始まり
俺は神崎優人。
現在、国からの依頼で神獣討伐に向かっている。今はひと段落つき、キャンプで眠るだけだ。まだ時間があるので、この世界に来た時を振り返ろう。
少し邪気眼系の中二病が入っている学生だ。
もちろん、周りには出さないし、頭の中だけで楽しんでいる。
ある日、そんな俺に手紙が来た。
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今月中に、大規模イベント「神のゲーム」を開催します。
詳しい説明は向こうでするので簡単に言いますと「超能力者のバトルで最強を決めますので、参加しませんか?」ということです。
参加希望者は、必要事項を記入し、小さな紙に血を染みこませてください。
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何かのテーマパークのイベントだろうか。
超能力か。存在しないと思いながらも、もし使えたらいいなと思っていたな。
「なんだこれ。詳しい説明は向こうで?」
現地に行けば分かるということか?
とりあえず、興味を持ったので、指示通りに住所などを書いておく。
小さな紙に血を染み込ませる、か。なんでだ?
危険があるから、覚悟を示せってことなのか?
それも向こうで説明されるだろう。超能力者の体験ができるんだから、これくらいやってやる。
目の前には、3cm角の紙がある。注射器はないのか。
となると、切るしかないか。
果物ナイフで指を切って紙に付ける。
早速、紙が紅く染まり始めた。紙いっぱいまで染まってから指を止血。
これでいいのか。不思議とテーブルに血はつかなかったようだ。
次の日、夢を見た。
目の前には20代くらいの男が立っている。
周りは白く、霧がかかったように何も見えない。
男は言った。
「君は神のゲームの招待状を受け取り、そこにサインをした。そうだね?」
招待状?あれのことか。
「はい」
「では、次の質問だ。君にはこれから命を賭けた戦いに参加してもらう。これに了承できるか?」
「テーマパークじゃないのか?」
「テーマパーク?なんだそれは。君には、私の世界に来てもらう。そこで最強を賭けた戦いに参加するんだ。言葉は普通に通じるから安心してくれ」
テーマパークを知らないのか。いや、そんなことより、これを聞かないと。
「命を賭けるのか?なら辞めるぞ」
「では、願いを一つ。なんでも叶えてやろう。それでどうだ?」
「少し待ってくれ」
願い、か。とくに何もないが、せっかくの機会を失いたくないな。でも、まだ死にたくないしな。どうしようか……。
少し考えていると、この男は思い出したかのように付け加えた。
「ああ、イベントの場所は王国だぞ」
そこ結構重要じゃない?
「王国か。俺は市民から?」
「当たり前だ。ちなみに一般人がなれるのは騎士までだ」
「騎士だと! よし、やる」
騎士かあ。騎士には前から憧れていた。
遂にそのチャンスが舞い降りたということか。絶対になってやる。
「同意してくれて良かったよ。グッドラック」
そこで夢は終わった。
目が覚めると、見知らぬ部屋にいた。窓から外を見ると、外国の風景が広がっている。
昨日なにかあったかな?もしかして、昨日の招待状か?もしそうなら、俺は神のゲームとやらに参加したことになる。
まあ、いいや。とりあえず起きよう。
まずは周りを適当に歩くか。
幸いにも、外に出歩ける服装になっていた。
まあ、俺の常識が通じればだけどな。
近くに道具屋があるようなので行ってみる。
「いらっしゃい。 何が欲しい?」
店の商品を見ると、始めてみる文字で商品名が書かれているが、なぜか読める。
薬と何かの機器、それと地図もある。
しかし、お金を持っていないから、何も買えない。
「失礼しました」
それから少し散策すると、RPGの世界に似たような街になっているようだ。
武器屋に防具屋と道具屋。それに教会まである。鍛冶屋もあったな。
散策を終えて部屋に帰る途中に、入り口の空間が波打っている建物を見つけた。
中に入ってみると、急に視界が開け、神殿の前に出た。
「え?」
「は?」
振り返っても入り口らしきものはない。さすが異世界……。
辺りには人が大勢いた。彼らも困惑しているのか、少しざわめいている。
一体、何が起きてるんだ?
そんなことを考えていると、突然声が聞こえた。
「全員集まったようだね。それでは、これからゲームの説明を開始する。まずはこの世界について話そうか。この世界には、一つの国といくつかの村がある。この世界は、森林、山岳地帯、平原、荒野、都市に分かれていて、今いるのは都市の中だ。国の法律については面倒だから省かせてもらう。戦闘禁止エリアが設定されているから、そこでの一切の戦闘は禁止。破ったら大変なことになるよ。ここまでで質問はある?」
すぐに誰かが声をあげる。
「大変なことになる、だけではわからないな。もう少し詳しく説明してくれ」
「そうだな。ゲームからの退場なんて生易しいものじゃないよ。たぶん、死んだ方がマシだと思うんじゃない?今はこれくらいしか言えないよ。他にこのエリアについての質問は?」
「俺からいいか。まず、どこにあるんだ?それと、どれくらい入っていられるんだ?ずっとってわけにはいかないだろう?」
「場所は売られている地図に描いてあるよ。入っていられる時間かぁ。そうだな。2時間くらいかな?それが過ぎたら、戦闘タイプの魔物が湧いてくるから、気をつけて。もちろん、そいつらに攻撃したらだめだよ。他に質問はある?」
戦闘禁止エリアか。時間制限があるから、長くは居られないな。
「無いようだね。それじゃあ次に、このゲームのルール説明をしようか。そんなに多くないからよく聞いてくれ。まず、その身体は、元の世界の物だ。つまり、この世界で死んだら、そいつの人生は終了。元の世界に帰れるとか、別の世界に行けるとか、そういうことを考える馬鹿もいるから一応な。能力は地道に鍛えていくやり方もあるが、能力強化用のアイテムがあるから、それを使うといい。基本的に何してもいいが、ゲームの進行を邪魔する奴はそれ相応の対応をする。一応付け加えるとすると、国のルールには従った方がいいぞ。下手をしたら処刑もあり得るからな。質問はあるか?」
「その国のルールって、どこで見れるんだ?」
「城の前に張り出してある。見たい奴は見るといい。できれば、善良な市民には迷惑をかけないように行動してくれ。他に質問は?」
しばしの静寂が過ぎる。
「無いようなので、能力授与に移ろう。君たちにこの世界で使う超能力を授けよう」
急に辺りが暗くなり、周りの人達がいなくなる。これも演出なのか?
「能力を授けるから、どんな能力がいいか、自分でイメージしてくれ。明確な方がわかりやすい」
能力か。応用が効いて、便利なものがいいな。例えば、想像したものを生み出す能力。物質を自由に変形させる能力もいいな。
他の能力も考えた結果、変幻自在の物質を自由自在に操れる能力に決めた。
早速、イメージしてみる。
青い半透明の物質を創り出す。
まずは球体、立方体、大きい輪の順に形を変える。これは成功した。
次はもう少し複雑で実用的な物を作ろう。
硬質な剣をイメージする。剣は何度も思い描いているので、想像は簡単だ。
問題は、ここから形を明確に出来るかどうかだ。
剣の輪郭をなぞっていくと、以外にもあっさり成功した。
「簡単じゃん。次は盾か」
これも簡単に成功した。次は生活用の物を作るか。
それから、時計や金槌やツルハシなども作った。
アクセサリーを作ろうと試行錯誤している時に、急に元の神殿前に戻った。
「君たちの望む能力はだいたい解った。では、能力を授けよう」
このイベントの主催者が言い終わる寸前、目の前に瓶が現れて、地面に落ちる寸前に止まった。
「それを飲んで、先程のイメージを強く願え。想像は、現実となるだろう」
飲めばいいのか。よくわからないまま飲んで、目を閉じて、想像しながら願う。
「俺に、変幻自在の物質を自在に操れる能力をください」と、何度も繰り返し願った。
目を開くと、青い物が目の前にあったが、すぐに消えた。
「たった今、君たちの能力に制限を掛けた。その能力を使って他の参加者を戦闘不能にしろ。殺しても構わない。最後の一人になれば、生きている者は全員元の世界に帰そう。
最後に、君たちのサポート役を務める、ピクシーを家に送ろう。詳しいことは、そいつに聞いてくれ。これでルール説明は終了だ。君たちの健闘を祈っているよ」
声はそこで終わって、気付くと最初の場所にいた。