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「よし、これでいいだろう」

勇者が私の姿を見ながら言った。

「お、できたか」

魔王がそこに加わる。

今、部屋の中には私たちしかいない。

私は、いまや花嫁衣裳に身を包み、結婚式を待つばかりとなっている。

この世界では、風習として、新郎新婦が相部屋において準備をするということになっているらしい。

それで、私たちもその風習に従っているというわけだ。

「いずれは結婚すると思っていたけど、まさかウェディングドレスを着ることになるとわね……」

それについては、想像すらしていなかったため、驚きしか出てこない。

「いや、でもきれいだよ」

そういわれると、なんとなくうれしいのは、身も心も女になっているからだろう。

全身鏡に写されている私自身の姿を見るにつれて、すごくきれいだと思えるようになっている。

それが、とても自然なことのように。

「向こうの世界に、帰れるのかな……」

「帰れるよ」

さらっと魔王がいう。

「ほんとに?」

帰れないものだとばかり考えていた私は、彼らに聞く。

「本当さ。今回は君をここにつれて来ざるを得なかったのは、俺たちの世界の都合だ。だから、君はこの結婚式が終わったら、無事に元の世界に戻ることになる。ただ、条件があるけどな」

勇者側から言われる。

「どんな条件」

「一つ目は、向こうの世界では、僕たちはまだ結婚していない。そのため、僕たちはずっと君に対して求婚を続けることになる」

確かにそのとおりだ。

向こうの世界とこちらの世界が違う以上、そうなるのは当然のことだ。

「二つ目は、月に一度はこちらにくる必要がある。花嫁としての当然知っておくべき常識とか、作法とかについての修行だな」

花嫁修業ということだろう。

それも納得できる。

「ほか、何かあるか」

勇者が魔王に聞く。

「あるぞ。最後には、御子を産まなければならない。ゆえに、子作りを行うことになる」

「ちょい待って。こっちでは女だからできるけど、向こうじゃ男だよ?」

「そうだな、確かに問題だ」

そう言っても、あまり魔王はあせっている雰囲気ではない。

「こちらに居続ければ問題なかろう。ざっと子を産むまでだから10ヵ月と10日だな」

「それだけ家を空けていたら、きっと両親が心配するわ」

「なに、実際はそんなことをしなくてもいい。宇宙が覚えていてくれるから」

何を言っているのかさっぱりだ。

「簡単に言えば、われわれが向こうに行っても、こちらに戻った瞬間に時間経過どおりに子供は成長しているということだ」

魔王が話している内容がまったくわからない。

「ま、わからないのも当たり前だ。こっちもまだ理解し切れていない」

「なら説明するなよ」

笑っているのが勇者だ。

「いいじゃないか。ちょっとぐらいは」

「そうだな。とりあえず、結婚式をしよう」

ちょうどそのとき、執事が私たちの部屋をノックした。

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