入学試験
ヘリウスの案内で街の門をくぐり外へ出る。
「ここの近くでスライムが出る。体当たりだけしかやらないから、落ち着いて戦えば大丈夫だ。試しにそいつを倒してみろ」
そこにいたスライムを斬ると、スライムはすぐに再生して体当たりをしてきた。少し痛い。
「今再生したが、ダメージは入っているから安心しろ」
その後何度も攻撃するが、スライムは意外に素早く、なかなか当たらなかった。それでも何とか倒すと、蒸発して消えた。
「今の戦いぶりでは剣士は無理だな。諦めろ。代わりに魔法を使ってみないか?面白そうだぞ」
確かに、剣を振ることも一苦労の現状を考えると、剣士は無理だな。
「魔法か。確かに使えそうだな。どうやれば修得出来るんだ?学校とかがあるのか?」
「ある。ただし、魔導師になれるかテストされるがな。なに、君なら入れるさ。重要なのは『素質』だからね」
素質か。魔法と一切無関係の生活を送ってきた俺が、魔法を使えるなんてことがあるのだろうか。イメージなら自信があるけど、それだけじゃないだろうしな。まさか、前世に関係が?いや、さすがにないか。
ヘリウスの案内で白い教会のような建物に入ると、白い髭を生やしたおじいさんが静かに立っていた。
ヘリウスが彼に何か伝えると、彼がこちらを見たので近づく。
「魔導師になりたいらしいの。少し、じっとしておれ」
彼はそう言うと、目や手を観察し始める。目を覗かれた時には、考えていること全てを見られているような嫌な感じがした。
「ふむ。次はこの珠を持ち、珠に意識を集中するのじゃ。溢れ出る魔力を感じられるじゃろ」
雑念を取り払い、珠に意識を集中させる。こういうことには慣れている。しばらくすると、珠の内側にオーロラが満ちた。
「よし。では、最後に魔力限界をみようかの。ついてこい」
そう言って連れられて入った部屋は、正面に神像のような男性像があった。
男性の足元を見ると、人が一人立てるくらいの円があり、それを囲むように小さな円がある。
「この円の中に入ってくれ。そうしたら、準備を始める」
「この像はなんですか?神像でしょうか」
「ん?ああ。これかの。これは魔術の祖、エンペドクレスじゃ。詳しくは学校で習うから気にしなくてよい」
円の中央に立つと、おじいさんは杖を掲げ、呪文を唱え始めた。詠唱が進むにつれて、床に光の図形や文字が書き込まれていく。そして、詠唱が終わる頃には魔法陣が出来上がっていた。
「Revelation」
最後にそう唱えると、文字は空間に溶けて、あたりをほのかに照らす。
しばらくその神秘的な光景を見ていると、不意に光は消失し、部屋はもとに戻った。
「魔力限界の方も問題ないようじゃ。おめでとう。君も明日から我が校の生徒じゃ」
そうして、俺は魔導師の道を歩み始めた。