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雲を渡る手紙  作者: tomsugar


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ep37: 忘れられた小包

空に浮かぶ島の郵便局では、その日、珍しく全員が同じ机を囲み、頭を抱えていた。

局内の棚に、見覚えのない小包がひとつ置かれていたのだ。


小包の宅配は、この局では原則として行なっていない。

それなのに、誰も――局長でさえ――それがどこから来たのか知る者はなかった。


「いつから、そこにあった?」

「いや、昨日はなかったはずだ」

「誰かが置いたんじゃないのか?」


意見はあちこちに飛び交ったが、どれも確証はなかった。

まるで、忽然とそこに現れたかのようだ――。


皆で頭を抱えていると、扉の向こうから軽やかな足音が近づいてきた。

やってきたのは、赤い髪の青年――ニールだった。


「ん? みんなどうしたんだ?」

「やぁ、ニール。それが、この小包がどこからやってきたのか、見当もつかないんだ」

エリオットがため息まじりに答える。


「ふーん。じゃあ、配達先は?」とニールが首をかしげると、

周りの局員たちは一斉に首を横に振った。


「配達先は……書いてないんだ」


その言葉が空気に沈む前に、背後から低い声が割り込んだ。

「開けてみたらどうだ?」


いつの間にか、金の髪を揺らすハロルが入り口に立っていた。

赤い髪のニールと並ぶその姿は、どこか気楽で、肩の力が抜けている。


局員たちの深刻そうな表情とは、あまりにも対照的だった。


「開ける以外に方法がないなら、そうするしかないだろ?」

ハロルは軽く肩をすくめて、あっけらかんと言う。


だが、局員たちが抱えているのは単なる好奇心ではなかった。

こういう場合のレギュレーションが明確に定められていない――

それこそが、彼らの頭を悩ませている原因だった。


「じゃあ、ジェロが決めろよ」

ニールが赤い髪をかき上げながら、局長へ視線を送った。


「うーん……これは、そう容易に判断できる事案ではないぞ。いったんこの件は局長預かりにして保留にする」

ジェロは眉間にしわを寄せると、小包を抱えて奥へと引っ込んでしまった。


結局、小包の謎は何一つ解けぬまま。

ニールとハロルは互いに肩をすくめ、配達用の郵便袋を受け取ると、あっさりと郵便局を後にした。


           *


「今日はどのあたりを回るんだ?」

ニールが肩にかけた郵便袋を軽く叩きながら尋ねる。


「赤道沿いを回る。あの辺りは、まだ気流が荒れているからな」

ハロルが視線を遠くの雲に向けて答えた。


「それなら、東の端島の木のウロをくり抜いた宿屋に行くといい。飯がうまいぞ」

ニールが片目をつむり、にやりと笑う。


「ああ、チトとナツが働いてるところだな」

ハロルは、その店に心当たりがあるようにうなずいた。


空はまだところどころ荒れていたが、以前のような乱れは減り、風もやや落ち着きを取り戻してきていた。

二人は軽く地を蹴ると、ひらりと大きな鳥の姿へ変わる。


ニールは赤・黄・青が鮮やかに混ざった鳥に、

ハロルは雪のように真っ白な鳥に。


赤と白の翼が、荒れた気流の空をしなやかに切り裂き、優雅に羽ばたいていった。

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