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木刀物語  作者: 山の麓
3/3

サクヤⅡ


第三話です。



「――というわけなので、明日庭を使うわね、お父さん」


コクトの言葉を聞くなり、アルアは微笑んで父に言う。


「ああ。二人とも頑張りなさい。」


「ええ!」


「はいっ!」


二人は意気込む。当たり前だ。お互いに、願いを叶えるために。


「ルールは…いつも通りでいいわね?」


「ええ」


「?」


アルアとサクヤのやり取りに、コクトは首をかしげる。いつも通り?


「あっそっか…コクトは知らないわよね。」


サクヤは納得したように言ってきた。アルアは慌てて謝った。


「ごめんなさいね。サクヤと私でよくやるのよ。」


「ほ~仲がいいんですね。」


「ふふ。本当にいい子。じゃあ、改めて説明させてもらうわ。よく聞いといてね。」


「はい」


「ルールは簡単。先に一本取った方が勝ち。または、降参と言わせれたら勝ちよ。」


「そんなに簡単なんですか!じゃあ、すぐ終われますね」


コクトは驚いた。勝負とは、そんなに簡単にできるのか。


「…そう思えるのは、今だけよ」


肩をすくめて言うアルアに、コクトは首を傾げたが、答える者はいなかった。


アルアは、さっと話を切り替えた。


「さ、そうときまったらもう寝ましょう。コクトくんも、疲れているでしょう?」


「は、はいっ」


なんか言ったのだろうか。申し訳ないです…。と、心の中で謝る。


すると、サクヤが姉の言葉にうんうんと頷きながら続けた。


「確かにそうよね。この町まで、ずっと歩いてきたんだもんね」


アルアは、軽く頷いて言う。


「じゃあ、コクトくんはサクヤの部屋で…」


それに、すかさずサクヤは言い返す。


「なんで私の部屋なのよ!」


アルアは、気楽に答える。


「だって、サクヤの部屋が一番広いじゃない」


サクヤはうっと詰まった。


父と母は同じ部屋だし、アルアの部屋にはサクヤ特製の試作品やなんやら置いてある。


一人が寝るのがやっとな小さな寝台しかない。


その点サクヤの部屋は、アルアと同じ広さだが、家具は少ないし、物もあまりない。


「そ、そうだけど…」


「決まりね。コクトくん、お風呂どうぞ。私たちはもう入ったから。残り湯で申し訳ないけど」


サクヤが詰まって、言葉を探していると、すかさずアルアは続けた。


「ありがとうございます」


コクトは、軽くお辞儀をして礼を言った。





「ふう…いいお湯だったなぁ」


コクトは風呂からあがると、母屋と風呂をつなぐ渡り廊下から外を見ていた。


廊下は、木でできており、床と天井は満遍なく木が敷き詰められているが、横は腰から上の高さぐらいから窓が天井まで伸びていて、外の夜景を堪能できた。


もう亥の刻をまわっている。街に灯りはぽつぽつとしかなく、静けさが漂っている。


それは、どこか、母と暮らした山を思い出させる。あの山も、静かだった。


物思いにふけるコクトに、少し離れた所から声が上がった。


「明日、本当にやるつもり?」


コクトがなかなか帰ってこないので心配だと姉に言われ、仕方なく見に行くと、コクトは渡り廊下から外を見ていた。


声をかけると、無表情だったその顔に、見る間に表情が戻っていく。


「サクヤさん…」


驚いていない彼の横にサクヤは立った。


「やっぱり、サクヤでいいわ」


年下には、『サクヤさん』と呼ばせてるのだが、彼ならいいかも。


「―この町は、とっても平和だわ。領主さまも、良い方だし。」


するとコクトは、早速敬語を止めた。


「―……この町を、離れたくないのか?」


サクヤはこの町を好きだ。ずっとここで暮らしたいとも思う。でも。


「…この町は好きよ。この町に住む人たちも。だけどね」


「……」


コクトは黙ってただサクヤをじっと見ている。


「私だって、この町から出て、旅をしたいと思ったことはあるわ。」


「なら!」


コクトは、ぱぁっと顔を明るくするが、サクヤは、下を見て、小さく言った。


「でも、出られないのよ」


「なんでだ?旅に出たいんだろ?一緒に行こう!」


コクトは、首をかしげつつも手を差し出す。


「-………」


サクヤは、なぜか、震えている。一体どうしたのだろう?


「大丈夫か?」


しかし、その言葉にこたえる間もなく、サクヤは気を失った。




大きく伸びをしながら、コクトは起きた。


「ふぁ~…」


結局昨夜は、アルアとサリーを呼んで、サクヤはサクヤの部屋で、アルアと寝ることになった。


コクトはアルアの部屋で寝た。最初この部屋に入った時は驚いたものだ。


部屋の半分を槍やこてなどで埋められていたからである。


「サクヤ、大丈夫かな」


こんなことがあったのだから、もう、遊びといえど、少し無理があるだろう。


そう思っていると、コンコンとノックがした。


「コクトくん、起きてる?」


アルアだ。


「はい、起きてます」


それを聞いたアルアは、入るわよ、といって中へ入ってきた。


「おはよう。突然だけど、聞いていいかしら?」


「いいですけど…」


「昨日、サクヤと何話してたか教えてくれない?サクヤ、まだ起きないのよ…」


「…!」


それで、コクトはすべてわかった。


「つまり、サクヤが目覚めない原因は、昨夜話した内容だというのですね。」


それに、アルアはこくりとうなずく。


「ええ。疑うようで悪いんだけど…」


「……わかりました。覚えている限り、全て話させていただきます。」


サクヤは、気絶するまで、元気だった。夕飯も残さず食べていたし、顔色も良かった。つまり、身体的に異常はなかったのだ。


だが、コクトと話したことによって彼女は震え、そして気絶してしまった。


きっと自分のせいだろう…そう思っていたから、コクトはアルアにサクヤと話した内容を言い始めた。



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