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第64話 雛vs小春.2

長らく更新が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。

 雛は、『金剛戦姫』を握る手の挙動やこちらの体の揺れ、息遣いのリズム等といった細かな情報を集積、整理して、こちらがどのような動きに動こうとも逃がすつもりは一切ないと言外に告げる瞳を向ける小春の肝の据わった面持ちを見据え、一歩たりとも退く様子のない小春の姿に満足げに頷くと、猛然と前に駆け出した。


「九条流剣術十一の型・≪八重嵐≫やえあらし


 『金剛戦姫』の刀身を八つの風の帯が取り巻き、雛が横薙ぎの一閃を放つと、鋭利な風の刃にその身を変えた八つの風の剣が小春の身を切り刻まんと虚空を駆ける。

 小春は殺到する八つの風刃を前に怯む事なく、二振りの得物を振りかぶる。


「月宮流剣術八の型・≪舞風まいかぜの太刀≫」


 小春は、両刀を疾風迅雷の剣速で縦横無尽に振るい、己に肉薄する風の刃を迎撃する。

 まず、一つ目の風刃の側面に小春の剣が掠めるように走る。

 すると風刃の軌道が突如あらぬ方向に修正され、無関係な竹林を真っ二つにスライスした。

 ニ刃目、三刃目も同様に、小春の剣が風刃の身に僅かに触れるだけで見当違いの方向に飛来していき、小春の肌には一切の裂傷も走る事はない。

 さらに、小春は剣を振るいながらも小走りで雛に向かって疾駆してきており、雛は僅かに目を細める。

 ……随分と動きに無駄がなくなった。

 二年前に出会った彼女は体の節に余計な力が入っていたせいで、本来持っていた脚力の性能を十分に発揮出来ていなかったが、今の彼女からはそんな無駄なものが徹底的に削ぎ落されている。

 どうやら、二年前の彼女のままだと考えたまま相手をすれば、こちらが斬り伏せられることになりそうだ。

 雛は既にこちらの間合いを侵犯した小春に牽制を意味合いを込めて上段からの一閃を放つが、小春は無理に鍔迫り合いに持ち込んだりする事はせず、半身になってそれを回避すると、即座に攻撃に移行する。


「月宮流剣術三の型・≪連花れんか≫」


 雛を自身の剣の間合いに捉えた小春は、上段からの袈裟斬り、中段からの横薙ぎの一閃、下段からの不意の斬り上げ、唐突な突き等、多種多様な斬撃を矢継ぎ早に繰り出し、雛に反撃の隙を与えることなく猛然と攻めたてる。

 雛は苛烈なその剣筋を並外れた反射神経と、これまでに潜り抜けてきた死線で培った経験の中で体に叩き込んだ体裁きを駆使して捌いていくが、慢心せず、雛の身に一撃を当てるためにこちらに攻め込む手を一切緩める気配のない小春の剣は幾度も雛に追いすがってくる。

 二刀という手数の多さもあるが、一撃一撃が洗練されているため攻撃対象に反撃の隙を与えず、敵のスタミナや緊張の糸が切れた時を地道に待ち続けるようなこんな戦法が使用できるのだろう。

 雛はそれだけの力量を身に付けた後輩の成長に確かな喜びを感じると共に、絶対に負けてやらないという子供のような意地が胸の内から沸々と湧き上がってくる感触に身を震わせながら、小春の苛烈な攻めに耐え、反撃の機会を虎視眈々と狙う。


流石さすがですね、先輩。全て受け流すか回避するなんて」


「小春の剣の癖は把握している。いくら剣の腕が上達したといっても、長年の鍛錬で体に染みついた体の動きというものは容易に変わらないものだ」


「私がどう攻めるか、先輩は先読みできるという事ですか?」


「剣を握る手や腕の挙動から次の攻撃を大まかに予測しているだけだ」

 

 小春が死角から繰り出した刺突をずば抜けた危機察知能力で難なく躱した雛は、小春の剣の軌道外を縫うように中段からの薙ぎ払いを仕掛ける。


「っ!? そう簡単にはいきません!」


 小春はすかさず後方に跳躍する事で間一髪雛の斬撃を回避する事に成功するが、視線を雛の方へ戻すと、眩いばかりの雷光を纏った『金剛戦姫』の刀身が目に飛び込んできて、その予想外の光景に一瞬思考が停止する。

 そして、その一瞬の隙が勝敗を決めた。


「九条流剣術十四の型・≪雷虎らいこ≫」


 雛が繰り出した上段からの一閃から燦然とした輝きを放つ雷光が解き放たれ、瞬きをするような一瞬の間に雷の虎の肉体に形状を変化した雷の一撃が小春の視界を埋め尽くした瞬間、小春の意識は暗転した。

最後までお読み頂き、本当にありがとうございます!

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