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俺の高校は、今や日本の首都となっている大阪圏に位置している。
全校生徒519人、1学年が4~5クラスほどある、都市圏では普通の高校だ。
その中で、俺は部活に励み、勉学に努め、そしてどこにでもいるような高校生だ。
少し違うところといえば、異世界からやってきたとかいう自称魔王や自称勇者に悩まされていることぐらい。
今日も今日とて、俺の周りにやってきてる。
「ゆぅすけくぅん」
魔王こと、比企楽子が昼食をとり終わり、ゆっくりとしたい俺の机にどっしりと腰を沈めた。
「…どけよ」
「やぁよ。ねえ、早く私と婚約しなさいよ」
いつも通りのストレートなお言葉だ。
周りの面々も、誰も注意しないのは、この光景が、いつの間にやら当たり前になっていたからだ。
こうなると、隣のクラスから、やかましいのが乱入することは、自明の理。
「こらーっ」
ドアを吹き飛ばしそうになりながら、その彼女はやってきた。
もはや誰一人としてこちらへ振り向こうとしない。
そんな冷たい空気が漂っている中、ドカドカと俺のところへとやってくる。
「あんたね、いつもいつも、なんで私のフィアンセと一緒にいようとするの」
「そっちこそ。向こうじゃアレだったけど、こっちじゃ私のほうが強いんだから」
いつものような日常。
いつものような光景。
いつも通りに過ぎていく時間。
いつの日にか、彼女たちとも別れるという時が来るだろう。
もしかしたら、どっちかと付き合うという選択肢もありかもしれない。
そう考えていた昼下がり。
だが、その考えは、その日のうちに放棄せざるを得なくなった。