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第20話 雛vs獣戯のマリエッタ

「はぁああああああああああああああああ!!」


 雛は『金剛戦姫こんごうせんき』の柄を握る力を強めながら、ミノタウロスの懐に果敢に特攻を仕掛けた。

 ミノタウロスは、自身に殺気を放ちながら疾走してくる雛の体を両断をしようと酷薄な笑みを浮かべて大きな咆哮を上げた。そして、身の丈程の長さを誇る戦斧に自慢の膂力を込めると、一気に雛の脳天めがけて振り下ろした。

 しかし雛は、自身の頭蓋を叩き割ろうとする戦斧を冷ややかな視線で一瞥すると、軽やかな動きで瞬時に左横に跳躍して、その破壊の一撃を躱す。

 ミノタウロスの一撃を叩き込まれた地面は轟音を立てて破壊され、地面を舗装していた煉瓦が爆散して周囲の店舗のショーウィンドーを粉々に粉砕した。

 雛は頭上から降り注ぐ瓦礫の豪雨を巧みな身のこなしでかわしながら、戦斧を力強く振り下ろしたことで腕が伸び切り、懐ががら空き状態になったミノタウロスの懐に潜り込み、最初の一太刀を浴びせかけようとしたが、こちろを見下ろすミノタウロスの口内が赤く輝き出したのを視界の端で確認すると、後方に大きく跳躍してミノタウロスの懐から即座に離脱した。そして、雛が飛び退いた瞬間にミノタウロスの口から真っ赤な炎が噴き出され、雛が立っていた地面が凄まじい熱量で溶かされて周囲に焦げ臭い匂いが充満し、雛の鼻腔に不快な匂いが突き刺さった。


「炎のブレスか……それが、お前がこいつに付加した能力という訳か」


「ええ、その通りよ。この子には<レッド・リザード>が持つ、火炎のブレスを放つ能力をエンチャントしてあるの」


 ミノタウロスの背後で悠然と微笑むマリエッタは、戦斧を地面から引き抜き、自分の攻撃を素早く回避した眼前の敵に苛立たしげな視線を突き刺しているミノタウロスに命じた。


「叩き潰しなさい」


 主からの命を受けたミノタウロスは、戦斧を右手に持ち替えて空いた左手に力を込めると、左手全体が鋼色に変化し、鈍い光沢を放つ鋼の剛腕が生み出された。


「腕が鋼に変化したというのか!?」


「鋼の硬度を誇る腕を持つ、<メタル・モンキー>の力よ。そして、<ソニック・タイガー>の凄まじい速度から繰り出される次の攻撃は躱せるかしら?」


 ミノタウロスは凄まじい咆哮を響かせながら雛の元へと激走し、雛はその異常な速度に目を見張るが、瞬く間に接近してきたミノタウロスの一挙手一投足に全神経を集中させる。

 まずミノタウロスの横薙ぎの一閃を身を屈めて難なく回避すると、間髪入れずに振り下ろされてきた鋼の剛拳を『金剛戦姫』で足の裏に溜めこんだ力を瞬間的に爆発させて体を前方に出すことで回避すると共に、雛の細身の体軀がミノタウロスの分厚い筋肉で覆われた胸元目がけて射出される。

 ミノタウロスは、今度こそ雛の体を焼き尽くそうと口を大きく開けて炎を口内に溜めようとするが、



「レディーの前で大口を開けるのは、はしたないぞ」



 雛が真上に突き上げた『金剛戦姫』の切っ先がミノタウロスの下あごから上顎を刺し貫き、ミノタウロスの口は強制的に閉ざされた。

 口全体を走り抜ける激痛にカッチリと閉ざされた歯の間から苦悶の声を漏らすミノタウロスだったが、片手でこちらの口を塞いだ雛が大きく拳を振りかぶる姿を目にして瞠目した。


「吹き飛べ」


 雛の渾身の拳がミノタウロスの胸を直撃し、牛頭の巨漢は背後にいる主を直撃する勢いで吹き飛ばされた。

 雛の『金剛戦姫』はミノタウロスを吹き飛ばした衝撃で、奴の両顎を雛の体側の方向へ両断し、血と脂で汚れていたが、雛は地面に降り立つと同時に一切気を緩ませることなく、前方を確認した。

 マリエッタは自分に激突しそうな勢いで吹き飛ばされてきた従僕をひらりと身をくねらせて見送ると、地面で全身を擦り下ろされながら倒れ伏した従僕を一瞥した。


「あらあら、まさかここまでやるとはねぇ」


 どこか他人事のような声音で嘆息したマリエッタに切っ先を突き付けながら雛は降伏を促す。


「お前の従僕は倒れた。また新しい魔物を召喚して応戦するつもりなら、容赦なく切り捨てるぞ。大人しく降参したらどうだ」


「あらあら、怖い怖い。ご期待に沿えなくて申し訳ないのだけれど、降参する気はないわ。そして……」


 マリエッタが言葉を濁すと共に、彼女の背後で絶命したと思われたミノタウロスがむくりと起き上がった。


「まだ終わってなんかないのよ」


 雛は、若干ふらつきながらも起き上がったミノタウロスの全身に視線を巡らせた。拳を叩き込んだ胸板は大きく陥没はしているが、心臓を破裂させるまでには至っていないようであり、ミノタウロスの双眸は復讐の炎で燃え盛り、血走った視線をこちらに向けてきている。


「鋼以上の硬度を誇る骨格を持つ、<グランド・レックス>の骨の硬度をその子の肋骨に与えていたんだけど、あなたとんでもない馬鹿力ね」


「ふん、お前こそ厄介な能力を与えてくれたものだ。面倒なことこの上ない」


「ふふっ、その面倒な能力はあと一つ残っているわよ。それはここでお披露目させて頂くけれど」


 ミノタウロスがけたたましい雄叫びを上げると、陥没していた胸板が徐々に盛り上がり、瞬く間に元の屈強な胸板に修復された。


「っ!? 再生能力まで!?」


「<ホワイト・スライム>の再生能力も与えておいたのよ。さあ、仕切り直しといきましょうか」


 雛は『金剛戦姫』を構え直しながら、冷静に分析を始める。

 判明したミノタウロスの能力は、火炎のブレス・鋼の拳・並外れた足の速さ・鋼の肋骨・並外れた再生能力の五つ。それぞれの能力は厄介だが、既にマリエッタが『女王の寵愛鞭パーシパエー』によって付与した能力は出尽くしている。つまり、これ以上厄介な能力が登場する恐れはないということだ。

 能力を恐れて防戦一方になるのは愚行だが、無策で飛び込めば剣が敵を切り捨てる前に返り討ちに遭うか、心臓を狙っても鋼の肋骨に阻まれて致命傷は与えられず、再生されてしまう。ならば……。


「行くぞ!!」


 雛は一気に足を前方に踏み出して加速し、それを迎え撃つミノタウロスは大きく息を吸い込んだ後に火炎のブレスは吐き出し、雛の視界は赤一色に染められる。

 雛は大きく跳躍してブレスを回避すると、ミノタウロスの頭上に向けて大きく『金剛戦姫』を振りかぶった。

 それを見たミノタウロスは素早く戦斧を盾にして頭上を守ると、戦斧に弾かれて落下するであろう雛の体に鋼の拳を叩き込むべく身構えた。

 雛は『金剛戦姫』を大きく振りかぶると同時に、刀身に蓄えていた莫大な魔力を一気に放出して告げた。


「九条流剣術五の型・≪絶狼ぜつろう≫!!」



 雛の大上段からの一閃がミノタウロスの戦斧を難なく両断すると共に、ミノタウロスの脳天から股までを一気に真っ二つに切り裂いた。


 最後まで読んで頂き、ありがとうございました!


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