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その日の放課後、彼女らはどこかにあるという家へと帰ってしまい、俺は珍しく一人で家路についた。
「ちょっといいかな」
家と学校の通学路の半分ほど過ぎたあたりで、スーツ姿の男女に尋ねられる。
「どうしましたか」
「俺たちは、こういう者なんだが」
電燈の下で、バッチ付の手帳を見せられる。
そのバッチは、今では子供でも知っているほど有名な紋章だ。
「“連邦”ですか」
「正確には、個人総局だ。聞きたいことがある」
「なんでしょう」
俺は個人総局と言った二人に聞き返す。
「俺は沢板建造。こっちの女性は市来澪っていうんだ。まあ、そんなことよりも聞かせてほしい。このあたりで、不審な人物を見なかったか?」
「いいえ、どうしたんですか」
「……いや、見ていなければいいんだ。また、何かあったら、ここまで連絡をしてほしい」
「はあ」
名刺に電話番号が書かれた紙を、沢板から渡された。
「では、よろしく」
二人で連れ添って、俺の前からいなくなった。
俺は名刺をポケットの中にいれ、そのまま家に戻った。
「ただいまー」
家に帰ると、すぐに弟が顔をのぞかせる。
「おかー。お客さんが二人、おにいの部屋にいるよ」
「だれ?」
「魔王と勇者だとか言ってたけど」
すぐに、誰が来たか俺は察しがついた。
部屋へと向かうと、二人がベッドと椅子に座って、話していた。
何を話していたかはさっぱりだが。
「どうしたんだ、二人とも」
「戻ることになりました」
魔王が唐突に、そう言われた。