表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
医者の俺は異世界で聖書(スマフォ)を片手に神と呼ばれる。  作者: Dr_バレンタイン
6章『近い将来、障害を持つ子を誕生させる事は犯罪になるだろう』
22/26

KARTE6-1 創造主

 俺は神がどんなやつか想像をふくらませた。

 おそらく神の使いかなにかの宗教上偉い長がいて、この地域を納めている。

 そういう詐欺師は、自分の言葉を神の言葉として喋る。

 そんでもって例外なくすげえ金持ちだ。

 文化の未熟な地域では、偉そうなやつが霊魂の仕業と言えば、大抵のやつは信じてしまう。この病は呪い、助かりたければ私の聖なる水を買いなさい。なんて手口が普通だ。

 きっとそいつもドンペリ片手にベンツを運転して、夜景の綺麗なヒルズに女を連れ込むようなムカツク野郎さ。

 しかし誰よりも博識であるのは間違いない。

 もしかしたら、この世界の秘密や歴史でも知っているのかもしれない。

 俺は洗礼の儀式に付き合うことにした。

 ただしくトシュナは返した。治療を始める前と比べ、だいぶやつれていた。どこかで一旦区切らなければ、いつまでも仕事を続け、いつしか倒れてしまう。俺みたいに。

 だから彼女だけは実家に帰らせた。そろそろ子供の顔を見たくなる時期だろうし。

 洗礼の儀式は街の中央で行われ、木製の台の回りを、ぼろい椅子が囲んでいる。

 結婚式というか、西部劇の絞首刑台である。

 台の中央には十歳ぐらいのトカゲの男の子がいた。彼が主役だ。

 さぁ神様はどんな姿で歩いてくるのか、わくわくする。

「神の洗礼はほとんどの者が受けます」

 横にいるダーコが語る。

「洗礼を受けた時から、我々は神の啓示を受けることができるのです」

「ほとんどって、受けられない場合ってあるのか?」

「捨てられた子供などは、残念ながら洗礼を受けられない場合が多いですね。誰かが子供の存在を神へ伝えねばなりませんから」

 まるで市役所への出産届である。

 わりとシステマチックな神なんだな。

「来られましたぞ」

 ダーコが俺に声をかける。

 来たといえば、神でしかない。

 俺は興奮しながら振り向いた。

 そこで、神の姿に愕然とした。

「あぁ神よ」

「天地創造の神よ」

「この子に慈悲を」

「この子に慈悲を」

 周囲の大人達が神に頭を下げる。

 俺は神から目を離せずにいた。

 やつは歩いていない。浮いていた。地上三メートル付近をふわふわと。

 姿はバスケットボールほどの大きさ。

 そう、球体である。

 外装は土に汚れたメタリックで、正面に大きなレンズを持っている。

 生物ではない。明らかに機械だった。

「神よ、こちらです」

 洗礼の主役である男の子が手をあげる。

 神と呼ばれし球体は男の子に近づき、体から触手のような細い管を出した。

『献体番号、A0G8980J登録。献体管理チップ、投射』

 神が喋る。

 そうして管を的確に男の子の静脈へ射し込むと、どろっとした赤い液を管に通した。

「洗礼は終わられた!」

「神よ、この子にさらなる祝福を!」

 周囲が騒ぎ出す。

 しかし神はなにひとつ顔色を変えずというか、顔なんてそもそもないんだが、そそくさとどこかへ飛んで行ってしまった。

 俺は言葉が出なかった。

 が、無意識に足は出ていた。

 やつがなにものなのか、とっ捕まえて調べないと。

 あれはどうみたってロボットだ。マシーンだ。

 やはり人間がいる。

 どこかに人間がいて、この世界を管理している。

 ならば管理者と会うべきだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ