表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

人体冷凍保存

作者: EXAS4

 みなさんは人体冷凍保存をご存知だろうか?

 人体冷凍保存とはその時代の医療技術で治療ができなかった人体を冷凍保存し、いつか治療できる時代が来たら、解凍、そして蘇生するという一見馬鹿らしい考え方のことだ。しかし、これは素晴らしい《テクノロジー》だ。それを証明できたのは紛れもない私だ。

 私は死というものを恐れていた。避けて通れない道。私はそんな考えが嫌いだったが、当時の科学力ではどうしようもないことだった。毎日死という恐怖に打ち勝とうと生きながらも、それは着々と近づいてきた。その度に私は怯えた。そんな私は夢のような話を耳にしたのだ。そう、人体冷凍保存。私はその可能性に魅力された。私はすぐさまその可能性に託すことを決め、そのために必要な金額を集めることにした。たしかに、その時代、人体冷凍保存は可能性でしかなく、将来永劫蘇生されない可能性だってあった。それでも私は賭けた。全身を冷凍保存するより頭部だけを冷凍するほうが安く付いた。頭部さえあれば《私》は生き返れると思いそちらを選んだ。そのためのお金を十分に集めた私はあれほど避けたかった死を待った。生きたまま冷凍保存はできないらしい。そして、ある日、私は死んだ。彼らの言うことを信じれば、私はすぐさま冷凍保存に向けた処置を施され、冷凍保存され、保管され、蘇生される日を待つのであった。

もう何年眠っていたのか、そんなことは分からないしどうでもいい。しかし、《私》はついに起きた。当時の記憶もはっきり残っている。自分の名前も私の部屋の本棚に並んでいた死に打ち勝つ方法を探る本たちも。《私》は再びこうして考えることができるのだ。絶対的な死に打ち勝ったのだ。人体冷凍保存が立派な科学であることを証明したのだ。まだ思考だけが頭を過るが、もう少しすれば頭部の感覚も戻ってくるだろう。そして、再びあの青い空を眺めることも、小鳥の囀りも聞くことができるだろう。そうだ、蘇生したら、おいしいものを腹いっぱい食べよう。もう何年も食べていないのだ、小腹がすいているはずだ。

肌に空気が当たる感覚が戻ってきた。できれば体もどうにかなっていればいいのだが、まずは頭部を蘇生してもらうのが先だな。冷たい肌もどんどん温かみを得てきた。まだ少ししか顔の筋肉は動かせないが、瞼も動かせる。

さぁ、《私》は復活し、死を克服したことを証明する。

私はゆっくりと瞼を開けた。


みんなが物珍しそうに見つめるなか、ガラス越しの彼の目は開いた。彼らは驚きを隠せなかった。そんな中、彼らの一人が言った。

「この博物館に展示されている昔の人たちはほんと頭のネジが外れているよ。命の完全な解凍は不可能なのに、なにが嬉しくてこんなことを・・・」 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。スラッと読めました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ