに、そんなに私が信用できないの?"

ペイシンが詰め寄ってくる。彼女のことは信用してるしなにより仲のいい友達だ。普通のことだったらまず話してる。

"どうしたのさ、ペイシン。君の方こそおかしいだろ"

つい苛立って僕は言い返してしまった。もちろんおかしいのは僕だ。それは自覚している。けどこれはそんな簡単に言えることじゃなかった。

"心配してたのに、なんでそんな事言うの!?"

ペイシンはそう言うと背を向けてしまった。

"ペイシン、待って"

僕は慌てて呼び止めた。

"本当になんでもないんだって"

ペイシンにそう告げた。しかし先ほどロック画面に表示されてたそれはドッキリという最後の希望を潰すものだった。ペイシンは怒ってた顔を引っ込めて笑顔を見せた。

"本当?なら良かった!"

もちろん本心から納得した訳では無いだろうが。

"さぁ、早く行こ!"

集合場所で分宿するためにそれぞれの車にのって別れた。

"おやすみ、ペイシン"

"おやすみ"

軽くハグをして別れた。夜の分宿先はバスク人、チリ人2人、台湾人と僕の5人だった。ポーカーをやろうと誰かが言い出す。寝袋に入りかけてた僕も参加した。テキサスホールデムという世界では一般的なルールで行われる。一応ルールだけは知ってるポーカーだったが全然だった。

"ああーもう!"

調子の悪い時に悪い手札で勝ちようがなかったが一発逆転を狙ってワンペアなのにブラフを張ったがストレートをもってたやつにすんなり制せられた。僕はブラフによるレイズ合戦によってすっからかんとなってしまい下から2番目で抜けた。

"ポーカー勝負の次はチェストーナメントでもしよう。"

先に負けてた台湾人の王が棚からチェスのセットを出しながら提案し、適当に簡単なトーナメント表をつくった。時刻はすでに午前一時を回っていたがそんなことは気にしない。チェス大会は進み2時を回った頃には決勝も終盤だった。

"チェック"

僕は元々将棋が好きだった。チェスでは一戦目勝って二戦目もかなりのところまで追い詰めていた。ナイトで掻き回して追い詰めた相手のキングの逃げ先はルークで塞がれたため限定されているし残った逃げ先に入ってもプロモーションで次の一手でチェック・メイトとなる。予想通りの一手にポーンをプロモーションさせて言った。

"チェック・メイト"

途端に相手は頭をかいた。

"ショーゴ強いなぁ…"

"そうか?というよりもう二時半だよ、寝よう"

そういって片付けをすると僕は寝袋に入った。そこから5分と経たずに部屋の電気が消えた。

さて、サンディエゴに舞台が移りました。再来週の投稿分でロサンゼルスに戻りますがサンディエゴ編で新しく出てくる人物達と主人公の関わりを楽しんでいただけたら幸いです。

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