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医者の俺は異世界で聖書(スマフォ)を片手に神と呼ばれる。  作者: Dr_バレンタイン
5章 『どんな困難な状況にあっても、解決策は必ずある。救いのない運命というものはない』
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KARTE5-1 猟奇的な彼氏

 街を歩いていると、偶然にも、一つのいいものを見つけた。

「こりゃ死んでるな」

 道ばたに、ごろんと転がるトカゲ男の体があった。

 聞けば昨日までは動いていた盗人だという。

 盗みを働き、反撃を受けて、この有様になったんだとか。

 確かに頭に殴打された傷跡がある。

 死因は脳内出血だろう。

 住民にとってはやっかいなゴミ。俺にとっては新鮮なお宝。

 俺は死体を見て喜んでいた。

 抑えていた研究欲が吹き出てきたのである。

 縁もゆかりもない彼を、俺は金を使って運ばせた。

「ドクター、どうなさるんですか」

「解剖を一回やってみたかったんだ」

 他人がやってくると面倒なので、俺は街から離れた場所に移った。

 汚く乾燥した雑草が乱暴に生える大自然の上で、健康的に人体解剖を行う。

 日本もこうした実習をしたほうがいい。暗い所で解剖するから、重苦しくなってしまうんだ。これなら気が滅入りにくい。

 少々補足しておくが、人体解剖に使う献体のほとんどは、本人の許可を得ていない。多くは無縁仏が病院に運ばれ、医学の礎になっているのである。

 死人に口なしとはこのことで、俺が了承を得ずに死体を捌こうとも、決して医学的常識に反しているものではない。道徳的常識は別として。

「トシュナは戻っていいぞ、気持ち悪いだろ」

「いえ。別に慣れてますので」

 なんとも心強いお言葉だこと。ほれぼれするよ。

 解剖の手順はいろいろ流派があるかもしれないが、まず手足を落として、皮膚をはぎ、首を切って、頭はスイカみたいにパカッと中心から二分割するのが俺の手法だ。

 俺の学生時代の解剖実習はそうした。

 授業中、女子の一人が吐いたのを覚えている。

 今思い出せば懐かしい。俺の青春だった。腕の筋肉をばっさり切っちゃって、試問の時にどれがどの筋かわかんなくなった思い出がある。最低な青春だった。

 解剖学の実習室にあるメスは基本的に木製である。

 ドラマで見慣れる綺麗なステンレスのメスではない。

 ステンレスは油に弱く、人を丸ごと切り刻むと、ぬるぬる滑って使い物にならなくなるからだ。

 まずうっすら毛の生えた皮膚を剥いで、筋肉を眺める。

「ん~~~~?」

 俺は首を捻った。

 今度は血管と神経の位置を確認しながら、筋肉をはぎ取る。

「んんん~~~~?」

 俺はまた首を捻った。

 なんだこりゃ。なんだこの足は。

「ナイフかなにかあるか」

「あります」

 なにを要求しても、トシュナの口から出てくるのは頼もしい返事だけである。しかも手渡されたのは、やはりインディージョーンズが持っていそうな巨大ナイフだった。

「あんたの死、おろそかにしないよ」

 俺は手を合わせた。

 この世界で手を合わせる宗教的行為になんの意味があるのかと思うが。

 俺は献体の喉元に受け取ったナイフを入れた。

 ここで知って得する豆知識を披露しよう。

 お手軽に人間の首を切り落とす裏技だ。

 首切断のコツは骨を避け、椎間板を狙うこと。

 椎間板は柔らかく、刃が通りやすい。

 だから首を切るなら真っ直ぐ押し込むより、何度か軽く方向転換したほうがいい。

 ぜひ人の首を切り落とす機会があったら、これを実践して欲しい。

 首だけになってしまうと動物である。人間を切るよりはいくらか気が楽だった。

 首を切り落としたら、今度は鼻頭がら縦にナイフを入れる。

 ノコギリのようにきざきざとした刃先が、力任せに骨を砕いてくれる。

 パカッと縦に割れる頭蓋骨。

 脳みそはかなり大きい。人間並みだ。

 喋るし考えるし当たり前だろうか。

 人間の脳は神経解剖学の実習で細かくスライスした記憶がある。

 解剖学と神経解剖学は単位が別だった。やはり恐ろしく、そして鮮明な記憶として残っているのは後者だ。なんてったって死んだ人間の顔見ながらやるのだから。

 しかしそれが医者になるための道。人を救うには、それなりに手を汚さなければならない。綺麗なまま正義を貫ける人間はいない。例えそれが神であろうとも。

本当はここの最後に「秘密を知ったな」と金田一ばりに後から襲われて別の場所に分岐する予定だったんですが、文字数の関係で諦めたという困ったシーンです。

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