ぐしゃり・・・・・。
2025年 12月 コミケにて無料頒布したもの
「夏のホラー2026」用にこちらにもアップ
世界の終わりってあっけない。
今回のホラーはあっさりです。
そのうちピクシブにもアップします。
それに気がついたのはたぶん、私だけだった。
彼女はうつむいて、クラスメート達からの激しく、そして理不尽な罵詈雑言を黙って受けながら、その唇をかすかに。
笑みの形にひきつらせていた。
気持ち悪かった。
怖かった。
先生がやってきて、彼女の周りの子たちは散った。
彼女は席に着いたまま、うつむき続ける。
右手を、ボールでも握っているかのように軽く指を曲げながら。
やはり薄く、笑っている。
彼女とは、電車でも一緒になる。
一車両、わざといつも離れる。私は彼女のそばにいるのが嫌だったからだ。
その日、やはり彼女はホームで理不尽な言いがかりをつけられていた。
重たげな長い黒髪。改造していない、きちんとした制服。飾り気のない黒鞄。
無個性の姿を維持するがゆえに埋没できない。彼女は浮き立つ。
言いがかりをつけた男は立ち去っていく。
彼女はやはり、うっそりと笑って、手の中の、見えない玉を軽く握った。
みしみしっ。
これはなんの音だろう?
放課後の教室は彼女が残っていた。
私は彼女と顔を合わせるのは嫌だった。
怖い・・・・・・。
彼女は。
いつものように席についていた。
黒板に向かっていながら、視線は自分の手を見つめている。
喜悦がその口に浮かぶ。
その手。
ゆっくりと閉じられる。
見えないそれを壊す喜びに、邪悪な光を宿す瞳。
私は聞いた。
その動きにつられるように校舎が軋む音を。
ぐらりと地震が来た。
私はかすかに悲鳴を漏らしていた。
彼女は私の方へと視線を向けた。
そうして、笑うのだ。
手はさっきとは逆にゆっくりと開いていく。
手の中に、あるのは、なに?
「私はね、わかったの。周囲の誰もが世界の存続なんて高尚なものは望んでいないし、明日なんて来なければいいと思っている人の方がずっとずっと多いってことを」
彼女はなぜ、そんなことを私に言うのだろう?
小さな手が空を乗せて上を向いている。
なにもない。
少なくとも私には見えなかった。
彼女はうっそりと笑う。
うっとりでもなく、陰鬱さもなく、この日が来たことを喜び、そして一抹ほど悲しみながら。
彼女は私の見ている前でゆっくりと指を曲げる。
教室は、いや、世界はきしみを立てていた。
それから。
ぐしゃり・・・・・。




