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第10話

12月9日の朝、僕は目覚めがよかった。今日は最後のサウスハイ、思いっきり楽しんでこようと思っていた。僕が着替えていると足音が部屋の前を通り過ぎた、と思いきや戻ってきてノックも無しに部屋に押し入ってきたのだ。足音の主はもちろんエイミーであった。

"ショーゴ、口を開けなさい"

"え?"

彼女は有無を言わさぬ口調で僕に口を開くように言った。しかたなく口を開くと彼女は体温計を突っ込んだ。僕はそれを咥えながら計測が終わるのを待った。ピピピっと電子音が鳴ると口から強引に体温計をひったくった。

"あら、102°Fね、休みなさい"

部屋に入って体温計を口に突っ込み挙句結果を僕に見せずに一方的に今日休むように言われた。

"いや、僕は元気なんだけど"

そもそも体温を計られるなんて今日が初めてだった。そして僕は本当に元気だった。

"だめよ、熱が出てるんだから休みなさい。"

そもそも自分でもし調子が悪いならそれ位把握はできるが今回は身体のどこにも異常はなかった。

"大人しくしてなさい。私は仕事に行くから。"

そういって彼女はさっさと仕事に行ってしまった。僕は友達にその事を愚痴った。野球部のみんなは今日僕が行けないことを残念がった。

昼過ぎ、エイミーは帰宅するなり僕の部屋に入ってきた。

"ショーゴ!あなた教科書はどこなの?"

"え?"

"学校最後の日だから教科書を返さなくちゃ行けないの!でもあなたは病気だから私が返しに行くわ。だからはやく出しなさい。"

僕はバッグからアルジブラ2の教科書と英語の授業で使っていたレ・ミゼラブルを渡した。

"これだけ?ほかの教科書は?"

"各教室に置いてあるけど"

普通に答えた。

"嘘よ!誰も教科書を教室には置いてないわ!"

ヒステリックタイム突入である。エイミーのヒステリックタイム突入タイミングは相変わらず謎のままだった。

"なら学校にいって確認すればいいじゃないか"

僕の言葉で信用されないならスクールオフィスで確認すればすぐわかることだった。

"とりあえず学校行ってくるから!"

乱暴にドアを閉めて彼女は出ていった。その15分後位にFacebookのメッセンジャーが入っていた。

"学校に教科書がないから139ドル払ったから。その分あなたが私に払いなさい"

おかしい、普通にないと言われたヘルスとU.S.ヒストリーの教科書は各教室に置いてある。僕はリキにラインした。

「リキー、俺の教科書誰か探したり取りに来たかわかる?」

彼も僕と同じヘルスを取っていたし丁度5時間目の時間だったから彼に確認したらすぐわかる。

「いや、誰も来てないけど。」

エイミーは夕刻に帰宅した。

"ショーゴ!!!学校に教科書が無いじゃない!なんで嘘をついたの!"

初っ端からヒステリックモードで現れた。

"僕学校の友達に確認したけど誰も僕の教科書を教室まで取りに行かなかったんだってね。"

彼女は一瞬言葉に詰まったがそれでもすぐ反論した。

"だって誰も教室に教科書を置いてないから普通でしょ!"

"僕が教室にあると言ったのにそれすら確認せずに金を払えって言われてもそれは払えない!"

"ふざけないで!139ドルもこっちは払ったの!早く払いなさい!"

言い合いをしていると彼女の愛犬が部屋に入ってきた。

"ペニー、はやく出ていきなさい!"

ペニーと名付けられる犬も可哀想だと思ったがペニーは大人しく部屋を出ていった。

"エイミー、落ち着いて考えて"

諭すようにいったがこれは意味がなかった。

"僕は教室にあると言った。だとしたら教室や僕のロッカー、まあロッカーは空だけどもそれらを探してからお金を請求しないと、教室も確認せずにお金を請求するのは筋が通らないと思うよ。"

"黙れ!早く金を支払うんだよ!"

ヒステリックモードの彼女には逆らえない。ここまでのやり取りは全て録画してあった。僕はiPhoneのカメラの前で彼女にお金を払おうとした。

"140ドルしかないから1ドル返してね"

といった。細かいのが無かったからそれで出すしか無かったのだ。

"1ドルは私が預かっておくわ!"

そう謎理論を言ったあと彼女は部屋をあとにした。僕は今のやり取りを日本人のグループに送信しといた。しばらくしてその動画を野球部にも送っていいか書かれたので僕はもちろん快諾した。

その夜は本当に絶望の中ですごした。皆と最後に会えなかった悔しさが涙となって目から溢れ出た。ただ、眠りに落ちる前、とある考えが頭に浮かんだ。

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