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第12話 アルカディア・ヘヴンの秘密

 京子が、自身が消息不明中の≪時の魔王≫であることを明かした後、彼女はさらに自身の過去と、魔王や女神という存在は一体何者であるのかを時間をかけて語り、柊はノートに話の要点をまとめた。


・十四人の魔王の正体は、異世界からこの『アルカディア・ヘヴン』へ召喚された異世界の少年少女たちのことであり、『聖杯』と呼ばれる神具が召喚を行い、聖杯に収められた『大聖霊』と呼ばれる、十四の魔法属性をそれぞれ有する最高位精霊が少年少女たちの魂と融合し、彼らは驚異的な力を手に入れると同時に、大聖霊と契約した副作用で不老不死の肉体となってしまう。

・世界樹は全異世界で死した魂が集積するタンクであり、それを管理する女神は、世界樹が集積した魂から穢れを浄化し、綺麗な魂に変換して、様々な異世界へ新たな命として転生させる役割を担っている。

・しかし、約五百年程の時間が経つと、女神の中に浄化し切れなかったごく僅かな穢れが溜まり出し、女神はゆっくりと自我を失い始め、集積される魂を喰らい始めるようになる。そしてさらに時が経つと、さらに魂を喰らうために女神は世界中に穢れを蔓延させて人々の心を穢していき、戦乱に塗れた殺し合いの世界を作り出し、その争いの中で多くの死者を生み出して、その魂たちを喰らって飢えを満たすようになる。

・聖杯は穢れに囚われた女神を殺すための人間を召喚するために創造され、京子たちは穢れで世界を満たそうとしていたアディス帝国と戦いながら各地を回って穢れを払い、後に帝国を滅ぼして、代わりに世界各地の統治を行いながら世界中の穢れ払いを完了させ、穢れをまき散らしていた世界樹の根が存在していた場所に魔王殿を建てて蓋をした。

・京子たちは大方の世界中の穢れを払うと、統治していた国々を信頼の出来る者たちに任せてインフィニティ―に集結して世界樹に侵攻し、当時の女神を滅ぼすことに成功する。しかし、女神消滅後に新たな女神が顕現し、彼女の手により、封印の魔法の回避に成功した≪闇の魔王≫と≪時の魔王≫である京子以外の魔王は特殊な結晶体の中に封印され、彼らに宿っていた大聖霊たちも奪われてしまう。≪闇の魔王≫は封印された魔王たちと残された眷属たちを回収して何とか世界樹を脱出する。京子は魂だけを吉野の虹桜山の地下にあった秘密の隠れ家に転移させることで脱出するも、肉体を失ってしまい、インフィニティ―に帰還することが出来なくなってしまった。京子は、自身に宿っていた≪時の大聖霊≫の力の一部を隠れ家に隠していた聖杯のレプリカに注ぎ込み、たった一人だけ異世界から召喚する力を与え、そのまま眠りについた。

・柊は京子が用意した聖杯のレプリカの力で『アルカディア・ヘヴン』に召喚された。


(とまあ、大まかな概要としてはこんな感じだね。何か質問はある?)


「……」


 四人は京子の声に対してどう反応すれば良いのか分からなかった。

 柊にとっては、彼女が自分と同じ世界から召喚された女の子で、こんなとんでもない使命を背負いながら誰も自分を知らない異世界で生きてきたのかと思うと言葉が出なかったし、アヤカたちにとっては、自分たちの常識が音を立てて崩されたも同然だろう。


「……異世界からの召喚者が魔王たちの正体で、女神は世界を穢れで満たして死人を増やして喰らい尽くす暴食家とはな。女神を信仰する連中に聞かれたら袋叩きにされそうな話だな」


 雛はそう言って頭を押さえると、机に置かれていた紅茶をグイッと一気に飲み干した。


(動揺してるかな、やっぱり?)


「まあな、京子殿。だが伝説の魔王の一人が目の前にいるのかと思うと恐ろしいというよりも、不思議な感覚だ。魔王の伝説の真実が、まさかこのようなものだとはな。歴史の教科書は大きく改訂する必要がありそうだ」


 雛は微笑すると、アヤカたちの方にも視線を向けた。アヤカとサーラは、京子の話を聞いて大きく目を見開いていたが、互いに目配せすると、サーラがおずおずと挙手した。


「あの、京子様。いくつか質問をさせて頂いてよろしいでしょうか?」


(いいよ、どうぞ)


「では、まず新たな女神、つまり当代の女神様に奪われてしまった大聖霊様たちは世界樹に今もいらっしゃるのでしょうか?」


(いや、大聖霊たちは世界樹にはもういないと思う。大聖霊は女神を滅ぼすことが出来る唯一の存在であり、そこに存在するだけで女神の肉体を蝕んでいく、女神にとったら病原菌みたいな存在だから世界樹からは追放して、この世界のどこかに封印されているはず)


「そうですか、分かりました。あと、もう一つなのですが、当代の女神様はその……穢れてしまっているのでしょうか? 京子様たちが世界樹へ侵攻してから既に五百年程経っているのですが……」


(少なくとも、穢れ始めてはきていると思う。でも、今の段階ならまだ焦らなくても大丈夫。女神はまだ異世界から流れ込んでくる魂の捕食に夢中になっている頃だから、この『アルカディア・ヘヴン』自体にまだ干渉は始めない筈。でも、もっと時間が経てば、女神は世界樹の根を伸ばしてそこから穢れを放出して、世界中の人たちの心を穢して不安定にして、戦や犯罪が平然と行われる地獄に世界を変革して、女神は大量の死者の魂を喰いまくるようになるよ。まだ数年は大丈夫だと思うけど)


 京子の答えに納得したサーラは柊の中に京子に対して頭を下げると、空になってしまった雛のカップに紅茶を注ぐために立ち上がった。


 サーラに礼を言う雛の声を聞きながら、今度はアヤカが質問した。


「大聖霊が封印されている場所とかに心当たりは?」


(多分、魔境みたいな、簡単に人が立ち入ることが出来ない場所に封印されていると思う。私たちの魔王殿が在った場所も特殊な場所だったと思うんだけど、肝心の魔王殿の場所が何故か記憶から抜け落ちているみたい。だから探すにしても、私が場所を教えることは無理そう)


 アヤカの質問が終わったところで、最後に柊が質問した。


「京子、君は前に行きたい場所と叶えたい願いがあるって言ってたよね。それは僕に大聖霊を探し出して貰ってから、世界樹にいる女神を殺しに行くってことでいいのかな?」


(……うん、そうだよ。このまま女神を放っておけば『アルカディア・ヘヴン』はいずれ滅ぶ。ここを滅ぼした後は、女神は他の異世界へ向かって、そこでも魂を喰らい尽くそうとするかもしれない。でも、そうさせる訳にはいかない。無理な頼みは承知だけど、お願いしたいんだ。柊、私と一緒に大聖霊を探して、女神を滅ぼしてほしい)


「うん、いいよ」


(……えっ?)


 京子は気の抜けた声を出して、呆然としてしまった。


「あっ、柊。私もそれに参加したいんだけどいいかな?」


「それでは、私も」


「中々面白そうだ。私も混ぜてくれ」


 呆然とする京子を置いてけぼりにして柊たちが盛り上がる中、狼狽した京子の声が響き出した。


(ちょ、ちょっと待ってよ! 何でそんな簡単にOKしてくれるのさ! 途中で死んじゃうかもしれないんだよ! 沢山危険な目にも遭うだろうし、しなくてもいい苦労も沢山しちゃうんだよ! なのにどうして……!?)


 しかしそんな柊の声に臆する者は誰一人としてここにはいなかった。

 最初に口を開いたのは雛だった。


「京子殿、私は伊達や酔狂であなたの願いに付き合う訳ではないのだ。あなたが、あなたたちがいなければこの世界は既に終わっていた。そんな立派な魔王様と一緒に冒険が、世界を救うための旅が出来るなんて、最高に燃えるではないか。それに……」


 雛はそこで今まで見たこともない程冷徹な目をして、凄絶な笑みを浮かべた。


「私にはどうしてもこの手で殺したい奴がいる。柊殿たちに付いていけば、そいつに会えるかもしれないしな」


 柊たちは、雛のその表情と言葉に背筋が凍るような思いがしたが、雛はスッと元の落ち着きのある笑みを浮かべた。


「まあ、これが私が京子殿の願いに付き合う理由だ。柊殿と京子殿さえ良ければ、私は付いていきたいな」


 雛がそう言って可愛らしい笑みを浮かべると、今度はサーラが話し出した。


「私は京子様と柊様に大切な主を救って頂きました。あなた様たちに付いていく理由はそれで十分でございます。ですが……」


 サーラは言葉を濁したが、意を決して言葉を紡いだ。


「私には友人がおりました。ですが、彼女は私の前から姿を消してしまったのです。雛様の理由とは異なりますが、私はその大切な友人を柊様たちの旅の中で捜してみたいのです。それが私の理由です」


 そして、次にアヤカがサーラを頭を優しく撫でてから言った。


「私は京子がいなかったら、もう死んでいた。あなたに命を救って貰った。私はその恩を返したい。そして雛とサーラと同じで、私も捜したい人がいるの。その人を捜すために冒険者になったんだけど、まだ手がかり一つも見つけられていない。だから、あなたたちとの旅でその人を捜したいの。それが私の理由」


 毅然とした態度でそう言い切ったアヤカの顔は清々しく、後悔の念は一切なかった。

 そして、最後に柊が自分の中にいる相棒に告げた。


「僕は特にアヤカたちみたいな理由はないんだ。会いたい人も行きたい場所もない。でもね、京子。僕は君の事情を知った今でも、君と一緒にいろんな場所へ行ったり、馬鹿みたいな話をしながら旅がしたいって思ってる。どんなに危険な道でも君と一緒と歩くなら面白そうだ」


(……皆本当にそれでいいの?)


 彼女の声に四人は一斉に笑顔で頷き、それに対して京子は、何度も「ありがとう」と感謝の言葉を口にしていた。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

 プロローグはこれにて終了です。

 次回以降は、柊たちが世界各地に封印されている大聖霊たちを捜して冒険をしたり、冒険者として様々な依頼に挑戦していく予定です。

 

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