ep32: おやつの時間
空に浮かぶ島の郵便局は、気象変動に対応するための配達体制の見直しを終え、ようやく穏やかな日常を取り戻していた。
今回の件をきっかけに、配達員には新たな翼等級が定められた。
――配達不可エリアなど存在しない、最精鋭〈煌翼〉。
――変わりやすい天候や険しい地形にも揺るがぬ〈蒼翼〉。
――危険地帯は避けるが、日々の配達では揺るがぬ安定の〈鋼翼〉。
――長距離や危険地域を避け、経験を積む〈白翼〉。
――まだ羽も柔らかな、新米〈小翼〉。
それぞれの羽は、その力にふさわしい空を任されることになった。
〈煌翼〉にはニールとハロル。
今回の任務で腕を磨いた新人たちは、そろって〈蒼翼〉へ。
そして、雀の兄妹チトとナツは〈小翼〉となった。
空の危険が増す季節には、〈白翼〉〈小翼〉の配達員は下界に降り、下界にいる元天界人を仕切る、レオンの指揮のもとで働く決まりとなった。
郵便局の片隅で、いつも愛嬌を振りまいていた二人の姿がなくなると、局内にはほんの少しだけ、風の抜けたような寂しさが漂った。
そんな空気を払おうと、エリオットが少し気合の入ったおやつの時間を提案した。
「それじゃ、私はスコーンを焼いてくるわ」
「私はベーカリーでケーキを買ってくるよ」
それぞれ持ち寄るおやつの相談を終えると、午後のお茶会が開かれた。
この日は、最近フロント業務にあまり顔を出さなくなっていたジェロも席についた。
午後のまったりとしたひととき。
マホガニーの丸テーブルには、カラフルなクッキーや焼きたてのスコーン、小さな丸いケーキが所狭しと並び、エリオットが、みなのカップに熱い紅茶を注いでいく。
古参の女性事務員が紅茶を口に運びながら言った。
「チトとナツちゃん、ちゃんとやれているかしら」
「あの子たちは信頼できるところに配属したから大丈夫じゃ」
ジェロが微笑むと、女性は安堵の表情を見せた。
「まぁ、それはよかったわ」
「彼らは配達も卒なくこなしていましたし、もう少し経験を積めば白翼に昇格もできますよ」
エリオットは少し誇らしげに言った。
窓の外では、木々の葉がやわらかく揺れている。
そろそろ配達から鳥たちが戻る時間だった。
「蒼翼の新人どもは今日帰還の予定じゃ。無事だと良いが…」
ジェロはそう言って席を立ち、外へ出た。
次々に帰還する配達員をねぎらいながら、新人たちの姿を探す。
ガルド、ブロック、ヴァンス、ドルン、そして少し遅れてケイドが戻ってきた。
「あぁ、みな無事に戻って何よりじゃ。おかえり」
怪我ひとつなく帰還した姿に、ジェロは胸をなで下ろした。




