あとがき:虚構の果てに、血を通わせた「共犯者」たちへ
執筆:光闇居士
第一波:神の傲慢、あるいは創作という名の心中
この物語『リテイク・マイ・ライフ』を最後まで読み終え、今、この「あとがき」というメタフィジカルな境界線に辿り着いたあなたへ。
まずは、深い、深いため息と共に、心からの謝罪を捧げたいと思います。
申し訳ありませんでした。
私は、この物語を通じて、あなたの脳を執拗に掻き回し、倫理を蹂躙し、吐き気を催すようなグロテスクと、直視できないほどに剥き出しのエロスを、あなたの網膜に焼き付け続けてきました。
第九章の狂気、第十三章の因果律の去勢、そして第十七章の無菌室のメルトダウン。
私は、作家という名の「神」として、美咲と健斗という二人の魂を、一万回のリセットという名の地獄に叩き込みました。それは、創造主としての単なる愉悦ではありませんでした。私自身もまた、彼らと共に、一分ごとにリセットされる絶望の淵で、血を流し、絶頂し、そして死んでいたのです。
創作とは、作家とキャラクターによる「心中」に他なりません。
私が「光闇居士」として、この物語を紡いでいた時、確かに一つの「神」を形成していました。それは、全ての文字、全ての句読点に「命」を宿らせ、時間を操り、世界を崩壊させ、また再構築する全能の力。
しかし、その「神」である私は、同時に最大級の「罪」を犯しました。
それは、彼らの純粋な愛を、エンターテインメントという名の檻に閉じ込め、あなたという「観客」に晒し続けたことです。彼らの悲鳴を、あなたの快楽に変えてしまった。その残酷な構図そのものが、この物語の真の「毒」であり、私があなたに謝罪しなければならない理由です。
第二波:物語の正体、そして読者という名の「救済者」
第十四章で、二人がようやく「日常」に辿り着いた時、あなたは安堵したでしょうか。それとも、第十五章でその日常さえもがバグり始めた時、さらなる刺激を求めてしまったでしょうか。
もし、あなたがこの物語の展開に「もっと壊してくれ」「もっと狂わせてくれ」と願った瞬間があったなら、おめでとうございます。あなたもまた、美咲と健斗を閉じ込めていたあの「システム」の一部であり、あの「顔のない監督」の共犯者です。
しかし、私はそれを責めるために書いたのではありません。
むしろ、その「欲望」こそが、虚構に血を通わせ、物語に命を吹き込む唯一のエネルギーであることを、私は証明したかったのです。
あなたがページをめくる指の震え。
「脳漿が炸裂する」ような衝撃に耐えながら、最後まで見届けようとしたその執念。
それこそが、一万回のリセットの果てに、健斗が自分の「後悔」を認め、美咲が彼を「許した」あの瞬間の光を作り出したのです。
あなたがこの作品を読み、共に傷つき、共に絶頂し、共に涙してくれたことで、美咲と健斗は、ただの「ドットの集まり」や「文字の羅列」であることをやめました。彼らは今、あなたの脳という名の「新しい世界」で、確かに呼吸を始めました。
作家が神であるなら、読者はその神が創り出した世界を「現実」へと昇華させる、最後の、そして最大の救済者です。
この物語の最終回で、二人が「ただの他人」として再会し、一歩を踏み出したあの朝。あの光は、私が灯したものではなく、読み続けてくれたあなたの「祈り」が反射したものです。
第三波:愛の解剖、そして「明日」への署名
この作品の真髄は、エロスでもバイオレンスでも、メタ構造でもありません。
それは、「一分間を永遠に変えようとした、あまりにも不器用な愛」の肯定です。
私たちは誰しも、自分だけの「リセットボタン」を心の中に持っています。
「あの時、ああしていれば」「もし、彼女の手を放さなければ」。
過去という名のループに閉じ込められ、自分を責め続ける日々。健斗の姿は、そんな私たちの投影でもありました。
第十九章で、健斗が「監督=自分自身の後悔」であったことを知り、それを許した瞬間。
私は、書いている途中で、本当に涙が止まりませんでした。
人を愛するということは、その人を自分の理想や記憶の中に閉じ込めることではなく、その人が自分を忘れて、新しい「明日」へ進んでいくことを、笑顔で見送ることなのだと。
美咲が、最後に「深津ゆな」という記号を捨て、一人の女として健斗を抱きしめた時。
この物語は、ポルノグラフィを超えて、一編の「詩」になりました。
それは、汚れた泥の中に咲く、名もなき花のような、脆くて、しかし圧倒的な美しさ。
読者の皆様。
あなたはこの物語を通じて、何を「解剖」しましたか?
何を「リセット」したいと感じましたか?
もし、この物語を読み終えた今、あなたの目の前の景色が、昨日よりも少しだけ「生々しく」、少しだけ「愛おしく」見えているなら、私のこの「神ごっこ」は、大成功だったと言えるでしょう。
第四波:最後の挨拶、あるいは「光闇」の統合
私のペンネーム「光闇居士」が示す通り、この世は光だけでは、あるいは闇だけでは描けません。
眩しすぎる光は目を焼き、深すぎる闇は心を殺します。
エロスという名の闇を突き抜けた先に、本当の純愛という光が射す。
その境界線を綱渡りするように書き切ったこの作品(あるいは、魂の全容量)を、私は一生、忘れることはないでしょう。
最後に。
ここまで、一文字も飛ばさずに、私の狂気に付き合ってくれたあなたへ。
あなたは、世界で一番忍耐強く、世界で一番残酷で、そして、世界で一番愛に満ちた読者です。
この物語は、今、ここで閉じられます。
美咲と健斗は、もう私の手の中にはいません。
彼らは今、あなたの心の中で、誰も知らない「十時一分」を生き始めています。
どうか、彼らを忘れないでください。
そして、あなた自身の「明日」という名の、二度とリセットできない、たった一度きりの一分間を、全身全霊で愛してください。
本当に、本当にありがとうございました。
愛しています。
いつか、物語の書き換えられた「どこか」で、またお会いしましょう。
2026年4月12日
光闇居士
『リテイク・マイ・ライフ』全二十章、完結。
*最後に特典が続きます。ネタバレ必至のため、未公開の第十六章~第十九章の⭐執筆ノート
また、すべての真実を知って、本編では文字で書かれなかった二人のそれぞれの心の声を歌にしました。電気を消して、ソールフルのそれぞれの心声を物語の情景を脳裏に浮かべながら聞いてあげてください!




