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医者の俺は異世界で聖書(スマフォ)を片手に神と呼ばれる。  作者: Dr_バレンタイン
5章 『どんな困難な状況にあっても、解決策は必ずある。救いのない運命というものはない』
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KARTE5-2 最新的な手がかり

「んんん~~~~っ?」

 再び俺の首が捻られ始める。

 冷や麦みたいな神経の位置を細かく確認する。

 疑問が強くなり初めてくると、今度は乱暴に腹を裂いた。

 あまり丁寧にはやらない。

 ある程度の臓器や神経位置、体の構造を理解する。

 そして俺はある疑問を、ある結論に変えた。

「こりゃ人間そのものだ」

 毛並みこそ違えど、しょせんは表面。皮膚と筋肉をはぎ取ると、骨、臓器、血管、神経、その約九割近くが俺と同じである。

「なにかわかりましたか」

 後ろから声をかけられ、俺は意識を周囲に向けた。

 辺りは少し寒くなり、日も傾いている。

 俺は解剖に熱中しすぎて、時間が過ぎるのを忘れていた。

「こりゃ人間そのものだ」

 同じ言葉をくり返す。

 トシュナは困惑したように答えた。

「それは……、当然なんじゃないでしょうか」

「どうしてだ」

「彼も私も、同じ人間ですよ」

 んなバカな。

 俺の体は人類五百年の歴史、いいや、この人体構造が確立するまでのたび重なる進化の歴史が作り上げたものだ。

 百歩譲って人類の進化形態が生き物にとって最高のものであり、なんであれ、ほ乳類はこの体構造に到着するとしよう。しかしだ、しかしそれにしては見た目が多種多様すぎる。肌の色がどうだとかいうレベルじゃない。

 俺はとめどなくあふれ出てくる疑問に身震いを起こした。

 気がつけば日が暮れていた。

 俺は一旦ナイフを置いた。

 これは進化の果てというよりも、人間を基礎にした進化と考えたほうが自然だ。

 元が同じであれば、いかなる変化があっても、所詮はX1、X2、X3の違い。全ての種族にはXという共通した部分が残る。

 これは人間の進化の慣れ果てなのだろうか。

 ここは地球の慣れ果てなのだろうか。

 人間の遺伝子操作技術がどう進歩するなんて俺には想像もつかないが、この世界の住人はそれぞれ人間を祖先とした進化の結果なのかもしれない。

「ドクター。そろそろお帰りにならないと。夜道は危険です」

「あ、あぁ。じゃあコイツを埋めてやるか。放置して騒ぎになったら大変だしな」

 どうせ死体に身内はいない。

 しかしこのまま放置するわけにもいかない。

 俺は硬い土を掘って、献体を埋めてやった。

 もちろん埋めたと言っても土を軽く被せた程度で、本格的に穴を掘ったわけじゃない。

 一段落付くと、俺は手を合わせ、念仏を唱えた。

 この死体に仏教信があるとは思えないが、これはあくまで俺のために唱えている。だから他人がどうとかは関係がない。

 俺が念仏を覚えたのは、医学部に入ってからだ。

 医者は多くの生物の死に関わる。

 その過程で、一つの命になんの価値も感じず、なんの尊さも感じず、その終わりを受け流すなど俺にはできなかった。

 だから一々念仏を唱える。

 それは誰のためというよりも、自分に負い目を感じないためである。

 せめてこのぐらいすればいいだろう、なんていう勝手な気持ちが俺を楽にさせてくれる。もちろん同級生には良く笑われたが。

「で、これをどう思うよ」

 全てが片付き、俺は米粒ほどの物体をピンセットで摘んでいた。

 はっきりいってゴミにしか見えない。

 そこらへんに転がっていれば、絶対に気にしないほどの黒い塊である。

 俺が注目したのは、このゴミが遺体の頭部から出てきた点である。

 いくら頭を殴打されたとはいえ、頭蓋骨の中にまで物質がはいることはまずない。入るとすれば、頭がぱっくり割れているはずだ。だからこの物体は、『予め入っていた』ことになる。

 初めは血栓かなにかと思ったが、そうでもないらしい。

 ためしに水で洗って、スマフォのカメラで拡大撮影してみてようやくわかった。

「なんで頭に半導体チップがあるんだ」

 それは見慣れた小さな機械の部品であった。

 なぜかはわからないが、こいつの頭には半導体が入っていた。

「おい、ツリー。いないのか。返事しろ」

 ちょっと小声で呼びかけている。

 しかし反応がない。

 自称メインヒロインのくせに、自分の都合次第でしか現われない。

 仕方がない。今はツリーのことを諦めよう。

 で、この半導体はどうするかな。

 もしかしてトシュナにもあるのではと思ったが、まさか頭を割らせろと言えるわけもないし、頭部CTなんて高度な技はできっこない。

 俺はただの内科医で、放射線科医ではない。ドラマで黒いX線写真をびらっと見ただけでなんだか判断しきる医者もいるが、あれはマジックだ。超能力だ。俺にできるわけがない。俺にとってX線写真の白い影は、全てがんか結核にしか見えない。

 しかし一つの結論はできた。

 やっぱりここは人間が生きていた世界だ。

 地球のどこかだ。

 俺と同じ人間がどこに行ったのかはわからないが。

 そういや見るからに地球生物らしい姿をしている。

 SF作家が喜ぶような、目玉一個でヨダレを垂らした宇宙生物という面白くて奇抜な姿をしていない。

 なにか地球の価値観が派生した姿をしている。

 人間的価値観によって生まれた、便利な生物だ。

 自然原理主義の元で進化したゴリラや人間がこうなるとは思えない。

 なにか手を加えられたか、突然変異の結果だ。

「え、あ、あの。なんでしょうか。そんなに見つめられて……っ」

 まさかな。

 俺がこんなのに進化する条件がわからない。

 進化の正しい答えなんて、人類学者でもわかるものか。

「あ、あの、だから、私は夫のいる身で……っ!」

「喜べトシュナ」

「は、はいっ!」

「彼らは助けられるかもしんないよ」

 しかし人類と同じ構造だとわかれば、俺の出番である。

 俺の医術が「呪い」に対抗できるかもしれない。

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