平林
二岡渡は一条優香とともに倉間中央公園のホームレスの巣窟を散策した。優香は当初、別々に探したほうが良いのではないかと提案してきたが、「ここ周辺の森林地域は結構、道が入り組んでいるので迷子になってしまうかもしれません。そうなったら平林さん達を捜索している場合ではなくなってしまうでしょう」と、二岡が提言をしたら苦笑を浮かべながら「ああ、私も昨日、帰り道で迷子になりかけました。それじゃあ、二人の方が良いみたいですね」と言ってきた。
と、いうわけで優香と一緒に三好が言っていた水野の知人達(平林、氷川、火野、菱川)と、もうこの公園にはいないだろうが一応、水野本人のダンボハウスを探したのだが、これが中々発見できない。しかも不運(?)なことにときどき、水沢やら氷室やら火村といった、一瞬希望をもたらせるような名前の表札を見つけては、すぐにその期待に裏切られるというパターンがいくつか続いた。
こういったぬか喜び的なことが続くと、何でそんな名前を偽名に選んだんだと、筋違いとはいえ苦情を告げたくなる。が、これまた不幸なことに全員ともダンボハウスには不在だったので文句の一つも言えないというオチつきだった。
そんなこんなで捜索を始めて十分が経過した辺り。ようやくお目当ての一つのダンボハウスを探し当てることができた。場所はちょうど二岡の掘っ建て小屋から見て東側に位置するところだろうか。正四角形の、どちらかというと小さめなダンボハウスが大木の下に設置されていた。間口の左横に接着剤らしきもので貼られている、ボロボロの木札がある。平林。そう彫られていた。優香は『ふー』と一息ついた後に「やっと発見できましたね、でも……」
優香が次に何の台詞を言うのか大体、予想がつく。とっさに二岡は口を動かした。
「居ないですね、平林さん」
優香はうつむき加減にうなずいた。そう、あいにくなことに平林は外出中のようだった。誰もいないダンボールの寄せ集めアートがポツンと存在しているだけだった。しばらく待ってみようかと思ったがダンボハウスの中にある、不自然に積まれた、新聞や雑誌が些か気になった。それはまるで何かを覆い隠すかのように乱雑に配置されていた。結構な高さを誇っている。何となく興味が湧き立ち、靴を脱いで、ダンボハウスに足を踏み入れる。すると優香が「勝手に入って良いんですかね?」と尋ねてきたが「まあ、不法進入罪にはならないと思いますよ」と軽い口振りで返した。
あぐらをかいて座り込み、不思議とドキドキしながら、それらを一つ一つ手に取り、手近に置いた。新聞の日付や雑誌の月刊号を見る限り、どれも古い媒体のものだった。おそらく暇つぶし目的で、ゴミ収集置き場から持ってきたものであろう。表紙や裏面に、子供の落書きと思われる絵が多数確認できた。
優香の視線を感じながら全ての雑誌・新聞を取り除くとやはりなにかを隠していたようですでに開封されてある包装袋が発見できた。透明のビニール製なので中身が透けて見える。食べかけのツナサンドだ。多分コンビニかどこかで購入したものと思われる。しかしなぜこんなものを隠し立てる必要が……ああ、なるほど。
「ツナですか、私はベーコンのほうが好きなんですけどーー平林さんとは嗜好が合わないみたいですねぇ」
優香が後ろから、吞気な声音で言ってくる。どうリアクションしていいかわからない。とりあえず自分の好みを告げてみることにした。
「僕はタマゴが好きですけど……記者さんはどうしてベーコンがお好みで?」
「ええ?なんでと言われましても……うーん、強いてあげるならガッツリしてて食べごたえがあるからですかね」
「もしかして記者さんって、こってりしたものが好きなんですか?」
二岡は包装袋を、元の場所に置き、優香の方に顔を向けた。
「そうですね、どちらかというと脂っこい食品が好きかもしれません。ああ、だ
から余計にお金に余裕がなくなるのか私は……健康にも悪いですし、ちゃんと野菜も摂らないといけませんよね……」
優香が頭を抱えながら、うなだれだした。身体の細さとは裏腹に高カロリーものが好みとは……よほど、基礎代謝が良いのだろうか。そんなことを思っていると、優香が顔を前に向けて聞いてきた。
「あの、ここには平林さんはいないみたいですし、別の方のダンボールハウスを探した方が良いんじゃないでしょうか?」
「いや、大丈夫ですよ。多分、平林さんはトイレに行っているだけだと思いますから」
二岡の発言に優香は「なんでわかるんですか?」と、たんたんとした口調で尋ね返してきた。昨日と違ってあまりオーバーな反応はしなくなっていた。なんだか拍子抜けに近い感覚に襲われたが気にせず話を進める。
「ええとですね、まずこのサンドイッチです。明らかに故意に雑誌や新聞の下に埋もれてましたよね。どうしてだと思いますか?」
「さぁ?食べ物をそんな所にやったことがないので……」
まあ、そうだろう。二岡は言った。
「じゃあ、質問の仕方を変えます。パンなどを食しているときにトイレに行きたくなったらどうしますか」
優香がきょとんとした目つきで答える。
「そりゃ……途中で食事を中断してそのままお手洗いに向かいますけど」
「その食べかけのパンはどうしますか?」
「え、どうするって仕方ないからその場に置いていくしか……ん?ええとつまり二岡さんがおっしゃりたいのは……」
二岡は小さく顔をたてにやり、言った。
「多分、平林さんはサンドイッチを食べてる最中か、何かに、お腹の調子が悪くなったんだと思います。だから食べかけのまま、置きっぱなしになっているんですよ」
「うーん……」
優香はなんとも、得心がいかない表情を浮かべた。
「なんだか、かなり二岡さんの想像が入ってませんか?ただ単にお腹が一杯になったから、残しておいているだけかもしれませんよ」
「仮に満腹状態だったとしても、どこかへ出かけるんなら、大体、このサンドイッチを一緒に持って行くはずですよ」
「ーーなんで、そんな面倒なことを?手ぶらの方が楽だと思いますけど。って言うより、二岡さんの話とは裏腹に、平林さんはサンドイッチを持って行ってないじゃないですか」
優香は二岡の手元にある包装袋に目をやりながら口を尖らせた。二岡は両手の指を組み合わせた。
「ですから、大体って言ってるじゃないですか。流石にトイレにまで食べ物を持って行くのは抵抗感があったんでしょう。ここの公園のトイレはあんまり綺麗じゃありませんし。だから平林さんは、サンドイッチをこの場に置いていこうとしたんだと僕は考えています。で、そのときに不安になったんだと思いますよ。もしかしたら、誰かにこのタマゴサンドを盗まれるんじゃないかって。その証拠に、傍からは見つからないように雑誌や新聞を積み上げてサンドイッチを隠していましたから」
「う、うーん……」
優香はまだ、得心がいかないようすだった。両腕を深く組み、考え込んでいる。
「やっぱり、なんかピンとこないっていうか……サンドイッチを隠していたって部分までは、まだ納得がいくんですよ、不自然すぎるぐらいに雑誌などが積まれてありましたから。でも、その理由が盗まれる怖れがあるからっていうのは……パン一つに用心になり過ぎな気がするんですけど」
優香のセリフを聞いた刹那ーー二岡は全てを悟った。ああ、そうか。この人はホームレスじゃないから……
「ーー記者さん、ホームレスにとっては、例えパン一つでも、かけがえのない大切な食材なんですよ」
その一言で、優香はおおよそのことを察したらしい。面目なさそうな顔をしながら軽く頭を下げてきた。
「……ごめんなさい、なんだか、変に突っかかってしまいまして」
「いえ、気にしないでくださいーー」
そうなのである。いくら、最近、ホームレスでも探せばバイトが出来る情勢だからといって、決してお金などに余裕があるというわけではないのだ。日払いの給料といってもたかがしれているし、ほとんど食費代に使い果たしてしまう。食事の他にも一応、衛生面にも気を使わないといけないので毎日、夜にはシャワー付きのネットカフェに、服が汚れていたりボロボロになっていたりした場合にはコインランドにおもむく必要が出てくる。そのため、たまに行く先々でこの公園のホームレスの人達と出会ってしまい気まずい雰囲気になることがあるのだが。もあれ、そうなってくると働いているとはいえ、お金なんかはほとんど溜まらない。溜まるはずもない。
彼女もあまり懐具合がよくない様子だったが、それでも、ホームレスに比べればだいぶマシであろう。服もオシャレなものだし、軽目とは言え、化粧もしているのだから。
無論、中には色々、画策してそこそこの稼ぎを見出している者もいる。だが、そんな人物は極わずかだ。ほとんどいないのと同じである。平林がそのわずかな人である可能性はかなり低いと見ていいだろう。
二岡の場合、いくばくか貯金が残っているからまだマシだが、平林の表札はかなり古めかしいものになっている。つまりそれだけここでの生活が長いと言うことだ。仮に当初は貯金があったとしても今はもう底を尽きかけているのでは……
そんな者にとって、ツナサンドはどのように映るだろう。おそらく、どんな高級料理品よりも価値のある食べ物に見えているのではないだろうか。二岡はそう思っていた。
二岡は、雑誌・新聞をなるべく、所定の位置に戻すように意識しながら積み上げていった。平林が帰ってくる前に、元の状態に直しておかないと、僕らが盗人だと勘違いされてしまうからだ。下に埋もれてあるサンドイッチをつぶさないように、丁寧に乗せていく。
二分ほどで作業を終えて、一息つきながら、ダンボハウスから出ると優香が言ってきた。
「お疲れ様です。私も出来れば、手伝いたかったんですけど、最初の配置を覚えていないものでしたから……」
二岡は堆く積み上げられた雑誌・新聞を指差しながら言った。
「ああ、別に大丈夫ですよ。元々、これを崩したのは僕なんですから元通りにするのも僕が……」
「あんたら、何か用もあるのか?」
背後から、急に聞き覚えのない声を耳にして、つい、ビクついてしまい二岡はいたたまれない気持ちになった。優香とほぼ、同時に振り返ってみると、シワだらけの顔の老人が仁王立ちしていた。着ている服はかなり使い古している感じが出ておりボロボロだった。愛用していると言えば聞こえは良いが実際は新品の服を購入する余裕がないのであろう。
「ええと……」
優香が答えあぐねていると老人は白髪混じりの短髪を掻きむしりながら言った。
「俺のハウスになんか用事でもあるのかって聞いているんだよ」
「俺の……ってことはもしかして、あなたが平林さんですか、さっきまで、お手洗いに行ってた?」
優香が声を張って質問する。老人は怪しむような眼差しで二岡と優香をにらみつけてきた。
「確かに今、トイレからの帰りだが……」
「やっぱりそうでしたか、良かったぁ。二岡さんの予想通りでしたね」
二岡は心の奥で、おおい……記者さん、それ以上、喋ったらややこしいことになりますよ……と、呆れ気味につぶやいていた。
「なんだ、俺がトイレに、行ってたのを予想していたってか?なにを根拠に?」
「えーと……」
ここにきてようやく自分の失言が理解出来たらしい。優香は難しい顔を浮かべている。まさか、勝手にダンボハウスに進入してサンドイッチを隠しているのを見つけたから、とは言えなかった。
「勘です、勘。こう見えて僕、結構、勘が鋭いんですよ。だからなんとなくトイレにいってたんじゃないかなぁって思ったんです」
自分でも苦しいとわかっている言いわけを二岡は口にした。が、意外にも平林はそれで納得してくれたようで顔をほころばせた。
「ほぉ……まあ確かにいるからな。妙に勘がいいやつってのはーー例えば俺の学生時代の後輩とか、スーパーの三軒隣に住んでいた加藤さんとか……」
平林はそんな風にぶつぶつと独り言を言っている。なんだかよくわからないが、とりあえず、二岡は顔も知らぬ加藤さんと後輩に内心、感謝することにした。助かりましたよ、お二人さん。
「で、あんたらは何者なんだ?」
平林がまたもや、にらみつけてきた。
「ええと、僕は二岡渡と言いまして、ここのホームレスです。で、こっちが一条優香さん。フリーライターの方です」
二岡が軽く自己紹介と優香の説明をすると、平林は即刻に二岡の腕をつかみ、そのまま、引きずるかのような形で、この場から遠ざかっていこうとした。しかし、二岡は特に抵抗をしなかった。平林の思惑は大体、わかっているからだ。ダンボハウスから少し離れた場所で平林は立ち止まった。
「白いカラス」
何の前置きもなしにいきなり、合言葉を口にしてきた。少し虚をつかれた気分になったが二岡も合言葉を言い返した。
「黒い亀」
その言葉を言った途端、平林の表情が驚きのものになっていった。
「へー、まさか、あいつ以外にも、こんな若い子がいたとはね。驚愕だよ」
どうやら二岡がホームレスだということを信じてもらえたようだ。たまにだが
この符丁システムにたいして億劫に感じることがある。いちいち、初めて会う人物にこのやりとりをしなければならないのだから。
「ええと、じゃあ、もう何度も聞いてるけど、俺に何か用事でもあるのかな?」
平林は白髪の後頭部をいじりながら問うた。
「すいません、それより先に一旦、記者さんの所に戻っていいですか?」
二岡はダンボハウスのある方角に目をやりながら尋ねた。
「ん?ああ、そうだね、急にキミを連れてここへ来てしまったんだから、きっと、どこへ行ったんだろうと心配していることだろう」
二岡はその言葉を心の中で否定していた。いや、それはないだろう。優香は符丁システムのことを知っているのだから平林が二岡を引っ張っていった事由は予想がつくはずだ。
ところが小走りで優香のもとに戻ってみると彼女はそわそわしたような感じで待機していた。
「ああ、お二人ともどちらに行かれてたんですか」
困惑しきったような表情で優香は二岡と平林を見つめてきた。どう見ても合言葉を言うために二人きりなった、とは考えていないような顔だった。想定外。大体の予測はつくと思ったんだけどなぁ……。
「いや、ちょっと、二人だけで話したいことがあってね、それでつい、彼を強引に連れ出してしまったんだよ」
平林の説明を聞き、優香はようやく、二岡を連れて行った理由を理解出来たみたいで、二岡に耳打ちしてきた。
「もしかして例の合言葉ですか?」
「はい、そうです」
二岡な短めなセリフで答えた。続けて、「今度から僕が、ホームレス達にどこかに連れて行かれたら合言葉の件だなと思ってください」と一言、つけ加えた。優香は何も言わず顔をたてに振る。
「何を二人して秘密の会話をしてるんだ?」
平林が業を煮やした様子で聞いてきた。二岡は謝辞を述べた。
「ああ、ごめんなさい、こっちの話です。それより平林さん、少しお尋ねしたいことがあるんですけど」
「何だ?」
「ここの公園のホームレス達の中で水野さんという方をご存知ですよね?」
「ん、ああ、あの小僧のことか」
「小僧?水野さんはお若い方なんですか?」
優香が首を軽くななめにやる。
「ああ、正確な年齢は知らないが見た目は二十代って感じだったぜ」
平林の説明を聞き二岡は水野にたいして妙な親近感が湧いた。自分と同年代の人物がこの地帯に住まわれているとは。優香が問いかけた。
「へぇ、そんなに若い人と知人だったんですか、平林さんは」
「ん?まぁ知人ってよりもーーどっちかって言うと孫みたいな感じかな?……って、何で俺と小僧の関係について知っているんだ、小僧の知り合いか?」
「ええと、話せば長くなるかも何ですけど」
二岡はそう言って三好と水野についての説明をおこなった。三分ほどして話を終えると平林が渋面をつくった。
「あの小僧が人様のもの盗むかねぇ」
「んー、平林さんは水野さんのことを結構、高く評価されているんですか?」
優香が再び問いかけた。
「別にそう言うわけじゃないが……でもまぁ悪辣ことをするような奴じゃないと思うんだよなぁ。最初会ったときは、変なガキだなってイメージだったんだけど、長い間、一緒にいてみるとそんなに悪い奴でもないのかなってイメージに変わったし。まあ、俺の眼鏡違いなのかもしれないが」
平林が慧眼の持ち主かどうかはわからないが、少なくとも彼は水野にたいして嫌悪感を持ってはいないようだった。よほど平林の演技が上手いのか、それともそんな人格を変えてしまうほどお金の力がすさまじいのか。どちらにしても質問することはもう残り少ない。
「それじゃあ、水野さんのダンボハウスの場所を教えてもらえませんか?」
水野はすでにどこかへ拠点を移している可能性が高い。それはわかっている。だが念のため水野の住処に行ってみれば何か手がかりがつかめるかもしれない。例え、ダンボハウスがなくなっている跡地だとしても。
「それが、わかんねぇんだよなぁ。いつもはあの小僧の方からこのダンボールハウスに来訪してきたから。俺の方から小僧の住処に行ったことは一度もないはずだ」
「ーーさいですか」
当てが外れた。そう思わざるを得ない。しかしそれを顔に出すのは何となく、失礼な気がして表情筋を強張らせた。優香がゆっくりとした動きで平林に顔を向けた。
「平林さんと水野さんはどういった経緯で知り合われたんですか?」
ーーそれは今、水野の行方と何か関係があること何だろうか。二岡は不可思議に思いながら優香の目をチラリと見た。
「どういった経緯って言われてもなぁ……たまたま、俺が
「へぇ、そうだったんですか」
優香はえらく感服したような様子で目を輝かせている。
「記者さん、今の問いはどういった意図があって尋ねられたんですか」
「え?意図って言われましても……単に興味本意で聞いてみただけなんですけど」
二岡は自分の予想が的中したことを悔しがった。こんなときの考えは当たらなくていいんだよ……
「はぁ、そうですか。じゃあついでに僕も興味本意で平林さんにご質問してもいいですか?」
「別に俺はなにを問われても一向に構わんが」
平林が超然と答える。二岡は心臓の音が速まるのを感じながら小首をかしげた。
「そこの雑誌とか新聞はどこのゴミ置き場から持ってこられたんですか?」
平林が何でそんなことを聞くんだと言った目つきをしている。二岡はここ赤川区の隣にある『青川区』と回答することを密かに期待した。数秒後、平林が返答した。
「青川区の高層マンションだよ。ほら近くにでっかい美術館があるところの。あそこが一番、近場の中では大量の古雑誌なんかを入手出来るからな」
その言葉を耳にした瞬間、二岡は嬉々とした感情が湧いてきたことを実感した。
「そうですか、聞きたいことは以上です。記者さんも、もう、質問したいことはないですよね?」
二岡は優香に確認を取った。優香は軽くうなずきながら桃色の唇を動かす。
「ええ、特にないですけど」
「それじゃあ、俺はもう、お役御免って感じかな?」
平林が肩をすくめながら言った。二岡は出来るだけ丁重な言葉遣いをするよう意識しながら「すいません、そういうことになります」と告げた。
「おう。それじゃあ、引き続き、残りの奴らの捜索頑張ってくれ。でもあの小僧が窃盗を行うとはねぇ……」
平林がブツブツとつぶやいているのを尻目に二岡と優香はその場から離れていった。二岡は去り際に小声で一人ごちた。
「サンドイッチ、早く食べた方が良いんじゃないですかね」