第二話 どうやら閉じ込められたようなので
俺はどうなったんだ?ここは一体?
-……タは………ぐ……める-
…誰かの声がする。
-だ…ど…丈夫………は……じゃな…から安心……-
たぶん初めて聞く声…だけど懐かしいような気がする。
-だか…自分の……る道………なさい-
あんたは誰なんだ、俺に何を伝えたいんだ?
-いつか…え…その時……-
『いつか』『その時』?
-元気でね孝介-
はっきりと声が聞こえたと思ったのに何かが離れていくような気がする。
頼む、行かないでくれ…一人になりたくない…
「待ってくれ!」
「おぉう!?脅かすなよ!」
「あれ、悠斗?」
「おう、友達の悠斗さんだ。うなされてたから心配してたけど、大丈夫そうだな」
「俺うなされてたのか…ところでここは?」
「さぁな俺にもわかんねぇ。一応全員いるけど、目を覚ましてるのは何人かだしそいつらも混乱しちまってるよ。先生もどうにか落ち着かせようとしてんだけどな」
「そっか、お前が冷静で助かったよ」
「まぁ俺も起きたときは騒いだけどよ、先生に軽く殴られちまったぜ」
へへへ、と笑う悠斗を見て俺も少し安心できた。
一度深呼吸をしてから辺りを見回すと、少し泣いている者もいるがあまり騒いでいないようだ。大人が一人いるだけでも皆安心できるのだろう。
先生は一人ずつ起こしながら体に異常がないか確認している。俺も聞かれたが特に違和感はないので問題ないと伝えた。
そうして全員が目を覚ましたところで、先生の元に集まり現状を確認することになった。
「とりあえず全員問題ないことに安心したが、気を付けろ。ここがどこで、俺たちがどうしてここにいるのかまだわからない。あまり不安にさせたくないが、全員危機感をしっかり持てよ」
先生の言葉にまた泣きそうになりながらも、全員が返事をした。
「よし、それでは確認していく。まず携帯を持っている者は全員出せ。先ほど確認したんだが、電波が届いてるやつはいるか?」
ズボンの右ポケットに入っている携帯を取り出し画面を確認するが、電波は届いていない。悠斗のも確認したが同じく届いていなかった。
時間を確認すると翌日の昼の11時過ぎだった。
「電波が届いていないってことは何かしらの施設、もしくはどこか山にでも連れて来られた可能性があるな半日ほどでこの人数となるとおそらく海外の可能性は低いな」
「つまり帰れるってことですか!?」
「いや、あくまでも可能性の話だからな、断言はできない。すまないな宇都宮」
「あ、いえ…大丈夫です」
先ほどまで泣いていた宇都宮梨々香が嬉しそうに尋ねたが、先生の答えは期待していたものとは違っていた。
落ち込む宇都宮を友人の宮前結菜が慰めている。
「次にここがどこかだが、俺の後ろに金属製の扉があるが鍵がかかっているのかビクともしなかった。ただ、扉の下には隙間があったので覗いてみたが、石造りの通路と壁が見えただけで人の影などはなかった」
「ということは見張りが必要ない場所、もしくは見張れない場所ってことですか?」
「そうだな、後は少し離れたところから見張られてるのかもしれない。しかし、この部屋に監視カメラなどがないのは気になるな」
確かに天井を見てもそれらしきものは無い。というかこの部屋には明かりと扉以外何もないようだ。
「それと窓もないので地下の可能性も出てくるな。単に光を入れないだけかもしれないが」
その後も話し合ったが結局わかったことは、電波が届かない場所に監禁され、唯一の脱出路であろう扉は開けられない。食料もないのでどれだけもつかは不明。
中々に絶望的な状況であった。
「全員今は体力を温存することを考えろ。俺たちを閉じ込めた犯人が飯をくれるとは限らないからな」
その言葉を最後に先生は座って黙ってしまった。皆厳しい現状を再認識させられ、静かになってしまった。
いつもは騒がしいクラスメイトが授業以外で全員静かになるなんて夢みたいだ。
「どうしたんだよ悠斗、いつもみたいにペラペラ喋んないのか?」
「先生にあんなこと言われて騒ぐほど俺も馬鹿じゃねぇっての」
「そうか、お前も賢くなってたんだな」
「おう、お前にどれだけ馬鹿だと思われてたのか気になるぞ」
「そこは察してくれ。にしても、こんなに静かなんてうちのクラスらしくないよな」
「そうだなー、いつも騒がしくて特進クラスから苦情来るくらいだもんな」
「あぁ、あのメガネ君な。毎度毎度よく来るよな、俺たちが悪いかもしれないけどさ」
「なになに?何の話してんのよ?」
「お、冴島か。特進クラスのメガネ君いるだろ?苦情言いに来る」
「あー、アイツね。アイツならさぁこの前B組の子に聞いたんだけど…」
気付けば先生の言葉も忘れて全員が話に夢中になっていた。と言うかその先生すらも話に交じっていた。こんなんだからこのクラスは苦情が来るんだよ。
だが、そんなことも気にせずそれぞれが思い思いの話をしていると、突然扉に近かった奴らが黙った。それにつられるように徐々に話し声が消えていき、代わりに複数の足音が聞こえてくる。
念のため扉から距離を取り運動部の男子と先生が前に出て、女子は一番後ろに下がらせた。
とうとう扉の前に到着したのか、足音が消えた。そしてガチャリと鍵を開けるような音が響くと、ゆっくりと扉が開き、その先にはどこぞの法王みたいな爺さんとその部下らしき人たちが立っていた。