表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
淡緑の花に願いを  作者: こむらさき
7/8

祈りの花

アンの体から、急速に熱が消えていく。

彼女の口付で花は咲いた。

あとは、私の本当に愛する人にこの花を摘んでもらえばいい。

そうすれば呪いは解ける。

愛される必要がないんだ。簡単なことのはずだ。


胸が引き裂かれたように痛い。

涙が止まらない。

彼女の名前を何度も呼ぶが、彼女は起きなかった。

叫びすぎて喉がヒリヒリする。

異教の神でもいい、悪魔でもいい。

誰か彼女を助けてくれ。

そう願った。

もう動かない彼女を抱きしめながら私は泣きバンシーのように声をあげて泣き続ける。



「私は…私は…呪いなんて解けなくていい…。

この醜い姿で生き続けてもかまわないから…

アンと、もっと一緒の時を過ごしたい…

愛しているんだ…この花を摘むのは…アンじゃなきゃダメなんだ…」


そう叫んだ瞬間、目の前がまばゆく光った。


アンの体は消え失せ、いつの間にか薄緑色の髪の毛の少女が佇んでいた。

それはどことなく、出会ったころのアンにとてもよく似ていた。



「こんにちは、素敵な植木鉢頭さん」


アンと初めて出会ったときに、彼女に言われた台詞。

目の前のアンに似た少女は微笑んでいる。

これは幻だろうか。


「私と…呪われたままのこの醜い姿の私とこれからも一緒にいてくれるのか?」


気が付くと私はそう言っていた。

彼女は私を抱きしめると、いつかしたみたいにこちらを見上げながらいたずらっぽく微笑んだ。


「どうしてそんなことを聞くの?

あなたのその姿がとても素敵だったから私はあなたを好きになったのよ」


抱きしめられた感触で、やっとこれは幻なんかじゃないと気が付く。

驚く私を見ながらアンは、私の頭に手を伸ばす。

伸ばした手を元に戻したアンは、手に持った彼女の髪色と同じ花弁の小さなかわいらしい花を見せてくれた。



「あなたに咲いているお花、私の名前と同じだわ、アングレカム…本当に御伽噺みたいな結末ね」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ