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雲を渡る手紙  作者: tomsugar


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ep31: 新人たちの仕事

新人配達員のガルドは、ゆっくりと歩を進めていた。

目の前には、二つの切り立った山に挟まれた深い峡谷黒々と影を落としている。


ここは空の島の配達員の間でも名高い難所だ。

谷底から吹き上がる突風が突然身体を揺さぶり、次の瞬間には風向きが真逆に変わる。

ここでは、飛行は禁じられており、配達員は断崖沿いの細い道を徒歩で進まねばならない。


岩肌に打ち込まれた鎖を握り、足場の悪い道を慎重に渡る。

やがて行く手に、垂直に切り立った岩場が立ちはだかった。

ガルドは深く息を吸い、配達袋の重みを背に感じながら、錆びたはしごを一段ずつ登っていった。


           *


新人配達員のブロックは、横殴りの雨を受けながら、濡れた岩場を一歩ずつ進んでいた。

足元は海水で滑りやすく、波が打ち寄せるたびに靴の縁まで冷たい飛沫が跳ねる。


この海岸線は、干潮時にしか通れない。

潮が満ちるまでの限られた時間で踏破しなければ、路が海に飲み込まれる。


さらに、このエリアは海陸風の急変が頻発し、突風で足をすくわれる危険がある。

飛行は極力控えるよう厳命されており、ブロックは波打ち際を急いだ。


           *


新人配達員のヴァンスは、足元を洗う高波の中を慎重に進んでいた。

海辺の崖道を抜ければ、今度は湿った土の匂いが漂う山間の獣道が待っている。

崖と山を交互に行き来しながら、配達先を目指す道のりは容赦なく体力を削っていく。


空を飛べば、ほんのひと息で越えられる距離だ。

しかし、この一帯は崖下から突き上げるような強い上昇気流に加え、突然の落雷が頻発する。

飛行は原則として禁止されており、ヴァンスは歩いて、波と風と雷鳴の合間を縫って進むしかなかった。


           *


新人配達員のドルンは、遮るもののない平原を、ただひたすら歩き続けていた。

見渡す限り、地平線まで同じ景色が続く。

時おり、砂混じりの風が頬を打ち、視界を茶色の霞で覆い尽くす。


ここは、方向感覚を奪う砂嵐と、突発的な横風が吹き荒れる過酷なエリアだ。

飛行などもってのほか、翼を広げれば一瞬で制御を失い、地面に叩きつけられる。


さらに厄介なのは、時間とともに容赦なく入れ替わる気温だ。

灼熱の熱波が肌を焼いたかと思えば、次の瞬間には骨まで冷える冷気が押し寄せる。

ドルンは唇を引き結び、砂に足を取られながらも、一歩ずつ配達先を目指して進んでいった。


           *


新人配達員のケイドは、凍りついた湖面を慎重に歩いていた。

足元では氷が低くうなるような音を立て、ときおり細かな亀裂が白く走る。

その先には、黒い水面がのぞく氷の裂け目が、まるで罠のように点々と続いていた。


一度でも足を踏み外せば、凍てつく水中へ真っ逆さまだ。

さらに厄介なのは、氷が割れる瞬間に吹き上がる鋭い冷風――この乱気流のせいで飛行は禁止されている。

ケイドは、氷上を慎重に進むしかなかった。


           *


ハロルは、はるか上空から彼らの行軍を見下ろしていた。

配達員に伝えている飛行禁止ルートも、彼にとっては障害にならない。


ガルド、ブロック、ヴァンス、ドルン、ケイド――

五人の新人たちは、ジェロの心配をよそに、危なげなく手紙を配達していた。


その様子を確かめると、ハロルは白い翼を大きく羽ばたかせた。

光を弾くその一振りで、谷を越え、一瞬にして空の彼方へ消えていった。

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